めいこい 中編

□これからもずっと/甘
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「え?」

フワリと身体が浮いた様な感覚の後、周りの空気が変わったのが分かる。
公園?


頭上を見ると、満開の桜の隙間から満月が見える。
桜はちょうど散り始めた頃で時折風に乗ってはらはらと舞い降りてくる。

「どお、最高のロケーションだろう?」

「キレイ………」
月の光で彼自身も光を纏っている様だ。

しばらく周りに見惚れていると、
では、と気取った様に笑って恭しく膝まづくと私の手を取る。

チャーリーさんの指は、少し震えている様だった。
ゆっくり慎重に指輪を通し、そっと両手で包まれる。

「これからもずっと芽衣ちゃんの事を愛してるよ」

「私もずっとずっとチャーリーさんの事だけを愛してる…」


立ち上がった彼の胸にしがみつくと力強く抱きしめられた。

見上げる月は輪郭を滲ませてゆらゆらと輝いている。
彼の顔は影になっているけど、目元が微かに光っている様に見えるのは気の所為ではないよね。
確かめたくて彼の首に手を回して引き寄せた……







※後日談※



—まだ信じられない。

彼女が僕につけてくれた指輪を眺めていると、突然話しかけられる。


「なに惚けてるの?」

「やったね」

「結局、相思相愛じゃん」

「え?あ、あぁ…」
付喪神のみんなだ。

「芽衣ちゃんを独り占めしてずるいなぁ」

「でも、良いのかな…」

見守るだけって思ってたのにな。
それが、気付けば触れても良い距離まで近付いて、それだけでも十分過ぎるほどなのに。

「まだそんなこと言ってる」

「自分だってあの子に会う為に苦労して帰って来たじゃないか」

「君を信じてるから、あの子は積極的に動けるんじゃないの」

「芽衣ちゃんを不安にさせたくないなら、あの子の気持ちも受け取ってあげなよ」


「……………」
……あぁ、そっか。
僕が彼女を愛し続けるのが当たり前だという事は、ちゃんと伝わってはいるのか。
それで君が伸び伸びと生きてくれるなら、僕のやり方はそれほど間違ってはいないのかな…。

「そうだね、いつもありがとう」


「じゃ、あの日の詳しい事教えて!」

「ん?」

そうだそうだと囃し立てられる。

「そうそう、せっかく静かにして見守ってたのに急に、どっかへ行っちゃうんだもんなー」

「大方、月と夜桜をバックにーとかでしょ?帰って来た時に桜の花びらが付いてたし」

「そうだったのー?」

「キザー」

「かっこつけだ!」

「ーなんとでも言ってくれて構わないよ」

「あっ、逃げた!」


周りが明らかに興味津々で息を潜めてる中で、あんな事出来るわけ無いだろ!




※終わり※
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