めいこい 中編

□君と行きたいのは
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「今度は、この水族館に行ってみようよ。
ナイトアクアリウムが人気なんだって。
すごくキレイそうだよ!
あとは夜景がよく見える公園と、あ、そろそろ花火大会が始まるね♪」



…本当によく知ってるなぁ。

チャーリーさんは夜でも楽しめるデートスポット的なものをよく知っていて、人混みだって全く気にする様子が無い。

あの性格だし、マジック以外はあまりこだわりとかが無さそうだと思ってたけど、意外と普通に好奇心旺盛なのかな?

それに相変わらず外では堂々と姿を出していて、電車だって乗っちゃう。
…まぁ、急に道端で奇術ショーをするわけでもないから下手に目立つ事も無いけど。


でも今週は久しぶりに酷い風邪をひいちゃったから、出かけられないな。
チャーリーさん、楽しみにしてたのに悪い事しちゃったな…。

実は予兆はあった。
でも、大した事は無さそうだったし念のため薬を飲んでおけば平気だろうと思って、マスクをして学校に行ってしまった。
結局お昼までに熱が上がり2限で帰って来てしまったのだ。
すぐにまた薬を飲んで、眠っている間に日は沈んでいた。
夜中に目を覚ますとベッドの脇に頬杖をついているチャーリーさんと目が合った。

「芽衣ちゃん風邪は大丈夫?」

「昼よりは大分良くなってるよ」

「昼よりは?!
昼はもっと苦しかったの?
今は気分は悪くない?水分は足りてる?もっと寝た方が良いんじゃ無い?」

「………ふふ」

身を乗り出して矢継ぎ早に確認をする様子になんだか笑ってしまった。

「もう、笑い事じゃないよ?
…無理しちゃだめだって言ってるのに」

ふと影になり、ふんわりと抱き締められた。
そのままチャーリーさんの胸にもたれかかる。
風邪のせいでまだ身体の節々が痛いけど、彼の暖かさで痛みが和らぐ様だ。




「まだだいぶ辛そうだね。
家の事はやっておいたからゆっくり寝てなよ」

寝かせつけ方がお母さんみたい。

「チャーリーお母さん、ありがとう♪」

「はぁ、バカな事言ってないで早く寝てな」

「うふふふ」
呆れられちゃったけどなんだか嬉しい。






あ、そうだ。
「水族館、行けなくなってごめんね」

「ん?あぁ良いよ。そんな事より早く風邪を治すんだよ」
あれ?楽しみにしてたかと思ってたんだけど、事も無げに返された。

その後も朝までに何回か目が覚めたけど、その度にチャーリーさんは色々と気遣ってくれた。
眠くならないし疲れる事も無いからとは言うけど…。
目が覚める時には必ず彼が笑顔を向けてくれるのが嬉しいと同時に、少し申し訳無い様な気もしてしまう。

やがて空が白くなってきた頃、私の手を握り、
……今まで見た事がない程に名残惜しそうに、さよならのキスをされた。






チャーリーさん、泣いてた…?
元々心配症だけど、ただの風邪なのにそこまで?




翌日もずっと寝ていた。
いつの間に用意されていたのか、簡単な食事やスポーツ飲料などが部屋には十分に置いてあった。
私が買って来た分の2倍位ある。
おかげで風邪を治すのに専念出来た。

ベッドに寝てぼーっとしていたら、チャーリーさんが現れた。

「風邪はどう?良くなってる?」

「色々と用意してくれてありがとう。
大丈夫だよ」

いくら大丈夫だっていっても心配そうにしているから、話題を変えて今朝の涙の理由を聞いてみる事にした。



「それはー
昼間の芽衣ちゃんが心配だから…かな」

昼の時間についての、そういう話は初めて聞いた。


「芽衣ちゃんが苦しそうにしていても昼の間は僕は何も出来ない。
どんなに愛していても、ずっと隣で守ってあげる事が出来ないという事が思い知らされたっていうのかな、それが本当に辛くなっちゃってね…つい」

はは、と軽く笑ってみせるけど、本心なんだろうという事はよく分かった。
夜しか逢えないという事は、運命として受け入れているのだと思っていた。
自分ではただの風邪としか思っていなかったのに、そこまで考えてくれていたとは………


「ありがとう。
昼間は逢えなくても、チャーリーさんのその気持ちだけで嬉しいから私は幸せだよ?」

「でも芽衣ちゃんが苦しい事には変わり無いだろう」

「う…ん…」

「ちゃんと健康管理には気を付けるんだよ。
肉ばかりではなくてバランスを考えて食事を取らないと」

お説教モードだ。でも、風邪を引いた位でそんなに心配させてしまうなら気を付けないと。
第一、私も彼の悲しそうな顔なんて見たくない。


「…………努力します」
でも肉は食べさせて。
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