めいこい 中編

□君の隣にいてもいいかな
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「なんでデートの時は姿を現しているの?
電車代とかもかかるのに」
というか面倒じゃないのかな?

「だって僕の姿が見えないと女の子が1人寂しく出かけてるみたいじゃないか」
からかう様に笑われる。

「なっ…!そんな言い方ないよ!」

「なーんて、
まぁ、はたから見てもデートだって分かりやすい方が良いでしょ?」

「そうなの?」

「ほら、変な虫が寄って来ない様に」

ん?それってヤキモチ焼いてくれてる?
いつも、自分は人間じゃないからと言って引いてるけど変わってきたのだったら少し嬉しいかも…


……………………………………


友達数人でクラブに行く話が出てると話したら、珍しくそれはダメだと言われてしまった。

でも、成人したばかりで周りでも行ってる人達が結構いて、話題になっている事もあるから行ってみたい。
しばらく食い下がってみたら、チャーリーさんと一緒なら良いと言ってくれた。


外でデートをする時のチャーリーさんは大体シンプルカジュアルな格好だけど、今日は黒いスーツを着崩していて髪も緩いオールバックにしている。
見慣れない大人っぽい姿はとても良く似合っていて……すごく格好良い。

「…今日はどうしたの?」

「あぁ、女子大生の可愛い彼女とデートをする仕事帰りの社会人風、かな?」

…いや、仕事帰りの社会人が黒いスーツに赤いシャツって、派手すぎるでしょ。
チャーリーさんの中ではどんな設定なんだろう。
せっかくキマってるのに残念な決めポーズをするのを見ながら突っ込まずにはいられなかった。






…………………………………………………


やって来たのはすごく有名なアーティストのイベントの日で、メインフロアは大勢の人の熱気で溢れている。
人の多さと音の大きさや雰囲気等、全てに気圧されるけど、初めてのクラブイベントに気分が高揚しているのが分かる。

「フロアに出る?」

しばらく椅子のある所で眺めていたけど、ちょっと気になっているのを気付かれた。
見よう見まねで身体を揺らしていると、チャーリーさんに時折抱き寄せられてニッコリ笑ってキスをされたりした。
恥ずかしいから!と周りを見渡すけど、気にする様子の人なんかいなくて寧ろすっかり馴染んでいる。

一区切り付いた所で隣のフロアにも移動してみた。
人の流れは大きくて手を離さない様にして隙間を縫って行く。途中、誰かに見られているような気がしたけど構わず進んで行った。
一通りのフロアを回って行くうちに、途中で同じ人達と何度かすれ違っている事に気付いた。
こちらをチラチラと気にしている様だ。

「気付いた?」
ー耳元でチャーリーさんが囁く。
「そろそろ帰ろうか」

「……うん」
いつの間にか後を付いて回られていたのかと思うと急に怖くなってきた。

出口に向おうとしていると、突然前に立ちはだかられた。
人混みでよく分からないけど、2、3人位のグループの様だった。

「もう帰っちゃうの?俺たちと遊ぼうよ」

「やめとけよー」

「男付きじゃねーか」


ーえ、なにこの人達。
酔っ払っているのか、声をかけてきたグループは大声でゲラゲラと笑っている。
その中の1人が目の前に手を伸ばしてきた。
さり気なくチャーリーさんが背中に隠してくれたけど、…怖い。

「なぁ良いだろ、俺たちとまだ遊ぼうよ」

「君たちとは行けないんだ」

チャーリーさんが牽制をする様に強く、ゆっくりと言っても聞く耳を持たない。

「いいじゃん、こっちに来いよ」

尚もしつこく伸ばしてきた手がチャーリーさんを押し退けようとした時、急に動きが止まった。
見るとチャーリーさんは男の肩を掴んでいて、右手の拳が男のみぞおちに入っていた。
肩から下はダラリと下がってしまっていて、関節が外れているのかもしれない。

「っ、…かはっ……!」

男は息が出来なくなった様子でそのまま崩れ落ちた。
周りの仲間はなぜかキョロキョロとするばかりで目の前の事に気付いてない様だ。

「行くよ」
彼が耳元で囁き、肩を抱かれてさーっと人混みを抜け出した。

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