めいこい 中編

□君の隣にいてもいいかな
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「大丈夫?何もされてないよね?」

何も無かったけど、やっぱり怖かった。
まだ手が震えている。

「うん、大丈夫だよ」

笑って見せたけど、チャーリーさんは少し悔しそうな顔をしている。

一つ大きくため息を付くと、改めて強く抱き締められた。

「ゴメン。怖かったよね。
気を付けてはいたんだけど…」

「ううん。助けてくれてありがとう」

「やっぱり芽衣ちゃんには、出来ればこういう所には行って欲しくなぁ」
と困った様な笑顔で言う。

「…………」

「君は気付いてないだろうけどアレだけじゃ無いからね、君に近寄ろうとしてたのは。
あの人混みだと流石に全部をかわすのは難しかったかな」

全部って…他にもいたの?
気付かなかった…。

「いつも言ってるけど、芽衣ちゃんは本当に可愛いんだよ。
でもそう思うのは僕だけじゃないって事。
今日の事で分かっただろう?少しは自覚して欲しいなぁ」

「え……?」

急にそんな事言われても…。
チャーリーさんだからそう思うだけだって、と言おうとしたけど黙っておいた方が良さそうだった。

「だから隣に僕がいられれば、普通ならそういうのは遠慮して手を出して来ないんだけどね」

額をつけて目を見据え、ニッコリと笑う。
あんな事があったのに、チャーリーさんの格好がいつもと違うせいかすごくドキドキする。

「そう、だったんだ……」

「だって、こんなにお似合いのカップルの邪魔なんかする気にならないだろう?」

ぎゅっと抱き締めて、いつもの軽い調子ではしゃぐ様に頬ずりをされる。
じゃあ「変な虫」って、チャーリーさんが相手にもしない様な人達の事だったのかぁ。

……………少しだけがっかりしてしまった。




…………………………………………………


予想していたとはいえ、昨日はすっかり怖がってたな。
でも、芽衣ちゃんに自覚してもらう良い機会にはなったかな?

それにしても多かった…。
今乗ってる電車の比じゃない。
芽衣ちゃんに気付かれない様に牽制はしていたけど、危ないよなぁ。しかも相手は酔っ払いばかりだから質が悪い。
また行きたいって言い出したらどうしよう?
まぁ、それはそれで仕方ないか。


芽衣ちゃんとはこうして出来るだけ「普通に」デートをしたい。
マジックだと言ってしまえば乗り物なんて必要無いけど、それをしてしまうと現代で生活している面白味が無い。
…それに昨日みたいな場面や、こういう所でも守ってあげられないといけないしね。





君は物の怪の僕でも良いって言ってくれるけど、本当に僕で良いんだろうかという思いは今でも変わらない。
だからせめて一緒にいられる時間は、芽衣ちゃんの笑顔を守る事に関しては誰にも負けないでいたい。
それなら物の怪だろうと人間だろうと関係無い………とは言っちゃいけないのかな。


「どうしたの?」

「ん?あ、ああ、なんでも無いよ」



電車が混んできたのを良いことに軽く抱き寄せた。
君は少し恥ずかしそうに戸惑う様に僕を見上げるけど、すぐに笑顔で胸にしがみつく。
しばらくはこうして僕の腕で抱き締めさせて。
どうか、君の心をさらう人が現れません様に。





※終わり※
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