めいこい 中編
□彼女は渡さないから/甘
3ページ/5ページ
「もう、今日は昨日の事を散々からかわれちゃったよ!」
「何で?あ、僕たちがお似合いだから?」
「……それも言われたけど
とにかく人前でキスしないで!
しかも友達の前なんて恥ずかしいでしょ!」
「そっかぁ残念。
じゃ、今なら人目も無いからキスして良いね♪」
…そう来ると思った。
でも、
「今日はダメ!」
「えー、なんで?」
「だって、昨日、友達の前でキスしたから!」
「やれやれ、仕方ないなぁ」
大げさに肩をすくめて両手を上げてる。
…なんで私が駄々こねてるみたいになってるのか納得出来ないけど、取りあえず今日は受け入れてくれる様だ。
「なら、こうしてる」
あ、っと言う間もなく引き寄せられて視界が回ったと思ったら、チャーリーさんを見上げていた。
座っているけど…、お姫様抱っこ?の様な状態で抱えられている。
少しバランスが悪くてチャーリーさんにしがみつくしかない。
「キスじゃなきゃ良いんでしょ」
額を付けて覗き込まれると彼の息が唇にかかる。
「そうだけど…」
「普段からよく見ているけど、
さらに間近で見つめてもやっぱり可愛いね」
いつもの様にしれっとそういう事を言う。
「…………………」
ダメダメ、その手には乗らないんだから。
「どこが可愛いか教えてあげる」
「結構です」
「目も、頬も、鼻も、唇も、小さい顎も、全てが、可愛くて堪らないよ」
そっと頬ずりをしながら、相変わらず歯の浮く様な事を言う。
「どうしてこんなに可愛いのかな…?」
「…………」
顎を指でクイと上げられて、親指で唇をなぞられる。
「わー、すべすべ♪」
されるままも癪だから力を入れて抵抗しようとしたけど少し遅かった様だ。
「あはは、たらこ唇♪」
…完全に遊ばれてる。
ていうか、今の私は相当間の抜けた顔になってるに違いない。
「なんで睨むのさー。
約束通りキスはしてないよ?」
「そういう事じゃ…っ」
口を開くと指が中に入って来た。
「…熱くて柔かいね。
キスしてる時よりも良く分かるかもしれないなあ」
「ふぁっ……っあ、
……ちょっ、と」
ゆっくりと口の中をなぞっていく指は、少しひんやりとして硬く、余り気持ちの良い物ではなかった。
「今、何と比べてた?」
少し得意そうに笑っている。
…こういうのが悔しい。本当に狙いすましている。
でも、今日は負けないんだから。
「何とも比べてません!」
「……………
…………キスをするなと言いながら、そんなに可愛い顔をするなんて、
本当に意地悪だなぁ…」
ーー逆効果だった様だ。
耳に唇が押し当てられ、そのまま低い声でゆっくりと囁かれる。
「ねぇ…まだキスしちゃダメ?」
「あぁ…………っんう、」
頭の中に直接吹き込まれる声の熱さが、耳から肩を抜けて背中まで響くから、思わず首をすくめる。
……けど、
「……だ…ダメ…ッ」
きっと今の私は耳の先まで真っ赤だろう。
「…仕方ないなぁ。
じゃあ今日はこのまま大人しく抱きしめてるよ」
そう言うとベッドに入り、動けない程しっかりと胸の中に抱き留められる。
暫くすると寝息が聞こえて、腕の拘束も緩んでいた。
チャーリーさんの寝顔なんて珍しいから、なんとは無しに眺めてみた。
夢でも見ているのか、長いまつげがたまに微かに揺れる。
白い肌に右頬の薄紫の痣。
コレがなんともきれいに染まっていて色っぽい。
指先でそーっとなぞってみるけど、特に起きる様子はない。
ほんのり桜色の薄い唇の隙間からは白い歯が覗いている。
自分だって十分滑らかでキレイな唇をしている。
普段のふざけた言動の数々からはイメージ出来ない様な、まさに安らかと言うのがふさわしい寝顔だ。
せっかくだから起こさない様に、柔らかさを確かめる程度に指で唇を押してみた。
(ー仕返し)
いつもはチャーリーさんのペースだから、たまにはこういう日があっても良いよね。
小さい反抗に成功して少し満足しながら間近で眺めていると、彼が寝返りをうった拍子にまた腕の中に捉えられた。
しっかりと捕まえられてしまって動けない。
…いや、動こうとしても寝ぼけているのか抑えられてしまう。
気付くとさっきよりも顔が近くて、お互いの呼吸が僅かに交わる。