めいこい 中編
□吸血鬼チャリ芽衣/パラレル
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次の晩。
入院をしている君の所に行ってみた。
何箇所も骨折をしていたから、包帯だらけだ。
…………もう治ってるはずだけど。
「やぁ、ケガの具合はどう?」
「あ………助けてくれてありがとう。
ケガは大丈夫みたい」
「別にいいよ。
じゃ、身体の調子はどう?
昼間とか、なにか今までと違ったりした?」
「特には…」
「そう。良かった」
「これからどうするの?」
「これから?」
「その………あなたと一緒にって言ってたけど?」
「あぁ、今まで通りで良いよ」
「そうなの?」
あからさまにホッとしてる。
そりゃそうだよね。いきなり現れたよく分からない奴にあんな事言われてもね。
「あなたはどうするの?」
「僕もこれまで通りだよ」
「?」
「言ったでしょ。僕はそのお守りに憑いてるんだって」
ポカンとしているから、付喪神がどういう物なのか、物の怪や骨董品店の仲間達、芽衣ちゃんが魂依だった事についても説明した。
「私が…魂依?」
「そう。昔は君も、僕や他の付喪神達とみんなでおしゃべりしてたんだよ?」
「そうなんだ…」
「だから、食べ過ぎてお腹壊したとか、初めてのお化粧が上手くいかなくてがっかりしてたとか………痛っ!痛い痛い…!」
「ちょ、ちょっと!なんでそんな事知ってるの?!!!」
これだけ動けるなら骨折は全部ちゃんと治ってるみたいだね。
………効いたって事だ。
「いや、だから君は忘れちゃったかもしれないけど、ずっと一緒にいたんだって」
「あ、そっか…てことは、お風呂上がりとかも見られてるの?!」
「見てるとかではないけど、まぁ、分かるかな」
「ーーー!!」
また暴れだした。
ーー良かった、元気だなぁ。
でもあんまり騒ぐと人が来ちゃうなぁ。
「し、仕方ないだろう、別に変な事とかはしてないよ!」
「………………そういう問題じゃないの!
良い、もうこれ捨てちゃうんだから!」
「あっ!!それだけはダメ!」
暴れているのを抱きしめて手を握る。
「それだけは勘弁してくれないかな。
これから君には何があるか分からないんだから。
ーー何があっても僕に助けさせてよ」
初めてちゃんと抱きしめた。
昨日は人形みたいだったけど、今日は生きてる強さを感じる。
それが嬉しくて抱きしめる腕に力を込める。
………離したくないなぁ。
「………分かった………捨てないから」
「ありがとう」
あれ、このまま抱きしめていて良いのかな?
………あぁ、寝ちゃったのか。
治りが早いとはいえ流石に疲労は溜まるんだろう。
そうだ、首筋の傷は…、
これなら虫刺されと言えばごまかせるかな。
昨日とは違い、何の汚れも無い真っ白い首筋に自分のつけた傷跡だけが紅く残っていて、血を吸った時のあの感覚を思い出してしまう。
…………
……………
昨日の事を思い出したら頭がぼうっとして、気付いたら首筋に歯を当てようとしていた。
ーーーー危ない!
でも目の前の白い肌の誘惑には勝てない。
口を開き、歯を立てない様に傷口を塞いでみた。
「………っん、…っ」
「……………」
目は覚まさない様だ。
舌で傷口をなぞりながら、少しの罪悪感と高揚を感じた。
本来なら自分の主である芽衣ちゃんに傷をつけるなんて考えられない。
だからこそ、このキレイな肌にたった一つ残っている傷が、自分がつけた物だという事実に酷く興奮するんだ。
ー舐める位は良いよね。
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