めいこい 中編

□月虹 〜2編〜/甘
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「夜明けの虹」


殆ど毎日逢っているとはいえ、別れの時の悲しさが我慢出来なくてどうにもならない事がある。

「ゴメンね、泣かないで」

困った笑顔でいるに違いないチャーリーさんを見上げる事が出来ない。
目が合えばきっと余計に涙が溢れてくるから。

「あっ、そうだ、芽衣ちゃんの涙を虹に変えてあげる」

「虹?」

さも名案だとでもいう様に、いつもの様に指を鳴らす。

「ー3・2・1!

ほら、空を見てごらんよ!」

見上げると…、そこには確かに虹がかかっていた。
白みつつある空に微かに現れた光の帯は今にも消えてしまいそうで、ベールの様に漂う姿が幻想的だった。

「すごいだろう?」

「すごい…けど、こんな事も出来るの?」

チャーリーさんの腕を疑う訳では無いけど…。

「ふふ。
これはマジックじゃなくて本物だよ。
いや、別にマジックで出す物が全て偽物と言うわけでは無いけど…」

「??」

「満月かその前後の夜に雨が降ったりして湿度が高いと、ごく稀に現れるんだ。
夕暮れ時か今位の夜明け前の時間にね。

ーーキレイだよね」

「……うん」

「涙は止んだかな?」

「……」

「また今日も逢えるからさ」

「…うん」

「じゃあ、また半日後にね」

額を僅かに唇が掠め、少しばかりのくすぐったさを残して、
虹と一緒に消えてしまった。



//夜明けの虹※おわり※
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