EXOのBOOK

□アイスケーキ
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「Tao、起きなよ。もう朝ごはんだよ。」

SehunがTaoの部屋のドアから顔をのぞかせて言った。
でも返事がない。

メンバーは全員もう朝食を食べ始めていた。
いつまでもリビングに来ないTaoを呼びに来るのはSehunの日課になっていた。

「Taoってば、起きろよ!」

呆れた顔をしながら勢いよく部屋に入り
布団にもぐりこんでいるTaoを揺さぶった。

「たぁ〜〜〜お!」

布団の中からもごもごと何か言ったのが聞こえた。

「え?何?また起きたくないってか?」

また布団の中から何か言ってるけれどよくわからない。
Sehunは意地悪に笑いながら布団を思い切り剥ぎ取った。

「起きろ〜」

Taoはまるでお腹の中にいる赤ちゃんのように
丸くなった。

「そんなかわいいカッコしてもダメ!起きな!」

Sehunがベッドに座りTaoの髪をかきあげた。

「うわ!あつっ!」

SehunはTaoの体が熱いのに気が付いた。

「ねえ、どうした?」

SehunはTaoの顔をこっちに向かせた。
Taoはトロンとして潤んだ目でSehunを見上げた。
Taoの首元はすごい熱をもっていた。

「熱いよ、すごく。熱あるよ!」

「Sehuna・・・すごく寒い。」

Sehunはあわてて布団をかけなおしてあげた。

「まってな!」

Sehunは慌ててリビングに行くと救急箱をかき回して体温計を
見つけて、さらに冷蔵庫から水のペットボトルを取るとドタドタと
音を立てながらTaoの部屋に向かった。

リビングにいたメンバーは朝食を食べながら
Sehunの見たことない慌てぶりに、みんな呆気にとられた。

SehunはTaoの部屋に戻ると、布団をそっとめくってTaoのシャツの首元から体温計を脇に挟んだ。

「こんなに熱いのに寒いってことは、まだ上がるかも。」

Sehunは小さい頃よく母親に言われたことをそのまま言った。

Taoをそっと仰向けにして冷えたペットボトルをおでこに乗せた。
そのSehunの手にTaoは手を添えた。

「Sehuna・・・」

無理に微笑もうとしながらTaoがSehunを見上げる。
Sehunは思わずキスをしようとしたくなって
顔を近づけた。
でもTaoは手でSehunの顔を遮った。

「うつっちゃうから・・・」

Sehunは切なくなってTaoの胸元に顔を伏せた。

体温計がピピピとなった。
Sehunは顔を上げて急いで体温計を出した。

「38度8分だよ。やばいよ。」

Taoはダルそうに起き上がった。
ペットボトルの蓋を溜息をつきながら開けると
一気に飲んだ。

Sehunは不安げにそれをみながら言った。

「今日仕事休みなよ。」

「でも僕がいないとファンが心配するよ。
 それに・・・自分だけTVに写らないのやだ。」

Sehunはしょうがないな〜という顔で微笑んだ。

「じゃあ、薬のんで頑張る?」

「うん。」

「無理しすぎ。じゃあ、リビングまで行こう。
マネージャーに言わなきゃ。」

「うん。」

TaoはSehunに支えられながら立ち上がった。

そのとたんにTaoが口を押えた。

「・・・気持ち悪い・・・」

「え!吐きそう?」

無言でTaoはうなづいた。
Sehunは慌ててTaoの肩を抱きながらトイレに向かった。

トイレに入るなりTaoは戻してしまった。
Sehunはどうしていいかわからず、ただ背中をさすった。

Sehunは不思議に思った。今まで吐く人には
近寄るのも嫌だったのに
なんでTaoだと平気なんだろう。

そこへTaoの部屋に行こうとしていたマネージャーが
通りかかった。

「どうした?」

「あ、マネージャー、Taoがすごい熱で吐いちゃった。」

それを聞いたとたんにマネージャーはSehunの腕を持つと
Taoから引き離した。

「うつるかもしれないから、離れなさい。」

Sehunがよろけるほどの勢いでトイレから出された。

「Sehun、手を薬用石鹸で洗ってうがい薬でうがいしなさい。」

「はーい。」
Sehunはふてくされてマネージャーに返事をした。

「Tao、先に行ってるね。」

Taoは腕を上げて返事をしてくれた。
Sehunはまた切なくなった。


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TV番組の収録に行くときもTaoだけ別行動になった。
病院へ寄ってからスタジオに来た。
Taoは胃腸炎の風邪と診断された。
控室も別でリハーサルもTaoだけやらずに
完全にメンバーから隔離された。

本番のときにやっとメンバーと合流した。
でもTaoは顔色も悪く、元気が無かった。

「Taoが具合悪いと静かでいいや。(笑)」

Chanyeolがふざけて言った。

でもSehunは本気で怒った。
Chanyeolの膝裏に思いっきり蹴りを入れた。

「痛ッ!」

Chanyeolが振り向くと真剣に睨みつけるSehunがいた。
Chanyeolは一瞬ドキっとするくらいだった。

「うわ、マジで怒ってる〜。」

Chanyeolはそう言いながら内心、マズイこと言っちゃったな
と後悔した。

Taoは具合が悪いながらも常にダンスはしっかり踊った。
Sehunはそういう不器用ながらもナルシストな
Taoが好きだった。
踊っている間ずっとTaoがきになっていた。
さすがに最後は辛そうだった。

ステージからそでに向かうとき、SehunはそっとTaoの背中をさすった。
その背中はやっぱりまだすごく熱かった。

その後Kのメンバーだけサイン会の仕事があった。
仕事が終わった後、みんなアイスクリームショップで
アイスを食べた。

Sehunは自分が小さい頃、風邪をひいたとき
いつも母親が食欲がないときに、アイスやゼリーや果物を買ってきたことを思い出した。

(そうだ。Taoにアイス買っていってやろう。)

「すみません、この一番大きいアイスのケーキください。」

SehunはTaoのために大きなアイスケーキを買った。
Taoが喜ぶ顔を思い浮かべると一人でニヤけた。

メンバー達はSehunがTaoの為にあんなに大きなアイスケーキを
買うことに驚いていた。

「胃腸炎なんだからさ、アイスなんて食べさせたらもっと
お腹壊すぜ?」

Chanyeolがまたからかうように言った。

でもSehunは無視した。
(俺は具合が悪いとき、アイスだけは喉を通ったんだ。)
そう心の中でChanyeolに言い返した。

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夕食の時間、Taoはやっぱりリビングに来なかった。
さすがにメンバー達も心配していた。

夕食が終わるとSehunは冷蔵庫からアイスケーキを出して
嬉しそうにTaoの部屋に向かった。

メンバー達はそれを見て目を合わせながら微笑んだ。

「Tao〜入るよ〜。」

Sehunは小声でいいながらTaoの部屋にそっと入っていた。

Taoはベッドの中でスマホを見ていた。

「あ、Sehun!」

「どう?具合。」

「うん、熱はまだあるけど、気持ち悪いのだいぶ治った。」

しゃべりながらTaoの視線はSehunの持っている大きな箱に
釘付けになっていた。

Sehunはその視線にニヤリとした。

「じゃあ〜、これ食べれるかなー。」

Taoは視線をその箱に集中したまま起き上がった。

箱を開けると、クリスマスの飾りのついたアイスケーキだった。

「わあ!Sehun!すごい。何これ!クリスマスケーキ?」

「うん。今日ね、メンバーでアイスショップに行ったんだ。
 Taoにおみやげ。」

Sehunは照れながら言った。

Taoの視線はSehunに移った。
Taoは両手を広げた。

「Sehuna!」

Sehunは同時にTaoに抱き付いた。
2人でギュッと抱き合った。

「すごく嬉しい!しかもこんな大きなケーキ!」

Sehunはうなずいた。
そして勢いよくTaoの両肩をつかんで離れ
ケーキを持ち上げてTaoに差し出した。

「しかもね!これ、アイス!」

Taoの目が輝いてアイスケーキを見つめた。

「アイス!?すごい!Sehun!僕がアイス食べたいのわかったの?」

予想通りの反応にSehunは満足感でいっぱいだった。

「Taoの考えてることはわかる。ははははは」

Sehunはスプーンでアイスをすくうと、Taoの口元へもっていった。

「あーん。」

Taoは恥ずかしそうにあーんと口を開けた。

「冷たくておいしい〜」

Sehunは嬉しくてさらにスプーンでアイスをすくった。
そこへマネージャーが突然入ってきた。

「Taoや、栄養ドリンクと薬もってきたぞ。」

Sehunが多めにすくったアイスを見てマネージャーが目を見開いた。

「おいおい、何食べてるんだよ。それ、アイスだろ?
 胃腸炎なのにそんなに食べたらダメだろ。
 しかもSehun、うつったら困るから今はTaoの部屋に来ちゃだめだ。」

マネージャーはSehunからスプーンを取り上げるとSehunにアイスケーキを無理やり持たせてTaoの部屋から押し出した。

Sehunは溜息をついた。

(しばらくTaoとのキスはお預けか。)

Sehunはアイスケーキを冷凍庫に入れると
ふと妄想がわいてきた。

(Taoが治ったら、このケーキを2人で食べながら〜・・・)

Sehunはムフっと一人笑いをした。

それをたまたま?Chanyeolが見ていた。

「Sehun。一人で笑って気持ち悪いぞ。」

SehunはゆっくりChanyeolの方を向くと、
への字口になって、思いっきりそっぽを向いた。
ドタドタと足を踏み鳴らしながらリビングを出ていった。

ChanyeolはTaoとSehunの行動が日々楽しくて仕方がない。
でもほんとは2人とも大好きなんだって・・・
絶対言えないと思っているChanyeolなのです。

END

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