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□対になる5のお題
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★好きと嫌い 田中




「ななのー!好きだー!」

潔子さんと一緒にドリンクを作って体育館に顔を出した途端に、田中さんに抱きつこうとされる。

「私は嫌いです!」

そう言って避けるのが日課みたいになっていた。

避けられた田中さんは地面にダイブし、倒れ込んでいる。

かれこれもう半年くらい繰り返している。

「田中さん!いい加減にしないと怪我しますよ!」

「俺は丈夫だから、大丈夫だ!」

いつもこう言って懲りてくれない。

「潔子さん…私どうしたらいいですかね…」

「大丈夫よ。そのまま避け続ければ」

かっこよすぎる潔子さんに惚れ惚れしている間に、潔子さんはドリンクをみんなに配り始める。

それに気づき、慌ててドリンクを配り始めた。





その日の練習後のこと。

田中さんと一緒にボールの片付けをしているときだった。

「田中さん!はい!」

拾ったボールを田中さんに投げる。

「サンキュ!」

そう言って受け取り、カゴに直す。

「これで終わりですね」

そう言ってカゴを押し始めると、田中さんも隣に来て一緒に押してくれた。

「そうだな!」

「あ、田中さん、ほんと好きっていうのやめてくださいよ!恥ずかしいです!」

「恥ずかしくない!これが俺の愛情表現の仕方だ!」

言わないでほしい、と込めて言った言葉だったのに、田中さんはわかってくれていないようだ。

「た、ただな」

田中さんは前を向いてカゴを押したまま話を続ける。

「お、俺は本気で、ななののこと…が好きだ…」

小さい声で、言葉を詰まらせてきる。

田中さんのその言葉を間に受け止められず、私は流そうとする。

「う、嘘ですよね。そんなのノリってやつですよね?」

田中さんの本気の声のトーンにビビってしまい、頭が空っぽだ。

「俺はなぁ!嘘はつかねぇんだ!…本気だ…!」

そう言い切られ、初めて田中さんの顔に視線を向ける。

田中さんとパッと目が合い、ニカッと笑ってくれた。

その笑顔にドキッと心臓が高鳴る。

その時倉庫前に来て田中さんが、俺が最後直しておくよ、と言ってくれ任せることにした。

倉庫の奥に消える田中さんの背中を見送りながら、田中さんが告白してくれたという現実に気づき、心臓の音がより一層大きくなった。





おわり



↓あとがき
大胆な田中さんです!
奥手もいいけど、こうサラッと言ってくれる感じもすき〜>_<
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