BOOK テニスの王子様3
□謙也×財前17
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プシュっと音を立ててプルトップを起こす。
立ち昇って香る、果物の匂い。
俺は缶をゆっくりと倒し、2つの小さなグラスへと、等分に注ぎ分けた。
どことなく厳かに、秒針が時を刻む。
そして、3本の針が重なる、0時0分、0秒。
小さく唇を持ち上げて、グラスを掲げた。
「二十歳の誕生日おめでとう、光」
同じ行為を求め、光がそれに応じると、小さくチンと音が鳴る。
そろりと口元にグラスを寄せ、その中身を舐めた光は、ジュースみたいだと評した。
まるで夏みたいに、爽やかな柑橘類の味。
「謙也さん、酔いました」
「え、嘘やろ」
「嘘っス」
珍しく甘えたがりな黒猫はもたれかかって、上目遣いに見上げてくる。
何なん、今日めっちゃ可愛いやん。
これからの君の人生に、幸多からんことを。
そして、それを与えるのが俺でありますように。
そう願って、顔を寄せた。
END
2015/07/19〜2015/07/20