BOOK 文豪ストレイドッグス
□中也×太宰01
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首に、手首に、巻きつく包帯。
彼奴が幾度も失敗した、心中の跡。
「勿体ねェな、手前は女みてェな白い肌してッのに」
「君であっても、私の自殺願望は止められないよ?」
「俺以外に跡残させんなと云ってンだ」
「ハハ……」
──妬いているのかい?
そう、薄い桜色の唇がほざく。
誰が、とは、否定しきれなかった。
そうだ。
だって俺は妬いている。
手前は俺の暴走を止めることが出来るのに、俺は手前の暴走を止めることが出来ない。
剰(あまつさ)え、俺以外の奴に跡を残されている。
宿敵で、過去の相棒で、現在の恋仲。
俺には此奴が居ないといけないのに、此奴は俺から離れていこうとする。
其れがどうにも忌々しい。
「手前……俺以外に殺されてんじゃねェよ」
腹の奥から沸々と沸き上がる怒り。
見っとも無ェ──そう思い、どう足掻いても止められない。
彼奴の首の包帯を引き下ろし、──首に刃物を突き立てて自殺を試みたのだろう──赤茶色に遺ッている跡の上から噛み付く。
「いっ、痛……ねぇ、痛いって……」
「此の儘俺に頸動脈喰い千切られて死ね」
「嫌だよ。──君は私と一緒に死んでくれないだろう?」
「当たり前だ」
「其れに、」
どうせ君に噛み付かれるなら、此方が良いんだけど?
全力で歯を立てているというのに、余裕そうに曲がる唇。
嗚呼、腹が立つ。
「……叶えてやるよ、その望み」
END
2017/04/04