Novel
□君不足。
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「んー。」
今俺は部屋で1人、洋服選びに苦戦していた。
朝茜から「暇?」というLINEを貰い、急遽会うことになったのだ。
お互い忙しくてなかなか会えてなかったから久しぶりだな…。
今はまだ待ち合わせ時間より20分も前。
なのにさっきから時計ばっか見てる。
ほんとに茜不足なのだ。
どれだけ自分が惚れてるかわかる(笑)
暫くすると、人混みの向こう側をぱたぱた走ってくる茜が見えた。
時計を見ると5分の遅刻。
「ご、ごめんねっ!寒かったでしょ?風邪引いてない?」
「寒かったー、5分の遅刻だべ?」
俺はわざと意地悪に言う。
茜のことだから寝坊とか忘れてたとかで遅刻してきたんじゃないってことぐらいわかってる。
「怒ってる…?」
と言いながら下から覗き込んでくる顔は寒さで紅くなっていた。
可愛い…///
俺は返事の代わりに覗き込む為に近寄ってきた茜を引き寄せておでこにキスをした。
「えっ!え、ん?」
慌てふためく茜がとても愛しかった。
「洋服選びにでも手間取った?」
いつもよりお洒落してきているような茜に尋ねる。
「う、うん…ごめん。」
図星だったらしく茜は俯いた。
お互い同じような気持ちなんだなと改めて実感して心があったかくなった。
可愛い彼女がデートの時にお洒落して来てくれるなんて俺は幸せ者だと思う。
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気がつくと空は瑠璃色に染まっていた。
「暗くなっちゃったね…」
寂しげに言う茜を見つめる。
「寂しかった?」
俺が唐突に聞くと茜は首をかしげる。
「暫く会えなくて、寂しかった?」
「うん…でも菅原君勉強忙しいし、部活も頑張ってるから無理言えないよ。」
俺は苦笑いする茜を抱きしめた。
「俺も寂しかったよ。」
「え、そうなの?一緒だったんだ、嬉しい(ニコッ」
「ほんと今日会えて良かった。後少し会えてなかったら俺おかしくなってたかも(笑)」
「危ないなぁ(笑)でもまた暫く会えないの?」
「来週も試験なんだべ…」
「そっか、なら仕方ないね…」
「ほんとごめん、試験終わったら絶対会おう?」
「うん!大丈夫、私菅原君が毎日くれるおやすみだけで幸せだから(ニコッ」
「うーん、俺はまだ足りない。だからもうちょっと充電させて。」
そう言って茜を抱きしめる力を強くする。
「苦しいよ(笑)」と俺の中でジタバタする茜を少し離すと「充電は出来ましたか?(笑)」と笑いかけてきた。
その笑顔が無性に可愛くてつい俺は茜にキスを落とした。
「充電完了(ニカッ…ん、茜?」
茜は硬直したまま動かない。
ゆっくり離れて見ると茜は今までに見たことないくらい紅くなっていた。
「す、菅原君は充電満タンかもしれないけど私はキャパオーバーだよぉ…」
と言いながら両手で顔を覆い隠す。
「ご、ごめん!つ、つい…」
思わず自分の欲求に任せて動いてしまったことを悔やんでいると何かが頬に触れた。
「お返し…お、おやすみ!!」と言って茜は自分の家に駆け込むように入っていった。
…全く可愛いお返しをしてくれる。
自分より小さい茜が背伸びしてほっぺたにキスしてくるなんて、考えただけで俺こそキャパオーバーだった。