羽兎のSS置き場(東方)

□吸血練習
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「こう…かしら……?」
「ちょっと強いわ、もう少し浅く……」
「浅く……あ、溢れてきちゃった……うう、難しいわ…」
「大丈夫よ、もう少し頑張ってみましょ?」



「他の吸血鬼を知らないか、ねえ……」
湖に浮かぶ紅い屋敷のその中で、二人の少女が話をしていた。
「ええ、あなた結構交遊関係広いでしょ?だから一人くらい知らない?」
「どーだったかな……つーか、何でそんなの知りたいんだ?」
少し不貞腐れた顔でクッキーをいじりながら話す、白黒衣装の少女ー魔理沙ーは、目の前で優雅に紅茶を飲む悪魔、レミリアにそう尋ねた。
「まあ……フラン居るでしょ?あの子にもいい加減ちゃんとした血の吸い方を覚えさせなきゃと思ってね。それでその講師になる奴を探してるのよ。」
「ふーん……それ、お前が教えるんじゃ駄目なのかよ?」
最もな意見だ。しかし、レミリアにはそう出来ない理由があった。
「えええっと、そのね、ほら、私レベルになると血の吸い方も普通と違って高度なのよ。だ、だから初心者のあの子に教えるにはちょーっと、こう、ね、合わないのよねっ。」
実際は、レミリアは人に教えられる程吸血が上手くないだけである。
少食なのも相まってやたら血を溢す。そんな無様なのを妹に見せられるはずがない。
しかしそんなことは言えない。お嬢様だもの。
「……まあ良いか。しかし吸血鬼なあ、他に居たっけか……」
疑惑の目をしながらも、脳内の記憶をあさってみる。それらしき者が居たかどうか……
「……あ、そういやそれっぽい奴が一人居たような気もするぜ。」
「本当っ?何処の誰?」
「えっと、確か…………」



「あなたが、吸血鬼の『くるみ』ね?」
「確かに私はくるみだし吸血鬼というか吸血少女だけど、あなたは誰ここは何処!?」
先程と同じく紅茶をたしなむレミリア。
その前に座っているのは魔理沙ではなく、大きな羽を持った、少し幼さの残る面立ちの少女。
魔理沙に詳細を聞き、即座に従者の咲夜に(無理矢理)連れてこさせた吸血少女、くるみであった。
湖の番をしつつ、のんびり花を愛でていたというのに、とんだ災難である。
「ここは紅魔館、そして私はここの主である吸血鬼、泣く子も黙るレミリア・スカーレット様よ。さて、あなたに一つ頼みたいことがあるの。」
「自分で様とか付けちゃうんだ……」
ぱたぱたと大きな羽を動かしながら、恐らく逃げることは不可能であろうという現実に嘆きつつ、仕方なくその吸血鬼の話に耳を傾けるのだった。不憫である。
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