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□秋風
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今年も紅葉が綺麗な季節になり、紅葉で有名な山のふもとにある名無しさんの両親が経営する店もたくさんの人で賑わっていた。


(今日も人が多いなあ…)


店の入り口にたまった紅葉を掃きながら、ため息をつく。



毎年のことでも、普段静かな分この人の多さにはなかなか慣れない。



そんなことを考えながら掃除をしていると、誰かにぶつかってしまった。


(だから人が多いのは苦手…)


顔を上げると、スーツを着た男性が無表情…というより少し悲しそうな顔をして見下ろしていた。


「あ、すみません…」



反射的に謝ると男性も頭を下げる。


(すごい綺麗な人…)



思わず見惚れていると、男性の手に何かが握られているのに気がついた。


(写真…?)



名無しさんの抱いた疑問に答えるように、男性が言った。


「こちらの少女をご存じではありませんか?」


おかっぱ頭の可愛らしい女の子の写真。


「すみません、分かりません…」


「そうですか…。ありがとうございました。」


男性は寂しそうに微笑み呟くように返事をすると、足早に去っていった。


(執事さんかな…?)



この日から、名無しさんの頭からは男性の姿が焼き付いて離れなかった。
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