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□冬恋
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あれから数日。12月に入り、本格的な冬がやってきた。


名無しさんはあの日の事があまり思い出せず、もやもやしていた。
歩いて自分の家まで帰ってきたような気がするが、ハッキリとしたことは思い出せなかった。

名無しさんはそんなことより、重大な発見をしていた。


(狗神さん、毎日同じ時間にうちの前を通ってる…)


何で早く気づかなかったんだろうと後悔しつつも、毎日の楽しみができた。

ただ、狗神一人で歩いている日はほとんどなく、リードを着けてお散歩プレイみたいな時もあったが。

「犬の散歩みたい…」

それでも好きだと思える自分はどれだけ重症なのかと恥ずかしくなる。


本当は話しかけたいけれど、あの様子だと名無しさんの事は良く思ってないだろうという結論になり、窓から眺めることしかできなかった。




(今日はひとりだ…)

いつものように、窓の外を歩く狗神を眺める。

ふと立ち止まり、こちらを見たような気がした。

「…なんてね。私は幻覚まで見るようになったか」

我に返ったときにはもう誰もいなかった。
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