OP連載
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自分だけ、鋼鉄製と思われる傘をさしたディアマンテの醜い笑みを前にしながら、キュロスはカン十郎達とは逆側にいる国民達の方へ走った。
タンクにこの場の傘を任せ、自らも国民達を守ろうと駆け出したリク王。
ウソップは、鼻を啜って構えた。
「兵隊!!!お前はそいつを倒せーーーっ!!!他は任せろォッ!!!!」
「!?ウソランド!!」
キュロスの片足が踏ん張り、方向を変えると同時、ウソップの手から放たれた”緑星”によって、次々と巨大な緑の葉が生い茂る。
「葉の陰に隠れろォ!!!!」
慌てて葉を傘代わりにしていく民達とウソップを眺めたディアマンテの顔が歪み、キュロスは心置きなくディアマンテへ向かっていく。
「ほォ…なかなかうまく凌ぎやがる!!」
「余所見するな!!!」
「は!?」
降り注ぐ”棘”の中、てっきり血みどろでいるか、傘の下から負け惜しみでも言ってきたのかと思い見てみれば、キュロスが”棘”と弾きながら接近してきていた。
人間業とは思えない、まさに神業といっていい技を見せつけられたディアマンテが動揺したのは一瞬だけである。
次の瞬間には、彼の1本しかない足に銃を向けていた。
パン!!
「ウハハハ!!!上に気をつけろよキュロス〜」
足を撃ち抜かれ、膝からくずおれたキュロスの上に”棘”の雨が容赦なく降り注ぐ。
「キュロス!!!」
「兵隊!!」
「キュロス軍隊長ーーー!!!」
それを見ていた者達は口々にディアマンテを非難するが、やがてそれも悲鳴に変わる。
「うわああっ傘に穴が!!」
「こっちもよ!!!」
「ウハハハ!!不幸ってのは続くもんだ不思議となァ!!」
「おいカン十郎新しい傘を…!!」
「描く場所が…」
傘の下には人が密集していて、地面には描くスペースがなかった。
「致し方ない!!」
傘の外、棘の雨の中で描くしかない、と錦えもんと頷きあう。
この雨の中、片足で立つ男がいるのだ。
人ごみを抜け、傘の外へ彼らが出ようとした時、彼らはある事に気づいた。
棘の雨がやんでいたのだ。
空に浮かぶのは、たった一粒の少女だけだった。
「”フレア・ヴィブラート”」
黒い棘の雨は、1つ残らず彼らの頭上で消し飛んでいた。
「なんだとあの小娘ェ……!!」
「あいつは…!?」
「シノ殿!!」
ディアマンテが憎憎しく吐き捨てながら、傘も放り捨てた。
ウソップ達は見覚えのある小さな姿に希望を見つけ、傷ついた傘は少しずつ降ろされていく。
その間にも、たった一本の俊足がディアマンテへと迫る。
「これで終わりだ!!ディアマンテ!!」
「その傷だらけの体で…そんなに死にたきゃ殺してやる!!スカーレットの様に!!!」
―――しかし、剣を折られ地に伏したのは嘲笑っていたディアマンテの方だった。
シノはそれを見届けると、再びマンシェリー達の所へ戻ろうとして、感じた視線の先を見る。
リク王だった。
キュロスの勝利に沸く観衆の中、リク王だけがシノを見上げ、深く頷いた。
ともすれば、頭を下げたかのようなその動きに目を瞬かせたシノは、こくり、と頷いて返して消えた。
国王の意図が何であれどうでもいい。
シノは約束を守っただけだ。
王宮で、安堵とともに唇を震わせる”友達”との……
「シノさん!?あれ?あれ?どこに行っていたんれすか!?早くお怪我を治しましょう!!お2人とも…!!」
「じゃあ先にキャプテンをお願い……失礼」
「きゃっ」
「姫!!姫をどこに!?」
両手を出して待ち構えていたマンシェリーを優しく掴むと、カブが慌てて問い縋る。
ので、
「……一緒がいいよね」
「えっ」
小人2人を胸に押し込み、シノはまたしても姿を消した。
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自然系は電伝虫(生き物)と一緒に移動できるようなので、小人も服に入ればOK?
ドフィの言う”覚醒”を踏まえて、”触れたもの”もしくは”己の周囲”(効果範囲不明)も可能っていう解釈でいいのかな。
じゃないと黄猿さんとかピカってなるたび全裸だし…ピカりながら電伝虫してたし。
有機物、無機物とかは関係ないのかな。