番外編

□リゾートごっこ
1ページ/1ページ




「あづい……シノ…おれもうだめだ……」

「そんな…っベポ君しっかり…!!」


だらりと舌を出して寝そべり、今わの際だとばかりにのばされる腕を、小さな手が両手でぎゅっと包み込む。
それを目撃したペンギンが首を傾げる。


「ん?あいつらリゾートごっこしてたんじゃなかったか?」


彼らの上には日よけのパラソルが差してあり、今しがたシノが放り出したうちわが床に転がっていた。
横のテーブルには、カキ氷が入っていただろう空の器とストローだけのグラスがある。


「ごっこっつーか何つーか…」

「言葉の綾さ」


たしかに見た感じ、リゾートでトロピカルな感じだけどな、とシャチも頷く。
台詞は真逆だが、何だか雪山で遭難して事切れそうな人ともう1人…みたいな、雰囲気にはそぐわない小道具たちばかりが彼らの周りを占めている。


「待っててベポ君!!今すぐカキ氷のおかわり持ってくるから…!」


だから死ぬなと言わんばかりのシノ。


「もう何べんも夏島経験してんのになァ…」


その度にベポは死んでないんだが…素直すぎるきらいのある妹分は、毎回ああやってベポの世話を焼いている。


「クマじゃなけりゃ殴ってるぞおれは」

「まァな」


ペンギンは密かに、お前クマ相手でも前に羨ましがって殴ってなかったか?とうっすらとした記憶を掘り起こそうとしたが、沈黙は金だ。
気持ちはわかる、と頷くに留めた。
実際、ああしてシノがベポの世話を焼いているおかげで、暑さに参った白熊の八つ当たりはとんと無くなったのだから、水を差すこともあるまい。
と、温かく見守っていたペンギンは、器を持って消えようとしたシノを止めるローに目を細める。



「おい待てシノ。そりゃ一体何杯目だ」

「んーと…多分7杯目?」

「腹壊すぞ」

「でも…!」


いくら白熊でも、際限なく氷をとれば腹を壊すのだということを、ローはベポと初めて夏島を経験してから知っていた。


「望むだけやってたらキリがねェんだ。前もそうやってアイス食いすぎて腹を壊したとお前にも言ってたはずだが」

「ベポ君さっきカキ氷20杯くらいなら余裕だって言ってたよ」

「ベポ…」


暑さでへばっていたベポは、ローに睨まれて冷や汗が出そうな気分で肩を不自然に揺らした。
過去の腹下し事件では、丁度海軍に追われて戦闘になった時であったため、ベポは珍しくローにこってり怒られた経験があるので、大変後ろめたいのである。

ただでさえ暑さでつらいのに、縮こまる大きな身体を労しく見ていたシノは「あ!」と瞬きをする。


「じゃあ氷枕しよう!それならいいよねキャプテン!」

「そうしろ」

「うん!!」

「ついでに3つ持って来い。首元だけじゃなく脇も冷やした方が効果的だ」

「アイアイ!」


「「「「(あれでキャプテンも結構世話焼きだもんなァ……)」」」」


かなり局地的ではあるけれども。


クルー達は、そろそろ島とか見えないかなァ…と晴れわたる青い空と海を眺める。
平和な日常の一幕だった。



********

この頃急に暖かくなってきたのと、本編でもIFでも企画でもハート成分が丁度足りなかったので自給自足してみました。
ベポ君と管制官の”リゾートごっこ”は、南国の身分ある人が木陰でジュース飲みながら女の人に仰いでもらってる感じで。
そりゃ紅一点にそんなことしてもらったら羨ましくて殴ります健全男子。
船長は近くで寛ぎながら、実はちらちら気にしてるといいな。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ