番外編

□サニーの甲板から
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ルフィの声に引き寄せられたのか、甲板にチラホラいた面々も「何だ?」と集まってきて、ルフィは彼らに「あいつ海ん中までわかるんだってよ!!すっげェな!!」と一生懸命語っている。
作戦会議をちゃんと聞いていたルフィ以外の一味は、おおよそ彼女の能力もわかっていたつもりではあったが、まさか海の中まで通じるとは思っていなかったのだろう。
感心したような声があがる。
特に海図を起こす航海士のナミには魅力的に感じられたようで、背後がガラ空きだったシノを、たゆん、と大きな胸を揺らして覗き込む。


「すごいじゃない!って事は海底の岩礁なんかもガラス張りみたいなもんじゃないの」

「……」


シノは躊躇いがちにこくん、と頷くと、何故かローの目を後から手のひらで覆い隠した。
不機嫌な声が聞こえるが、シノは無視した。
ちらっと見えたタンクトップのご立派な谷間は、男性にはたいそう目の毒であろうとの配慮は、ローにはいらん世話だったようである。
引き剥がされた両手をそのまま握って動けなくしたローは、魅惑の谷間なぞ歯牙にもかけずに「何しやがる」とシノを見下ろしている。
あれ?と首を傾げたシノの真意をおそらくこの場で一番理解していたのは、最初から傍観に徹していたロビンで、フフ、と上品に隠された口元から笑みが零れる。
それよりも、目隠しをしてダイレクトに感じた背中の感触の方がトラ男君には気が気じゃないのではなくて?と、心の中でこっそりとシノへと語りかけていた。



「海獣や海王類の位置もわかるわけか…そりゃすげェな」

「だろ?」


ウソップの呟きに我が意を得たり!と喜ぶルフィと、主に避ける・逃げるの意味で感心していたウソップとの心の距離は遠くかけ離れていた。


「こいつがいりゃ海獣の肉食い放題だ!!!」

「ってそういう意味じゃねェーーーっ!!!!」

「おっそりゃいい!」

「お前も感心すな!!」


話を聞きつけ、鍛錬後の汗を拭いて同意するゾロにも、ウソップの鋭いツッコミが入れられる。
ケイミーがいれば魚食い放題!と喜んでいた時と同じ顔で喜ぶルフィ達に、海王類の恐ろしさをくどくどと語るウソップにチョッパーも加わって、船長の口はみるみる尖っていく。


「避けても食ってもどっちでも同じじゃねェか」

「「どこがだ!!?」」

「そうだルフィ。腹に入るかどうかだぞ」

「そうだな!やっぱ違ェ!!」

「「そういう事言ってんじゃねェんだよ!!!」」

「「ッブッ!!」」


ルフィが言いたいのは、避けるのも食うのも同じくらいの労力だろうから食ったっていいだろ、という論理だが、理解できる人間の方が奇特である。
狙撃手と船医のパンチが船長と剣士の頬にめり込んだ。
船内きっての実力者といえど、仲間のツッコミは甘んじて受けるらしい。
…その分、剣士は1発船医にやり返してはいたが。


「そうよルフィ!!そんな能力があったら食い意地よりもっと別に有意義な使い道があるでしょ!」

「えーーなんだよ」

「あたし達は海賊よ!勿論―――」


その時、ふいにナミの両目に音がしそうなくらいカッチリ捉えられたシノは、反射的に握られたままのローの手を握り返して震えた。


「あんたその辺の奴らが後生大事に抱えてる財宝とかも、探り放題なんでしょ?」

「……!(目がベリーだ!?)」

「!あっコラ」


ベリーの両目にドン引きしたシノは、音波化してパッと消えると、手を取られて向き合う体勢だったローの背後をとって再び盾にした。
それを見て「おお!!」とルフィは更に目を輝かせる。


「お前今消えたよな!?な!!お前オバケか!?」

「ヒッ…!」


せっかく再びローを盾にしたのに、反対側には当然ながらさっきまで避けていたルフィがいて、シノは前門のナミ、後門のルフィに今度こそ姿を消して船の上空へ逃げた。
とはいえ、見聞色を身につけた者には通じず、何も無い空に向かって「今度はあっちか!!」と余計にルフィは喜んだ。
ローはこの騒がしい状況にうんざりしたらしく、はあっとわざとらしくため息をついている。


「なあ!なあトラ男!!あいついいな!!」

「あ?」

「あいつ仲間に誘ってもいいか?」

「ァあ!?ふざけんな!あいつはおれんだ!!」


ローが肩を怒らせて怒鳴ると、ルフィも一応弁えたようである。
「ちぇー」と口を尖らせつつ、上空を見上げて「海獣いたらよろしくなー!」と大手を振って再び狙撃手と船医にどつ かれていた。


帆の上に音波の乱れを感じたスータが、主がそこに腰掛けた事を察し、次第に現れる肩めがけパタパタと飛んでいく。


「キュ…キキュイ(まったく…能天気な者どもめ)」

「……」

「キュ?(どうかなさいましたか?)」


小さく首を横に振ったシノの髪が、スータをくすぐる。
わっと目を瞑ったスータには、主の横顔が少しだけ嬉しそうに見えた気がした。



********

本編19.5話くらいのドレスローザまでの航海中のひとコマ。

この後またしてもさりげなく目をベリーにするナミさんには、


「!………そ…そういうの、多分……キャプテンの方が…得意……だよ…?」

「えっ!」

「シノ……てめェ…」

「…ぅう…だって…」

「ちょっとそれ詳しく!トラ男!!」


キャプテンを生贄にのりきる☆管制官。
なんせキャプテンには無敵のスリ能力(?)スキャンがあるからね!
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