HIT企画
□クライガナ島
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頂上戦争を終えたミホークが城へ戻ると、どういうわけか女が一人増えていた。
「何だお前は」
「お前こそ誰だ!?」
「おいシノ。何故入れた」
「…勝手に落ちて来た」
数年前、とある空島にて古い知り合いから託された少女(と思っていたが、実はいい年だったという事を最近知った)に尋ねると、バツが悪そうに顔を逸らす。
シノにとっても不本意だというのはわかった。
本来は、セ○ムも嫉妬するくらいのセキュリティを誇るシノである。
彼女が城での滞在を許しているということは、一応害はないとみていいだろう。
喧しそうではあるが。
「偉そうにしやがって……!!てめェがこいつをひとりぼっちで置いてったクズ野郎だな!?」
「……」
やっぱりうるさい女だった。
そして何故かシノの事で怒られている。
長期不在は認めるが、置き去りにされたのは本人の意志だ。
「人ゴミに連れて行くならそのまま家出する」と言われた時の事を思い出したミホークの顔が、わからない程度にしょっぱく歪む。
「こんな小せェガキを長い間放置しとくなんて虐待だぞ!!!」
「…こいつはもう20にはなるはずだが」
「ハァッ!?頭イカれてんのかてめェ」
おそらく能力だろう。
ふわふわと宙に浮いたペローナがシノの方へ近づく。
「こ〜んなに小さくて双子コーデしたくなる妹系を前にして寝言言ってんじゃねェ!!」
「……言ってる意味がわからん」
「(ふるふる)」
シノにもわからん。
静けさが気に入っていたクライガナ島が、ペローナによって一気に喧しくなったかと思えば―――
実は、ミホークとも少なからず縁のある男、ロロノア・ゾロまでもがここに飛ばされてきていた。
長い間ミホークとシノの2人きりだった静かな古城は、2人の居候のおかげで大きく雰囲気を変えていた。
まず一番は食事だろう。
シノが朝食の用意をしていると、今日も寝ぼけ目でやって来たペローナが「今日こそベーグルサンドだからな!それ以外受け付けねェからな」とか言う。
そんなお洒落なもの、女子高生を出発して野生児を経由してきたシノに作れるはずがない。
「大丈夫。ペローナの分のご飯…作ってないし」
だから受け付けなくても余らない。
手元から目を離さず、トントンとリズミカルに包丁でまな板を叩くシノの後で、ペローナの顔が絶望に歪んだ。
「何だと…っ!!?私はもう2週間も前から言ってたのに何て奴だっ!!少しは作ろうとする努力くらいしやがれ!!っていうか私の分はないとかひどすぎるだろ!私がここに来てもうどんだけ経ってると思ってんだ!!ご飯食べさせてくれなきゃ死ぬだろ!!!」
「……」
トントントントントン…
「大体こんなに話しかけてんのに振り向きもしねェってどういう事だよ!?お前そんなんだから人見知り治んねェんだ!!少しは努力して人と向き合ってみろ!」
「……」
シャッシャッ……トントントントントン…
「まずは手始めに私にちゃんと構って、私のためにベーグルサンドを作れ!!ああ〜もうっ怒鳴ってたら喉かわいた!!ココア飲みたい〜〜〜!!!」
「……」
シャリシャリ…シャリシャリ…
「うっ……うっ……こんなに頼んでんのに無視ばっかしやがって……うっ…ぐずっ……お前なんかもう知らねェ!!」
「……」
ホロウを引き連れ、目を覆って大げさに喚いて去っていくペローナ。
シノは彼女が去ったのを感じて、彼女のいなくなった出入り口の方を振り返る。
皮をむき、器に盛ったばかりの梨はどうやら、いらなくなってしまったらしい。
「……喉、かわいたって言ってたのに…」
野菜のカットを中断してまでむいたそれを一切れ口に入れ、もごもごする。
「(やっぱりベーグルサンドなんていいや…)」
炊き上がったごはんを混ぜた。