HIT企画

□麦わら海賊団
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空島ジャヤで、エネルとの死闘に勝利したルフィ。
落下の勢いを殺すため、ボロボロの身体で身体を膨らませようとしたその時、


「おっ」


ボフン!と受け止めてくれたのは、あの大蛇にも負けない、大きな大きな鷲の背だった。


「ええ!?」


目撃したナミがウェイバーを操り、大鷲に攫われていくルフィを追って慌てて森へ入る。
木々より大きな大鷲は翼を畳み、頭だけが森から突出している。
そこを目指してまっすぐ突っ込んで行ったナミは、急ブレーキをかけてあんぐりと口を開けて固まった。



「わっ消えた!?けど止血はしてくれてる〜〜〜手だけ!!!オバケか!?お前オバケなのか!!?」

「やだっ離してよ…!!」

「お前おれの仲間に」


ドスッ!!


「いてェっ!!!何すんだよデカ鳥ィ!!突付くなよー!お前助けてくれたんじゃなかったのかァ!!」


ドスドスドスッ!!


「うおわァっ!!」

「主様!」

「なっ何やってんのよルフィ…!」

「あっナミ!!」


状況が掴めずにいるナミを見つけたルフィの顔がパッと笑顔になる。


「お前も無事だったのか!こいつがおれを助けてくれたんだ!!」


ドスドス!


「思いっきり攻撃されてんじゃないのよ…」


やっとエネルを倒したというのに、次から次へと…ナミは一気に脱力した。


「よくわかんないけど…そっちの子を守ろうとしてんじゃないの?」

「ああ!そうだナミ!!あいつ仲間するぞ!!」

「はあっ!!??」



ということがあってから2日3日と経ち―――麦わらの一味は空島を後にしようとしていた。



「黄金!!」

「黄金!!」

「お宝の山分けはまずここを降りてからよ!あんたらの好き放題買い物したら何も身にならなそう…」


黄金を持って船に駆け込んできた一味はコニス達と合流し、”雲の最果て(クラウド・エンド)”に向かっていた。


「あの子…やっぱり来なかったわね」


まあ、あんな唐突で強引な勧誘を初対面でされて受ける方が奇特すぎるんだが。

ナミはあの時、大鷲とケンカしてルフィが負けた後の事を思い出していた。

ボロボロだったことを差し引いても、大鷲は驚くほど強かった。
もしかしたら万全の状態のルフィでも敵わないのかも、と思うくらいに。
瀕死のルフィを手当てし、勧誘されてしまっていた女の子によると、どうやらあの大鷲はノーランドを知っていたようで、鐘の音を聞いて約束が果たされたことを確認しに来ていたのだとか。
エネルの噂は知っていたようで、彼と戦い400年ぶりに”島の歌声”を響かせたルフィに敬意を表して助けてくれたのだ。
なのにルフィときたら、何かの能力で消えたりしながら手当てしてくれた彼女を”オバケ”だと目を輝かせ、仲間にするだの何だのと言って怒りを買い、ボロボロの身体で大鷲とケンカして負けて…

それでも諦めきれず、大鷲と飛び去る女の子に「仲間になれ!!おれ達の船に来い!!!」と何度も呼びかけていた。



「来るぞ!!来ないなんて絶対認めねェからな!!よし!戻るぞ野郎共!!!」

「バカ!!今黄金持って逃げてきたばっかだろうが!」

「例の”オバケ”の子ね」

「オバケかァ〜〜おっおおおおれは別に怖くなんかないぞ!」

「美女の幽霊なら大歓迎だ」

「仲間になりたくなかったんだろ?」

「そうよね」

「何ィっ!?」


オバケ勧誘に否定的なのも勿論だが、いきなり一目で『仲間になれ』がどれだけ不審でぶっ飛んでいるかは、経験者達の方がよく知っている。
目くじら立てるルフィを前に、ゾロとナミはため息をついた。

ルフィは信じて待っていたが、”オバケ”は一向に姿を現さず、ついにはコニス達に見送られ、ゴーイングメリー号は空島から落下した。
タコバルーンでゆっくりと落下していく一味を、”島の歌声”が見送る。


空島の人々の声はおろか、鐘の音だけが遠くに響き、雲を抜けて、視界に青い海が広がった。
オバケの少女はもう来ない。
それどころか、頭から抜け落ち、空島という遠い世界にいたのだという事実を後に、余韻を感じていた一味を、大きな影が覆う。
タコバルーンごと包むような影に警戒する者達の中で、ルフィだけが晴れやかな笑顔でそれを迎えた。


「おおっ!!やっぱ来てくれたんだなァ〜〜!!!」

「これが…?」

「ええ…!あの時の大鷲よ」

「でけェー!」

「チッ」

「食いでがありそうだ」

「オイ!!」


手にかけた柄を戻すゾロの後でコックらしいことを考えるサンジに、ウソップが顔を青くして手の甲をぶつける。
その間ルフィは、ゴムの手を伸ばしてタコの頭頂部に着地した大鷲へとひとっ飛びである。
タコなのに汗をダラダラ流しているのがわかるタコバルーンが、何だかかわいそうだ。


「”デカ鳥”!お前も仲間にいでェっ!!」


みなまで言わせず、頭を突かれてお断りだった。


「なったらなったで大変よね。お部屋もないし」

「いや、そーゆー問題じゃねェよ」


「あら、結構重要だと思うのだけど」と本気か冗談かわからないコメントをするロビンを、ウソップの白い目が睨む。
船の上にいるルフィ以外の人間には詳しい事は見えなかったが、ルフィの大声でだいたいの状況は把握していた。
大鷲の声を翻訳したチョッパーによれば、大鷲は空しか知らない娘に青海の広さを見せてやりたかったので、交通手段的な意味でルフィを認めてくれたらしい。
それもどうなんだ?一応うち海賊なんだけど…と思う仲間達の気も知らず、ルフィは嬉しそうに新しい仲間を小脇に抱えて戻ってきた。


「主様ーー!!元気でねーー!!!」

「しししっまたなー”デカ鳥”ーー!!」


ルフィに抱えられたまま、飛び去る大鷲に向かって大きく手を振る女の子。
以前は姿を消したり色々あって、ちゃんと彼女の姿を見たわけではなかったナミも揃って首を傾げた。


「「「「(………なんか……思ったより小さくないか……?)」」」」


仮にも海賊―――こんな小さな、人畜無害そうな少女に勤まるのであろうか……

不安が広がる。

そうして空島の余韻もどこかへ行ってしまった頃、船は無事、青海へと降りたのだった。
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