HIT企画

□IN STRONG WORLD
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「航海士は貰ったァ!!」

「ナミィーーーっ!!!!」


フワフワの実の力を解かれ、落下するサニー号に合わせて、シキと捕らえられたナミ以外が全員空へと放り出されていく。


「ルフィ!!みんなァーっ!!」


ルフィの伸びた腕も届かず、再びシキの力で動き出したサニー号が一味を弾き飛ばす直前、シキの背後をとったのはシノだった。


「グゲェッ!!」


音速移動で背後に回り、シキの頭を蹴り飛ばす。
そしてナミを抱える腕目掛け、フレア・ビブラートで小規模爆発を起こした。


「何だ!?」

「シノ!キャアッ!!」


爆発を感じた途端腕を引いたシキは、たいしてダメージは受けていない。
だが、ナミを抱えたままではいられなかった。
シキが手放したことで、落下していくナミ。
同じく落下しながらも、それを見ていた一味の表情が喜色に変わる。


「ナミ!!」

「シノ!!」

「よくやったシノー!!おれの指示通ーり!!」


すぐさまナミを取り戻しに動こうとしたシキであったが、攻撃の一瞬だけ見えた小娘の姿がまた消えた事で、それを後回しとする。
相手の能力は不明だが、自分と同じように空中で自由に動ける能力者が相手では、同じ轍を踏みかねない。
それよりまずは、再び腕を伸ばしてナミを掴もうとしているルフィとその仲間達を片付けてからだ。


「フンッ!!」


「うわあああっ!!!」

「ああっ!!」

「わーーーっ!!!」

「ルフィーーーっ!!みんなーー!!!」


先程の不意打ちでやり損ねた事をやり直したまで。
サニー号のマストでルフィ、他仲間たちを次々と吹き飛ばしていけば、ゴムの腕はナミを掴むどころか、行き場を失いたわんだ紐となって飛んで行った。
ナミはそのまま、一時船で受け止めておく。


「残るはお前だけだなァ?お嬢―――うげェエエッ何だこの音はァ!!?」


”レクイエム”で怯んだ一瞬の隙を狙い、シノはもう一度、今度は致命傷を与えるつもりで”フレア・ビブラート”をシキに叩き込んだ。
しかし、またしても攻撃が届く直前に察知したシキに回避され、直撃とはいかなかった。
横腹を掠った音波振動の帯によって流れた血は、生憎と傷が深くは無いことを知らせていて、シノは攻撃を続ける。
シキをここで倒すか撤退させない限り、ナミを連れて逃げるのは無理だ。
シノ1人ならば音速移動でどうとでもなるが、音波化していたらナミを連れて飛ぶことは出来ない。


「こォんのクソガキがァーーっ!!!!」

「!!?」


シノが消えた事に驚いていたシキが、ひどく怒りをあらわした目をして、音波化していたシノの位置がわかるかのように見たのだ。
まさか見聞色…と警戒し、距離をとろうとしたが僅かに遅く、それを見ていたナミは悲鳴を上げた。



「シノーーーーっ!!!!」



何も無い空中から、シキの足の刃を受けて現れた血飛沫をあげる小さな身体は、消えることなく落下していく。


「うそ!シノ!!!」

「フン…小娘相手に手傷を受けるとは」

「!」

「さァ、行こうか?航海士よ」


浮力を失ったサニー号から引き上げた男を睨み上げたナミは、悔しい事に今は抵抗の術が無いことを理解していた。
苦悩をそのままに表す眉間は深い皺を作り、シキを見上げている。
シキは気を悪くするどころか、愉快そうに笑みを見せている。
ナミは、仲間達が来てくれるまで…と強く拳を握った。


「(シノ……!!)」



********



「ごめんみんな……ナミを守れなかった…」


せっかく戦闘準備でおめかししたばかりの服が、血まみれだ。
人目がないのをいい事に、シノは堂々と使い物にならなくなったニットを脱いで、傷口に当てたハンカチの上からぎゅっと巻くと、仲間達の居場所を探って”小さなメロディ”で連絡をつけた。


『ナミは奪い返すから気にすんな!!お前は!?』

「ちょっと怪我したけど大丈夫」

『シノちゅわんが怪我!?あんのクソ野郎〜〜ナミさんだけに飽き足らずシノちゃんまで〜〜!!!許せん!!!』

『あーあーわかったから!お前はちょっと落ち着けって』

『大丈夫か!?血はどのくらい出た?止血は…!早く診せてくれ!!』

『お前も落ち着け』

『ひとまずあなたが無事で良かったわ。ナミはおそらく大丈夫。あのシキとかいう男はナミを航海士として欲しがっていたようだから』

「ナミはこの島の中心部…城のような場所に連れて行かれたみたい」

『っつーことはそこがあいつの根城ってことか』

『ヨホホ!さすがはシノさん』

『よし行こう!!どっちだ!?』

「まずみんなの位置だけど―――」


バラバラに彷徨い歩かないよう、それぞれの場所からの方向を指示する。


「王宮の近くに村があるから一旦そこで合流しよう。それまで私、ナミと敵の様子を探っておくから」

『わかった!!』

「…ゾロはチョッパーの言う事をよく聞くんだよ」

『何だそりゃ!!?』

「北はそっちじゃないから…」

『っぐ…!』

『ゾロの言う方向に進んでたよな…?』

『た…たまたまだ…!!』

「……」


ゾロ達との会話を他の皆に繋げなかったのは、シノなりの武士の情けというやつである。
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