HIT企画

□02
1ページ/3ページ




ビリーを伴って現れたナミは、一味が勢ぞろいする場所へと降り立った。
地上では、コックが「無事だったんだね〜〜!!さっすがナミすわん…!!」とハートを飛ばしている。


これまで、王宮でそれなりの持て成しを受けていたナミ。
シキは今日、そんなナミを王宮のプールへと案内した。
しばらくは運動不足も手伝い、プールで泳いでいたナミだったが、やはり抜け目のないナミの事。
プールから逃亡する策を立て、ナミについて来たビリーは思いのほか彼女を助けてくれたらしい。

シノは庭先に出たまま上空のナミとビリーを導いた後、何故かナミにお叱りを受けていた。



「あんた…あたしちゃんと言ったわよね?自分の身体を回復しときなさいって」

「ひゃい…ひょうれひゅ……」

「ナミ!!無事なのは嬉しいけどシノが無事じゃねェ!やめろォ!!」


みょーんと伸ばされた両の頬は赤く色づいていて、チョッパーがナミに取り縋る。
おかげで頬は放されたが、頬の赤みは増したようである。
シノは安否を気遣うチョッパーを、ぎゅっと抱きしめて自分を慰めた。
もふもふもふ。


「うわっ熱っ!シノまた熱が上がったんじゃ…寝ろ!すぐ寝ろ!安静に!」


癒しを求めて抱えたもふもふは、瞬く間にゴリラとなってシノを抱えた。
そしてまたウトウトと瞼を落としたシノは、それを見つめる電伝虫の存在に気がつかなかった。
ゾロやサンジはそれぞれ刀を取り、煙草の火を消す。


敵の来訪は近い――――



********



航海士を含めた麦わらの一味が勢ぞろいしたという報告を受けたシキは、少々予定を繰り上げる事にした。
シキが招いた海賊共を、僅かばかりとはいえ持て成した村人への、ほんの礼のつもりだ。
本来は総会の直前に始めるはずだったデモンストレーションを、急遽今夜へ変更する。
傘下に入れる予定の海賊達の集結は既にほぼ完了しているのだから、さして問題はない。

そして村から召し上げた男を1人解放し、束の間の希望を味わわせる。


「絶望の前には希望を与えとくもんだ。より高い所から落ちる奴の引きつった顔は格別だろ?ジハハハハッ!」


―――待ってろよ、ベイビィちゃん?


口の端を嫌らしく吊り上げたシキは、羽織を靡かせて、航海士のもとへ向かうのであった。



********



熱に浮かされていたシノは、地響きのようなものを感じて目を覚ました。
あの後、解熱剤を貰ったおかげで先程よりは少しマシになった身体を起こして、上手く力が入らない手をついて立ち上がる。
それを見つけたシャオが「海賊のお姉ちゃん?まだ寝てないと…フラフラしてるよ?」と気遣うが、シノは窓の外を睨む。


「早く逃げて……村の人も…皆集めて、早く!!」

「え!?」

「どうしたんだい?」

「ダフトグリーンが無くなってる!動物達が来ないうちに早く…!!!」

「何だって!?」

「何で…」


そんな事がわかるのか。
シノの能力を知らぬシャオ達には当たり前の疑問である。
が、それを言っている場合ではない。
普段は人前で中々口を開こうとしないシノも、この時ばかりは声を張り上げた。
彼女達が善良で、親切にしてくれていた故の根底は、無論ある。
死んで欲しくなかった。

半信半疑でも、シノの剣幕に促されて外に出たシャオ達は、嫌でもそれが真実であるとすぐに気がついた。
動物達の影も形もまだわからないけれど、ようやく人間にもわかる程まで近づいてきた強い地響きが、何よりの裏づけとして村の人々にも危機を知らせたのである。


「(ルフィ達はどこ…?動いてる気配がない……)」


それどころか、ルフィ達と思しき人の形も掴めないのは何故だろう。

シノはまず、居所のわかっているフランキーに連絡をつけたが、やはり船に戻ったわけではないようだ。
もしそうなら、シノをシャオの家に置いたままにしているのは不自然だし、たしかナミもあれから少ししてこの家に入ってきていたはずだ。
ウトウトしながら、彼女も家で休ませてもらっていたのを覚えているが、まさか夢のはずはあるまい。
嫌な予感がした。


急いで、村人達に逃げろと声を掛けていくシャオ達の声を拾って拡大させる。
突然スピーカーを通したように大きくなった声に驚いたシャオが気を失いかけるが、母によって何とか意識は保たれたようだ。
どうやら村には地下壕がいくつかあるようで、皆急いで駆けて行く。


「あんたも早く…!」


シノは、そう言ってくれたシャオの母に、ゆるく首を振った。


「私は仲間を探す……ありがとう…」

「あっ」

「お姉ちゃん!」


心配してくれている彼女達の声を背にして、シノは姿を消した。
音波となり、上空で漂う。
凶暴性を増したこの島の動物達の先陣が、ついに村へと辿り着いた。
まだまだたくさんの動物達が、この村へと押し寄せている。
シノは再び”エコーロケーション”でルフィ達を探したが、声も形も掴めない。
考えられるのは、これより遥か遠くに移動しているか。
もしくは音波の届かない地中深くなどにいるか、動かない状態で何かに包まっているか…である。
例えばだが…声を発さぬ、物言わぬ体を入れた棺が数多あるとしても、どれに誰がいるのかを精密に探るのは、かなり難しい。
無理ではないが、集中、距離、物質など様々な条件や要因によって結果が絞れるかどうかが変わってくるのだ。


「(ルフィ達の声もしない……どこにいるの?………!ナミ、どうして……!)」


この島全土にまで索敵範囲を広げて拾ったのは、何故か王宮に戻っているシキとナミの声だった。
最悪の想像が頭を掠め、シノはいや、と思いなおす。
そんなはずはない。
ルフィ達が負けるなんて、そんな事、あるわけない。
どこかに身を潜めているのかもしれない。


「―――探さなきゃ……」


シノは、キッと火に蝕まれる村に目を向けた。
シキによって、不当に進化させられてしまった動物達…彼らを傷つける事はしたくないが……


「今は少し、静かにしてて―――!」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ