HIT企画
□C.M.R
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シノは小さい。
どのくらい小さいかというと、この世界では10代前半で通じる容姿なのである。
そのせいで損したり、得したり…だが、ハートの海賊団の仲間たちは、それも彼女の特徴のひとつである、と認識していた。
―――が、ある時。
たまたま子供に間違えられて拗ねているシノを目撃していたローは、ふと考えた。
おそらくシノの体格は、栄養失調や何らかの外的要因によるものではなく、先天的な体質である。
成人している以上、成長はもう見込めないのはわかっているが、オペオペの実の能力で何とか出来はしないか、と――
もしも可能だとして、それは遺伝子に関わる問題。
つまりは医療というより、生物学にあたるのではないか。
ローは医者ではあるが、バイオテクノロジーの研究者ではない。
だからダメで元々と、うっすら考えていた程度であったのだが……
「驚いたな……出来たぞ…」
「―――……っはァっ…!」
「シノ!?」
目の前で膝をついた女を前に、ローは半ば呆然としていた。
彼にしては珍しい表情である。
それも無理はないが…
膝をついた女、シノの身体は今、驚くべき変貌を遂げていた。
傍らの兄貴分は仰天しながら妹分と思しき女性の腕を掴み、抱き起こす。
さらっとした黒髪も、深い黒の瞳も、健康的なきめ細かい肌も、全てがシノを思い起こさせる。
なのに、その肉体には思わぬ変化が起こっていた。
「うそ…っ!シノが…シノが……大人になったーーっ!!?」
肉体の変化が終わったため、息切れもなくなり健康そのものといったシノを診察した後、ローはしみじみと言った。
「でかくなったな……」
「もっと他に言うべき事があると思う」
数年ぶりに再会した父親か。
「すごいねェ〜〜シノが大人になっちゃったね〜〜」
「ベポ君。私は元々大人!」
そもそもの場所が医療室であったのは幸いではなく、ローがこの場所を選んでいたが故である。
ローのおかげで成長した(?)と思われる身体は、実に身長170cm。
この世界基準の成人女性の平均値よりはやや低めである、というのが診察の際色々と計ったローの言であった。
ちなみに胸囲も少し増したので、チューブブラがキツキツになってしまい、大変きわどい状況となったのは言うまでもない。
現在は、ローのシャツ1枚というあられもない姿だ。
「だいたいスリーサイズまで測るってどうなの……」
とがっくりしているシノに、ローは「カルテには精細に記述するもんだ」と言ってのけた。
それは元のサイズとの比較という意味でだろうか。
となると元々スリーサイズ測られていた事になるので、何かもう、考えたくない。
「とても必要とは思えないんだけど」
「うるせェ。どうせお前はおれの仲間(もの)だから別にいいだろ」
「何か今変なふりがな入った!」
「気のせいだ」
ベポは楽しそうな2人をにこにこと見守っていた。
残念な事に、妹分は全然楽しくない。
「これでキャプテンとシノはお似合いになるね〜〜」
「は?」
少なくとも、これで一目で”かどわかされた少女と悪党”に間違われる事はないだろう。
「繁殖期になったら言ってね」
「ベポくぅんんんっ!!?」
白熊の顔は、善意で満ちていた。