HIT企画

□12人の超新星
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新しい場所へ行く時、シノはひとつルフィにダメだと言われた事がある。
それは”何があるのか詳しく教えるな”という、随分抽象的でいて、単純な願いという名の船長命令だった。



「そこに何があるのかわからねェから冒険なんだ。何があるかわかってる冒険なんて、そんなの冒険じゃねェ!」



シノも、勿論その他の一味全員がルフィらしい、とその言葉に納得しつつも、やはり譲れぬ境界というものはあった。
特に、怖がりな航海士や船医、島に入ったらいけない病を患っている狙撃手などからの意見により「危険な事は絶対に知らせるように!」なんて、これまたシノにとってはざっくりとした判断基準を設けられてしまった。

この基準が意外と曲者で、シノが大丈夫と思っている事とそうでない事が、航海士達と一致しない事もしばしばあったりする。
今がまさにそれだ。



「ちょっとあんた!!億越えがうじゃうじゃいるとかそういうのは先に教えなさいよ」


シャボンディ諸島に上陸し、ショッピングモールで買い物中だったナミは、ふと小耳に挟んだ情報で億越えのルーキーが集結している事を知った。
シノに確認してみれば、妙に恥ずかしそうに「うん…」と頷かれたので眉をひそめていると、理由がわかって脱力した。


「……あ、あのね……私も……そのルーキーに入ってるって……っ」

「あんたね…そこ照れるとこじゃないから」


賞金首になる事自体には危機感もあったようだが、ルフィ達が海賊らしくないせいか、悪人リストの仲間入りしたという認識が妙に薄いらしい。
それよりも、有名人のように顔バレする方に羞恥心が働いていたんだったこの娘は……と、W7で札付きとなった時の事を思い出して、ナミはげんなりと肩を落とした。
それと同時に、だからこの島に入ってすぐにパーカーのフードを被ってしまったのかとも納得する。
要は、上陸する前から知っていたのだ。
そう思うと何だか憎らしくて、フードの陰から見える小さい鼻をきゅっと摘む。


「!ふゅ」

「いいこと?ルフィやあんたは大丈夫でも、か弱い私にはそうじゃない事が世の中にはごまんとあるのよ?」

「にゃっにゃみ…」


本当にか弱い人はこんな事しない…


「…反省してないみたいね」

「!」


何故わかる!?と目が言っているシノの鼻がぐにぐにされるのを見て和んでいたロビンはといえば、猫のように愛らしい声を出したシノのフードに、猫耳がついていたら満点だったのに…などと思っていた。
耳付きアイテムを探して、青い瞳をキョロキョロと動かしている。


「他に何かヤバそうな事とかは?」

「んと…無法地帯のあたりかな。人が売ってある…」

「そういえば、さっき町の地図にあったわね」

「あの真ん中の地帯ね」

「ええ…きっと名だたる賞金首は自然とその辺りに集まっているんじゃないかしら。海軍の目も届きにくいでしょうし……シノ、これなんかどうかしら?」

「あら、似合うじゃない」


それはロビンのお目当てとは少し違い、白いクマ耳のついたトレーナーだった。
今被っているフードの上からクマ耳のフード部分だけロビンが被せてやると、ナミが笑顔で同意する。
鼻を擦っているシノの不満顔は、どうでもいいらしい。
それに口をムッとさせたシノへ、ナミは目に付いたボルドー色のヒダの大きいプリーツスカートをパッと合わせる。
プリーツとプリーツの間に細いベルトが装飾されていて、甘くなり過ぎないデザインだ。


「いいわね」

「でしょ?シノって童顔のわりにバストもあるからあんまり子供っぽいデザインだと逆に犯罪くさいのよね」

「……」


ナミは何か自分に恨みでもあるのだろうかと思わずにいられないシノだったが結局は、自分のためにあれこれ選んでくれる2人に黙って押し負けていた。
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