HIT企画
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「助けに行こう!」
「当然だ!!」
「待てルフィ君!!」
船長のゴーサインが出たというのに、ジンベエが待ったをかける。
意見が分かれた男のとる行動として、彼らは最も短絡的で常套的な手段をとった。
一騎打ちである。
ところがそれも、ロビンによって準備運動程度であえなく幕引きとなったのだが。
ならばどうするのか―――そして何故、こんな、こんな……
大きな広場でショーのように戦うハメになっているのだろう?
「――シノ!!よわほしの事頼んだぞ!!!」
「いいけど…」
大きな的であるしらほしを守るのに、シノ程の適役はいないだろう。
やや不満そうに了承の声を上げる小さなシノを見て、しらほしも遠慮がちに「よろしくお願い致します。シノ様」と健気に頭を下げた。
ロビンはシノを振り返り「あら…ちょっとご機嫌斜め?」と微笑む。
「だって…」
頬をむっすりと膨らませるシノの不満の在処がどこにあるのか。
仲間達には一目瞭然なのだが、しらほしは違う。
「あ…あの…申し訳ありませんシノ様…あのっわたくし……」
「……」
「ふふ…!誤解しないでね。ね、シノ」
「あの…?」
人見知りであるが故に、目も合わせず、返事もせずなシノに、しらほしの目がだんだんと水分で煌いていく。
シノもバツが悪くなってきた時、数多の”打ち水”がしらほしに向けて飛来して来た。
「きゃああああっ!!!」
目の前で爆発し、散っていくそれらに驚いたしらほしが頭を覆って屈むと、そこかしこからしらほしを案じる悲鳴が上がった。
しらほしに届く事なく蒸発、四散していく”打ち水”に最初に気づいたのは、打ち出した魚人海賊団達である。
無意味だった攻撃に舌打ちし、原因を考えるうち、見ていた民達も姫が無事である事を知った。
しらほしは、ルフィの名指したこの小さな人のおかげか、と目を丸くする。
「……あ……あなたが嫌な…わけじゃ………」
「え…?あの…何か…?」
小さな人間が低い位置でぽそぽそと喋るものだから、しらほしの耳にはきちんと届かなかったようだ。
だからといって大きな声で言い直す社交性もないシノが口を尖らせ、またロビンが笑みを零す。
「ふふふ!ごめんなさいねしらほし姫…あなたを守るのは嫌じゃないんですって」
「まあっ!そうなのですか?わたくしったら早とちりを…!申し訳ありませんシノ様!」
「……(ふるふる)」
無言で首を横に振るシノを見て、しらほしも今度こそ安心したらしい。
その後も、空から襲ってくる魚人達、しらほしを害する全てを”フレア・ヴィブラート”で退けるシノだったのだが、見知らぬ人々に囲まれ、注目されての戦いは、シノに多大なストレスを与えていた。
次第にイライラは最高潮に達し、シノは初めて大きな声でしらほしに言った。
「―――……ちょっと飛ぶから動かないで」
「っはい…!!」
「”フレア・カペラ”!!!」
あまりにムカついたので、まあ皆なら大丈夫だよね、と気にしない事にしたシノは、目に見えぬ音波砲という恐ろしいビームで広場を恐怖に陥れた。
要は、とっとと掃除を終わらせればいいのだ。
自らの声に乗せて放つそれは、自然と肺も使う。
シノはカラオケで歌いきった後のようなすっきり感で、ふう…と一部焦土になっている広場を見下ろした。
こういう時、仲間が少なくて敵(的)が大きいって便利だ。
「「「「おいコラシノーーー!!!!」」」」
この騒ぎの中にあっても、シノは自分を呼ぶ仲間達の声を拾った。
何?と話を聞く姿勢のシノは、うっすらと音波化しながらゆっくり地上へ降りていく。
「何よそれェ!?危ないでしょーが!!!」
「そォだぞコラァーー!!!見えない砲撃とかどこにくるかわかんねェもんこっちに向けやがってェーーー!!!」
「死ぬかと思ったぞォ〜〜〜!!!」
ナミ、ウソップ、チョッパーといった一味でも比較的臆病なメンバーの叫びに、シノはそんな事か…と火に油を注ぎそうな事を思った。
そして言った、能力を介して。
正直な性質(たち)なのだ。
『なァんだ……大丈夫だよ当てないようにしたし』
「「「そーゆー問題じゃねェ(ない)んだ(の)よォ!!!!」」」
『?2年で強くなった皆なら大丈夫でしょ…?』
不思議そうに、こてんと傾く頭が見えるかのような声。
怯えていた仲間達も、そうでない者も若干含め、その後の反応は概ね一致していた。
程度の違いはあれど、照れた。
「そんなホメんなよ〜〜!!」
「いやァ〜まァ?2年でたくましくなったこのおれ様にかかりゃァあの程度の攻撃ィ〜」
「そっそんな信頼されてもっ何も出ねェぞコノヤロがっ!!」
「フフフッ!誰が頼りになる美人航海士よ〜まったく!本当の事言っちゃって!」
「スーパーにパワーアップしたおれ様に敵うビームなんて無いだろォけどよォ〜〜!!」
「当然だな」
「シノちゃんに惚れ直されたおれ…!!」
「ふふふっ」
「ヨホホホホッ!ご褒美にパン」
ジュッ!!
「ツ……?………えっ…」
ブルックの肩にかかっているモフモフの一部が溶け、焦げ跡の先が無くなっていた。
サアッと血の気が引いて顔を青くするブルック。
骨なのに。
―――イヤアアアアッ!!
能力を使わずとも耳に入るほど絶叫する骨には、きっぱり「いや」と断るシノの声は届いていないだろう。
目に付く場所の破壊行為を終えたシノは、この島に近づいてくる舟の存在に気がついた。
仲間達にも伝えたが、あまりに大きな船ノアは、見上げた人々の目にも映っていた。
スルメもまた仲間になってくれたので、シノはスルメにしらほしを任せてノアの内部を探る事にした。
何故急にあんな大きなものが近づいて来たのかと思って探れば、中にいた4本足の魚人?がしらほしがどうのと独り言を言っていた。
バンダー・デッケンを知らなかったシノは、とりあえずありのまま”小さなメロディ”で一味とジンベエ、しらほしへと伝えた。