HIT企画

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あの承太郎とかいう白い人が来てからというもの、何だか杜王町が慌しい。
シノは、仗助を取り巻く環境が変わりつつあるのを感じていた。


「友達とかいって2人も家に知らない人が来るようになったし…」


あれ以来、シノと出くわすたびにカオ○シか花も恥らう気色悪い不良になった億泰は哀れ、当の人見知りには煙たがられていた。
仗助を口実に康一と家に来るので、知らない人間がマイホームに来る機会が増えて、人見知りにはストレスとなっているのだ。
そんな時は、野山で過ごすに限る。
仗助のくせに、と何気に酷い事をシノが思うのは、人気者でありながら、実際は親しい友人が少ない仗助を知っているからである。





「…ん?」


夜遅く、さすがに仗助の友人達もいなくなったはずなのに、仗助の部屋から誰かの声がした。
次いで、何かが壊れる音も。
自室にいたシノは、反射的に”エコーロケーション”で探ってはみたが、人の形がない。


「(この世界にも私以外に自然系がいる…?)」


スタンドだったら、覇気パンチ効くのだろうか。
反射的に切り替えた見聞色では、はっきりと小型宇宙人みたいなソレが認識出来た。
いつでも手出しできるように様子を探っていると、相手の声が家のコンセントに吸い込まれていく。
電気?


ドタドタドタ!


「おいシノ!!」


面倒な予感しかしない。



********



あの電気の声は、チリペッパーとかいうらしい。
ただ辛そうな印象しかないが、現代社会で電気ってかなり厄介とも思う。
通電し放題だ。


「っつーわけで今日、承太郎さんと会うから来てくれよ」

「……」

「頼むよ……億泰の兄貴の仇なんだよ……」



シノ的に億泰はちょっと苦手な知らない人なのだが、兄弟の仇と聞いては無碍にも出来ない。
何だかんだ文句言いつつ、仗助の友達なのだ。
弟の仲間の力になら、ならない事もない。


「………わかった」



そんなこんなで仗助と一緒に承太郎と会う事になったシノは、チリペッパーの電気体が出てきた瞬間、同じ声を持つ者を探して


「見つけた」


チリペッパーが逃げてすぐ、皆で港に向かう途中で本体の音石明の声を捉えたのだ。
町中に潜んだままならこうも早くは見つからなかっただろう。
音石本体が港に近づいてきたせいで、かなり早い発見となったのである。
すぐに仗助に目配せして消えると、仗助以外は状況に取り残されたように疑問を投げかけるが、もう話しても問題はないだろうと、仗助がシノの音を探る能力についてを明かした。
勿論、便利がいい能力であるからこそ、狙われないように滅多な事では口外しないようにとの注意も忘れずに。

この時承太郎は、シノの能力の利便性もさることながら、仗助の思慮深さに舌を巻いた。
以前アンジェロを捕らえた時もそうだが、仗助は味方の承太郎にも安易にシノの能力を明かさなかった。
自宅を襲撃され、承太郎に呼び出されてジョセフについて話し合っていてもそうだ。
チリペッパーの能力の特性上、直に承太郎に会うまでは話せない。
今日仗助は十中八九、チリペッパーを探るに相応しい能力者がいない場合、シノの能力で捜索する提案をしようと考えていた。
それも、承太郎に手段がない場合限定でだ。
そのつもりだったから、最初に承太郎の計画を素直に聞いていた。
そして、億泰の腕が落とされようとも落ち着きを無くすことなく、音石明を捕らえるその瞬間まで沈黙を貫き、仗助は見事に相手を出し抜いて見せたのである。


ジョセフを守るために港へ走らせていた車は、シノの能力を聞いてから、奴を倒したというシノの誘導で急遽進路を変更。
音石明は港へ赴く事すら出来ずに倒された。



「見直したぜ仗助」

「へ…?
 ……っス」



かくして、何だかんだで港へ連れて行かれた仗助は、生まれて初めて実の父親と対面する事になったのだった。
複雑な心境の弟の近くにいてやろうという姉の心は、だが、知らない人間に囲まれて、いとも容易く音波化した。
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