HIT企画

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「やあ君が仗助のキョウダイのシノさんだね?億泰に一目ぼれされたっていう」

「な゛あァあア!???」

「……」

「是非とも感想を聞きたい。けどいちいち面倒だから”天国への扉(ヘブンズドアー)”するけどいいかい?」

「やめろ露伴死ぬぞ」


仗助の友達が行方不明で死んだかもというので、嫌々ながら他のスタンド使い達と共に心霊スポットに来たのに。
シノはバンダナを巻いた妙な男を無視した挙句、ヘブンズなんとかに嫌な予感がしたため、先手必勝で叩きのめそうとした所、仗助の待ったがかかった。
岸部露伴という漫画家の男はたいそう不満そうだったが、今度は逆に「死ぬとは?そういう能力か?」と、別の好奇心が刺激されたらしい。
仗助に眉を顰めながら対する様子からして、あまり仲は良くなさそうだ。
仗助も嫌そうに「スタンド無くても瞬殺だぞ」と知的好奇心の赴くまま不躾に能力を詳らかにする露伴を窘めるが、それはそれで気になるらしく、姿を消したシノの代わりに質問攻めにされていた。

大勢の前で片思いを暴露された億泰は哀れだが、それより仗助には、身内の野生動物が公衆の面前で漫画家をジェノサイドするかもしれない危機の方が優先度が高い。
せめて誰もいない所で完全犯罪してくれ。
とか、ちょっとグラつく気持ちはある。
しかし、今仗助達にとって何より重要なのは重ちーだった。


ここにいた幽霊の少女曰く、『重ちー』という少年は既に亡くなったという事だった。
シノも仗助から頼まれて探すには探したが、そも、シノは『重ちー』を知らないので、探すにも探せなかったのだ。
『重ちー』を殺したというスタンド使いも。


この時承太郎は、逆の発想をしていた。
音声の記録さえあれば、遭遇した時点で捕まえられずとも、後から犯人を特定出来るのではないか。
その名の通り、ハーヴェストの『収穫』であるボタンを捜索する間も、承太郎は常にコートにレコーダーを忍ばせていた。

捜索の途中で、康一と共に遭遇した吉良吉影。
康一を庇って重傷を負いながらも、レコーダーのスイッチを血だらけの指で密かに押した承太郎。
彼のこの行動により、川尻浩作となった吉良はたった1日で発見されるに至ったのだ。
『シンデレラ』で顔や指紋は変えても、声だけは吉良のままだったからである。
杜王町を出て、どこか遠くへ高飛びでもすれば雲隠れも可能だっただろうに。


――例によって睡眠不足となったシノは、犯人の特定を終えると、捕獲など知るかとばかりに寝た。
丸一日寝て起きたら、犯人は既に亡く、写真の父親も捕まっていた。
出来る男は行動も迅速だった。


という顛末を、やけにボロボロな仗助から寝ぼけ目で話を聞いていたシノは、「ちちおやのしゃしん?」とよくわからんのを隠しもせずにぼーっとしていた。
怒られた。



「だから写真の父親だって!ったく…こっちは苦労したってェのに」

「わたしもねむい……」

「まだ寝んのかよ!!っつーか眠いのと同列かァ?これが!!」


治療を終え、包帯だらけの仗助が怒鳴る。
敵が爆弾魔だったにしては元気そうで安心したとシノがいつもの調子で正直に言ったら、もっと怒鳴られていただろう。
寝ぼけていて良かった。
寝起きに隠れていたのは、そんな安心と、心配もだ。

これでも、他人の怪我は魔法みたいに治せるのに、自分の怪我は治せないというのは、いつ見ても歯がゆい気持ちになる。
のに、寝起きと寝不足で出てしまう欠伸のせいで、どうにも伝わらない姉心である。



「ふわァ……おつかれ…」

「……おう」



それでも案外伝わっているのが、家族というものである。
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