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海軍G−5の軍艦が現れた。
存在自体を隠したいシーザーらは面と向かって追い払うことが出来ず、ローが迎え撃つことになった。
尤も、ローはシノの能力で軍艦の来訪をシーザーより先に察知しており、海軍に見つかりたくないシーザーの対応などわかりきったことで、軍艦の存在を知ったときからローは、こうなることを予想していた。
すぐさまシノに目配せをし、周囲に音が漏れぬよう計らう。


「この島にヴェルゴが到着したら、おそらくおれがアイツを斬ることになる。…お前じゃもしもの時危ねェからな」

「うん」

「一応追い返すだけのつもりだが……もし戦うことになったら、体力を温存するためにも、まずお前が戦え」

「………うん……?」

「電伝虫関係はおれがなんとかしてやる」




…というわけで、シノは今、海軍G−5と真っ向から戦うハメになっていた。
宣言どおり、”スキャン”や”タクト”で海軍の通信手段と足を奪うローを守りつつ、シノは海軍中将なんかと戦っている。

それもこれも、大きな子供達を連れて飛び出してきた麦わらの一味(半分)のせいだ。
シノがこちらを目指す彼ら気づいた時には、既にローは玄関を開けており、詳しい説明も、避けることもままならなかった。
当初はローの慇懃無礼なお出迎えが上手くいっていた(と思う)が、彼らの登場で全てが台無しになったのである。

いやしかし、とシノは思い直す。
やはりシーザーが一番悪い。
シノは研究所ででかい面する監督不行き届きの責任者を、心の中でボコボコにした。
後で現実のものとしてやることを企みながら。



「妙な音出しやがって…っ!!!」


海楼石の十手の目まぐるしい攻撃を避けながら、シノは”レクイエム”と覇気のみでスモーカーとやり合っていた。
”レクイエム”でほとんどのG−5は行動不能に陥っているが、さすが中将ともなれば、これしきの雑音では怯まないようだ。
音速で十手を避けてはいるが、相手の得物は海楼石。
音波化した部分を突かれてはひとたまりもない。
どうやら武装色はスモーカーが上回っているようで、先程から決定的な打撃が与えられずにいる。



「(…すごい…っ彼女、スモーカーさんと五分に近い戦いを……っ!!?)」


真っ先にシノに阻まれた挙句、”レクイエム”による不調と、スモーカーの命令で遠ざけられたたしぎは、自分より幼い少女がスモーカーとまともにやり合えている事実に驚愕していた。
たしぎはスモーカーという軍人を心の底から尊敬し、その実力を認めている。
七武海のトラファルガー・ローにだって、彼は負けないと自信を持って言える。
それが、その七武海の部下にあたる少女が接戦を繰り広げているのである。


「でも…っ!!」


このままいけば、確実にスモーカーが勝つ。
何せ、シノはスモーカーに有効な攻撃手段を有していない。
音波を操り、その身を音波に変えられる能力者といっても、このひどい音色にもびくともしないスモーカーに対し、彼女は覇気でも僅かながら劣っているのがわかる。
このまま少しずつダメージを蓄積されれば、おのずと勝敗は決するだろう。
たしぎがそう思った時、シノの掌底がスモーカーにヒットした。


「っ”ショック”…っ!!」

「!!!!」


相手の身体に触れることで、超振動する音波を直接流す技だ。
人間の身体は7割が水分。
振動は身体中に伝わり、血液が震える。


「っぐァアっ!!!」


「スモーカーさん!!!!」

「スモやん!!?」

「スモ中将ーーっ!!!」


たしぎは我が目を疑った。
あの一撃でスモーカーがやられたとは思っていない。
しかし己はというと、ローが軍艦をオブジェにした途端駆け出し、今しがたスモーカーも受けたシノの技により身体を麻痺させられた為、部下達によって遠くに避難させられている。
たしぎが受けたのは蹴りであったことから、直接攻撃のインパクトの瞬間に放たれる技なのだろう。
スモーカーの右腕などと称されながら、面目ないにも程がある。
時間の経過で多少回復した身体を駆使し、たしぎは上官の下へ走った。


「スモーカーさんっ!!」

「大佐ちゃん!!」



「っはァっはァ…!!」


浅い。
シノの手が触れた瞬間、スモーカーは流れてくる振動を感じるやいなや、凄まじい反射神経で身を引いていた。
戦闘中の打撃による瞬間的な接触では、せいぜい麻痺させる程度となってしまう”ショック”だが、これは元は”フレア・ビブラート”などと同じ。
深く長く触れ、音波を流し続ければ、相手の身体そのものを超沸騰させ、爆発させることも出来る。
その脅威を察知し、いち早く身を引いたスモーカーを、改めて強敵だと判断したシノは、上がった息を整えながら、構えを解かずに背中から倒れたスモーカーを注視していた。


「(キャプテンからなるべく”攻撃”も見せるなって言われてるけど……このまま出し惜しみしてたら負ける……!!)」


中途半端にしか決まらなかったあれでは、麻痺の程度も怪しいところだ。
十手を支えに起き上がるスモーカーから一瞬、ローに許可を求める気持ちで視線を移そうとした、その時、


「”シャンブルズ”」


「「!!?」」


ローの能力が、彼らをあべこべにした。


「!この声…」


スモーカーとの戦闘にかかりきりで、索敵に能力を割く余裕のなかったシノの耳が、聞き覚えのある声を捉える。



「あれ〜〜!!?お前は〜〜っ!!!」



麦わらの一味船長、麦わらのルフィ。
そして、残り半分の麦わらの仲間たちだった。
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