IF

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ログのとれないこの島に、何故今、麦わらの一味が現れたかはわからないが、ローはこの状況を利用することにしたらしい。
元々シーザー、モネ、ヴェルゴには、ローとシノで対抗する算段がついていた。
ただしこの島には、麦わらの他に海軍G−5までがいる。
ローに命を救われた麦わらのルフィはともかく、この上海軍の相手までしていては、いささか不確定要素が多かった。

ローが四皇を餌に同盟を持ちかける間、シノはスモーカーと戦った傷を癒すという名目で、研究所内に戻っていた。
実の所、何かあったとき、素早くローに報告するためである。


「……」


少し前から島の様子を見に行っていたモネの気配が消えた。
氷の土地に入った途端である。
おそらくユキユキの実の能力。
シノは、吹雪の中に紛れた、ほんの僅かな差異を探った。
通常の吹雪と違い、意思と目的を持って動く雪は、風向きとは違う方向に進んでゆく。


「(肉眼ではわからなくても……物体として存在する限り、絶対見つけてみせる…!)」


それがシノの仕事だ。
音波自体が流されてしまうような強風、猛吹雪ならば不可能だが、幸いパンクハザード島の吹雪はそう強くない。
風の流れを探れば、川の流れを登る魚のように泳ぐ雪の動きを見つけた。


「!!(いた……っ!!キャプテンたちの近く…!?)」


まずい。
今麦わらたちとの接触を嗅ぎつけられると、後々面倒なことになるのはシノにだってわかる。


「(”小さなメロディ”)」





「!」

「どーした?トラ男」

「………どうやら、招かざる客らしい」


鬼哭の鞘が抜かれた次の瞬間、何も無い場所へ飛んだ斬撃の先に転がったのは、二つに分断された人面鳥、モネであった。


「うわあっ!!?なんだこいつっ!!??」

「ええーーっ!?何っ!!何なの人?鳥?」


「……っ!!ローっ!!!」

「よォ…モネ。盗み聞きとは感心しねェな」


まさか気づかれるとは思っていなかったモネは、斜めに真っ二つにされた身体をジタバタと動かす。
覇気を纏って斬られれば、通常は血飛沫をあげているところだが、ローの能力ならそうはならない。
自然系(ロギア)の特権、実体を持たない力で、すぐに身体をくっつけようとしたモネは、思い通りにならない肉体に焦りを感じていた。


「…何故!?……身体が元に戻らない……!!!」

「”ラジオナイフ”は切り口が他と違ってな……どんな能力でも、数分は接合することは不可能」

「!?………そう…それで、どうするつもり?口止めに私を殺す?あなたなら簡単よね。何せ私の心臓は、最初からあなたの手にあるんだもの」




「お前の心臓はもういらねェ」

「…?」

「それに……おれは一言も、お前の心臓をおれが持っているとは言ってない」

「……なら……!!」


モネの心臓を持っているのは――――





「さよなら……モネ……」



ぽちゃん……




「!!!!!」


モネの身体を、おぞましいまでの脱力感と気味の悪い悪寒が襲った。
その姿を口端を上げて眺めているロー。


「おわっ!?何だあいつ…!!急に苦しみだしたぞ!」


「……っロー……っあな…た……私に一体何を……なにをしたの………っ!!?」

「おれはただ…あいつに預けてた心臓を捨てるよう言っただけだ」



シノからモネの存在を告げられた瞬間、ローは彼女にひとつだけ指示を出した。



「お前の心臓は今頃海の底……残り少ない命をせいぜい噛み締めてろ」

「こんなことをしてっ………あなたの心臓は……っ!!!」

「フン。おめでたい奴らだ……お前らなんかに、いつまでも預けてるわけねーだろ」

「!!?」

「じゃあな」




―――海の力で雪になることも出来ず、バラバラにされた肉片を雪に埋もれさせたモネの目が、麦わらの近くに立つローをひどく睨む。
細切れにされすぎたせいで、電伝虫すら握れない。



「……これであなたは”若様”に消される……っ!!裏切りの代償は大きいわ。あなたこそ、僅かな命を………っっ!!!――――」




あたりを、ヒューヒューと吹雪く雪の音だけが支配する。




「弱ェ奴は死に方も選べねェ」



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10000HIT企画の『うたをうたおう』では、同じくIFPH編であるにも関わらず、G−5は管制官に強いイメージを持っていない雰囲気でした。
今回のスモーカー戦で違和感を感じた方もいるかもしれませんが、それを書くとこちらのネタバレにもなってしまう為、あちらではあえて描写を避けました。
あくまでIFなので、どちらもパラレルということでお気になさらず楽しんでいただければ幸いです。
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