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”ジョーカー”ドフラミンゴの威を借りようと、尚怯まぬルフィによってボロボロになったシーザーは、瓦礫の中から這い出て電伝虫に叫んだ。
「C棟D棟の扉(ゲート)を閉じろ!!」
黒く巨大化した腕が縮み、シーザーを吹き飛ばした方向を眺めるルフィは、あの声の主を探してキョロキョロとあたりを見回した。
「そういやアイツどこいったんだ?あん時急に声だけ聞こえたけど…」
頭に直接囁きかけるような声は間違いなく、ローの小さい仲間だった。
「息も出来なかったはずなのにスゲーよなー。おーい!!”ちっこいの”ーー!!!どーこーだー!!!」
「………(すぐ近くにいるんだけど…)」
ちっこいのって…
声をかけ辛くて立ち尽くすシノだったが、どう声をかけようか、と悩む隙はあまりなかった。
すぐにシノを見つけたルフィが「おーい!!無事だったかーー!!」と大きく手を振っている。
観念したシノは、おずおずとルフィに近寄った。
「…シーザーは?」
「ん?お前手に持ってんの何だ?それ」
「…シーザー…は?」
「うわっお前これ海楼石じゃねェか!!」
「……(くじけそう…)」
くすねた海楼石を、これまたくすねた警備兵の防護服の腕部分を切り取って手袋にしたもので持っていたシノは、話も聞かずに海楼石の手錠をつついて苦い顔をするルフィに肩を落とす。
もう聞くまい…と能力でシーザーを探せば、丁度崩れた壁の穴のもっと向こうで這いずっていた。
「これでシーザーを拘束するから…」
「あいつガスだもんなー!!お前それ取りに行ってたのか!いやー無事で良かった!!ところでお前、海楼石はどうやって外したんだ?」
「……」
矢継ぎ早だ。
しかも何かすでに親しげなノリで話すルフィに、シノはたじたじになりつつ走った。
ルフィもそれに倣って後を追う。
「あれ、元々偽物だっ………っぐゥ!!!」
「!!おいっ」
海楼石の鎖を落とし、コート越しに胸の空洞へ手を当てたシノが蹲る。
「お前また心臓か!?大丈夫か!!」
「……っうん……」
一瞬痛みで解けかけた”エコーロケーション”でSAD製造室を探ると、ローとヴェルゴの戦いが繰り広げられていた。
シノは痛みも忘れ、心配するルフィに微笑んだ。
「―――もう………だいじょうぶ……キャプテンが…取り戻してくれたから」
そう言うと、ルフィも「そっか!にしししっ」と笑って立ち上がる。
「にしても…もうアイツどーでもいいなー…っつーかもう捕まえんのもやだなー」
「え?」
「なあちっこいの!シーザーなんか放って仲間と合流しようぜ!!」
「ダメ!!」
「えー!」
口を尖らせるルフィを見上げ、シノはキッと眉をつりあげる。
「何のためにシーザー倒したの!!」
「そりゃーお前…ムカついたからだ!!!」
どん!と胸張るルフィに、シノは拾い上げた海楼石を振りかざす。
「おわわわっ!!お前っ危ねェだろ!!」
「キャプテンと誘拐するって約束したんじゃないの!?」
「うっ…!そりゃまァ……でもいいじゃねェかもう、あんなの…」
「よくない!!」
あまりの自由奔放ぶりに、シノは慣れない人間だということも忘れて怒鳴る。
そのたびに振り上げた手が海楼石を揺らし、ルフィがビクッと後ずさる。
「いい?あいつ今また部下に命令してゲートを閉じた!逃げ場をなくして毒ガスの中に私達を閉じ込める気よ!!」
「なにっ!?」
「この研究所にいる皆が危ないの!!自分自身はガスで助かるから遠慮なんてない。あいつを放っといたら…下手したらこの研究所にいる全員毒ガスで皆殺しにされるよ!!」
「よし行こう!!」
「っひぇ!!?」
あっという間に、シノの身体はルフィの腕でぐるぐる巻きにされていた。