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あれからウソップはモニターに映る仲間を誘導すると残り、シノは一足先にローの元へ向かった。


ズズズズ…


「ッブッ…っ……オイシノ!!てべェブッぼっ!!」


両手と首に付けられた2つの海楼石を繋ぐようにして、一本の鎖がリードのように繋がっている。
通常の鎖であるそれを掴み、シーザーを引きずって走っていたシノは、床に吸い込まれる苦情にはまったく耳を傾けていなかった。


着いた先にローの姿を見つけたシノは、続々と増えつつある人に辟易しつつ、足を速めた。
少しでも早く人ごみを走りぬけるために。


「ボゲッブブッシュゴーーーっ!!!」


その皺寄せはシーザーが一身に受け、増した苦痛に悲鳴をあげた。
おかげで注目を集めてしまい、シノはムッと顔を歪めた。
うるさい持ち物がシーザーであるというだけで、その注目度は抜群である。




「シノ」

「っキャプテン!!」

「ホギャブギョッ」


ローのもとへまっすぐやって来るシノは、サンタクロースのように大きな包みを担ぎ、もう片方の手には、シーザーを繋いで引きずっている。
まるで散歩を拒む犬と飼い主のようだが、ローは落ち着いたものである。


「うるせェ荷物だ」


こくこくと頷くシノは、数多の視線から身を隠すため、ローの陰に潜んだ。
ロングコートを握って隠れるシノを好きにさせ、「いる?」と掲げられる鎖を断ったローは、かわりに低い位置にある頭にそっと手を置いた。



「!あれってシーザー!?」

「おっお前も来たかー”ちっこいの”ーー!!」


シノの声を聞きつけたルフィが、ゴムで反動をつけて飛んできた。
それまで彼の居た場所の近くには麦わらの一味数名や子供達がおり、やはりモニター越しでは我慢できず、仲間達のもとへ行っていたようだ。


「聞いてくれよ〜トラ男の奴、おれがシーザー置いてきたっつったらスゲェ怒ってよ〜〜」

「当たり前だ」

「(こくり)」


ローの陰から顔半分だけ出して、シノもおおいに頷いた。
この言い方からして、もしやローも彼のペースで疲れたクチだろうか。


「(キャプテンを振り回すとは……ハンコックちゃんのフィアンセ恐るべし…!!)」


ハンコック経由の予備知識には、事実との差異が多分に含まれていた。



「ルフィ!この子がトラ男君の?」

「おう!!”ちっこいの”だ!」

「ちっこいってアンタ…」


仲間に呆れた目で見られようと何のその。
ルフィはシノを”ちっこいの”で通すつもりなのだろうか。
ナミはローの後で不服そうに警戒するシノに向かい、身をかがめる。


「あんた、あの時会った子ね。あたしはナミ。あんたは?」

「………」


あ、これ絶対子供だと思われてるな…と、シノは思った。
不満だ。
超不満だ。

むうっと唇を尖らせるシノの頭に載っていた手が、ポンポンと動く。
見上げれば、ニヤリとあくどい顔になっているローだった。
…面白がっている。

子供に見られるのも、”ちっこいの”認定されるのも、面白がられるのも、知らない人と喋るのも、全部嫌に決まっている。
ローの手をぱしっと払ったシノは、ローを盾に完全にナミから見えなくなってしまった。


「?」

「こいつはシノ。うちの管制官だ」

「かっかんせい…カン??」

「管制官…」


笑った埋め合わせか、ローが紹介してやると、ルフィは聞き覚えのない言葉に首を傾げ、ナミは不思議そうに復唱した。


「そのわりに…なんか喋るのすっごい嫌そうにしてるけど…?」

「ただの行き過ぎた人見知りだ。仕事はこなす」

「カン…セーカン??」


未だに意味を理解できていないルフィの横で、行き過ぎてるのは”ただの”とは言わないでしょ…と思うナミだった。
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