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ローの読みどおり、NEO海軍はファウス島にいたが、あろうことか大将黄猿もいた。
いつかのシャボンディ諸島の時とは違い、七武海という肩書きのおかげで黄猿が襲ってくるということはないが、ローは海軍と直接的に面倒を起こす事は避けたかった。
七武海入りした目的の為にも、必要以上に海軍の目を厳しくはしたくない。
ピカピカの実の能力も厄介だし、ダイナ岩もそこかしこにあるわで、潜水して距離をとり、一時静観を決め込んでいた。
シノの能力があれば、戦況は丸裸も同然だ。
「能力は普通に使えるのな」
「実を食べたのはもっと小さい時だったしね。でも…んー…大人の時よりは使い勝手が悪い感じ」
肉体はともかく、精神が技の使い方を覚えているのでその点は大丈夫だが、どうにも出力とか精度に衰えがあるようだ。
「大人…」
「大人……?」
「何」
「肉体が変化してるからだろうな」
漫画的表現だと、シノの吹きだしに怒りのマークがどんと描かれていただろう。
真面目に分析していたジャンバールを除き、視線が胸と顔を往復していた連中はこぞって両手を前に出して「何でもアリマセン…」と冷や汗を流す。
「あ」
「何だ」
「退避して!皆どこか掴ま」
った方がいい。でないと―――
続く言葉は、船を襲う衝撃の中で小さく埋もれてしまった。
爆発の余波が、潜水艦を遠くへ押し流していく。
「うわあああっ」
「ぐっ」
「何が起こったシノ!」
「Zが!ダイナ岩使った!!」
「バカ!そういうのは先に言え!」
「そーだぞシノ!!」
「だから言ってたでしょ!」
「もっと早くだよ!」
「無茶言うな!」
戦闘中、突然黄猿相手に使ったのだ。
むしろ、衝撃が来る数秒前に教えられた手腕に感謝してほしい。
シノは、当たってしまいそうな壁や椅子などの障害物を音波化して避けようとするのを抑え、ころころと転がっていきそうなベポを掴んで抱き寄せる。
「あっありがとシノ」
「どういたしまして」
「うぅ…」
「?」
大変可愛らしいサイズのベポは、お礼を言ったかと思えば、俯いて唸る。
妹分に抱えて助けてもらう、兄貴分としての複雑な気持ちを察してやれというのは、シノには少し難しいのかもしれない。
しかも今、兄貴分は赤ちゃんサイズだ。
「毛玉ですいません…」
「え…」
何故かがっくりきているベポを撫でて慰めていると、波も弱まり、船のコントロールが戻った。
島の近くにいたはずが、やっと島の影が見えるだろうか、という位置にまで後退させられたのだと悟った後、潜水艦の中で唯一島の存在を正確に捉えられるシノが、在るはずのものが無いという事実に驚愕する。
今の爆発で、ファウス島は消失してしまっていた。