IF
□02
2ページ/3ページ
「―――ダイナ岩はともかく、それを手に入れた連中がどうするかまではおれにもわからん」
というわけで、船の針路は一時情報収集の為、近隣の島へと変更された。
あの爆発のどさくさで黄猿から逃げおおせたZは、行方不明にしろ負傷にしろ、態勢を立て直すなどして、このあたりにくすぶっている可能性は充分にあった。
まさかそこで、同じように一部若返った麦わらの一味と遭遇するとは思っていなかった。
「まっまさか君は……シノちゃん!!?」
「トラ男〜〜!!シノも!熊はどーした?」
まずシノの姿を見て愕然としたサンジ、そして相変わらずベポが気になるらしいルフィ。
彼らを連れてきたのは、変装して町に入り込んでいたシャチ達だ。
シノはベポとともに船で待機しつつ、島全体の様子を探っていた。
そして島内にいる麦わらの一味を見つけたシノが事情を聞いてみると、同盟相手の一味もZの被害にあっていたというので、情報を共有しようという運びになったのだ。
シノが抱えたベポを見せると、ルフィは「お〜!!お前も縮んだのかァ〜〜」と笑い飛ばした。
「縮んですいません……」
「打たれ弱いんですねェ……ああシノさんも、とうとう本格的なロリに…私もあともう5回程触られていたらショタだったはずなのですが…」
「お前いくつだよ」
「今は花の70代です」
「じじいだな!」
海岸近くのカフェで待ち合わせたハートの海賊団に麦わらの一味。
お互い海賊にしては気風がいいおかげか、会談というには和気藹々としている。
「ルフィ君、チョッパー君は?」
「あいつらなら情報収集だってさ!こっちはナミとロビンとチョッパーが縮んじまって、変装したウソップと一緒に別行動だ」
「どーりで花がねェはずだ」
「美女がいねェ」
ただでさえ紅一点のシノがガチロリに転じている中、同盟相手まで潤いが欠如している。
何ということだ…とシャチやペンギンなどが凹み、サンジと一種の仲間意識を芽生えさせていた。
「おれらはダメだって、ナミがケチなんだ」と口を尖らせるルフィに、ローは「妥当な判断だ」と切り捨てる。
「Zを拾うとはな……相変わらずのようだな麦わら屋」
「まあな!」
不遜な態度で目つき最悪のローの皮肉ともとれる言葉にも、にしし!と笑うルフィ。
彼の独特のペースには巻き込まれると大変な部分もあるが、基本的に大らかで快活ないい人である。
ローとは違って、友達の多いタイプだ。
「…シノ」
「ひゃい…」
「「「「(またシノの奴キャプテンの気に障ることを考えて……)」」」」
だから、どうして、こう毎回いいタイミングで頬が伸ばされるのか。
おかげで、最近は仲間達もそれとなく事情を察している。
「―――まずは情報の整理だが…」
こういう時、管制官という役職がシノの人見知りという欠点をガンガン突いてくる。
シノは能力故に、別行動中のナミ達とも繋ぎをつけられる上、現在進行形で島全体にアンテナを張っているので、本来司会進行にはもってこいの能力なのだが…
ローがチラ、と目をやれば、ハートの仲間どころか、麦わらの一味の視線もシノに集まってしまう。
少しは話せるようになったとはいえ、人に注目されるのはやはり落ち着かない。
視線を避けるように目を伏せ、抱っこしたベポをさらにぎゅっと抱きしめる。
そわそわと、ベポの小さくなった頭に顔を埋めそうになって、いやいやダメだ。
大人として!
これは仕事!
自分の役目!
と己を奮い立たせる。
…でもやっぱり落ち着かないので、シノは若干顔を伏せつつ、ローや周囲をおずおずと見上げた。
「「「〜〜〜っ!!!」」」
「あ……あの……」
何か、一部がすごいダメージを受けたようになっている。
「ちっくしょうっ!何だこれはクソ可愛っ……いやいや違うおれは断じておれはレディを愛する為に生まれた男の中の男断じておれはロリコンじゃ…!」
「わかる!わかるぜ…!」
「うんうん」
「おれたちはロリコンじゃねェんだ」
「「「あれは仕方ない」」」
「「「同士よ!!」」」
「何仲良くなってんだ」
「いやはやお気持ちお察しします」
「察せねェよ」
固い握手を交わすサンジとシャチとペンギン達。
それらに白い目を向けるゾロとは違い「私もついうっかりロリに目覚めてしまうところでした…」と同調するブルック。
シノを介してスムーズに進行させるはずが、停滞の一途である。
ローは眉間の皺を深くすると、被っていた帽子を外してシノの頭に無理矢理乗せた。
意味不明な上にぶかぶかで、シノの目が不満そうに帽子のつばから覗く。
「いいから被ってろ」
「……」
これは問答無用の目だ、とシノは本能的に悟った。
これに逆らった場合、高確率で夕飯から炭水化物とたんぱく質が取り除かれる未来が予想される。
ぴたりと恭順の姿勢を見せたシノを、抱っこされた兄貴分は(キャプテンの言う事素直に聞いて良い子だなぁ)とほわほわ思っていたが、ハートの仲間達は(肉がかかってるもんな…)と若干温い目をしていた。