IF
□IN FILM"Z" IF モドモドverキャプテン
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「皆何してたの?」
「知るか」
本当にそうなら、バラしたりしないでしょうに…と呆れつつ、まあシャチ達だしな、と納得したシノは、玉結びを作ってピッと糸を切る。
裏側の縫い目もまっすぐ、表からは縫い目など感じさせない出来上がりに、シノは満足そうに頷く。
人見知りや生意気さが勝ってしまい目立たないが、シノは戦力と生活力、何事においてもオールマイティにこなせる。
無人島で1人、人間として暮らしていたのだから当たり前だが、何でも出来て、そこそこ器用。
細やかさもある。
だからつい、ローも重用してしまうのだが、本人は気づいているのかいないのか。
船長に頼られるという喜びも、優越感も表さないことから、おそらく何とも思っていないのだ。
ベポと並ぶくらい馬鹿素直なシノは、あまり表情を隠さない。
「だいたいお前、さっきの何だ。あの妙な顔は」
裾を合わせたジーンズをローに渡すシノは、きょとんとしている。
気づいてなかったのか…。
「不気味な顔して縫い目を見ていたぞ」
「ぶっ不気味…!あっあれは……キャプテンが…!!」
「あ?」
脳内で半端なく扱き下ろすから…とは、馬鹿にされそうで言いたくない。
むうっと若干膨れっ面で針を片付けるシノは「何でもない!」と口を閉ざした。
「……まあいい。だが、次はもう少しまともな顔しろよ」
「う、うむ…」
おそらく次は顔に出すまい、とでも思っているのがありありとわかる頷きである。
…だがまあ、この次を当たり前に受け入れているようなので、見逃してやる事にするローだった。
次の島までの事なので、ひとまず上着類は着れるもので我慢する事にして、ローは直されたジーンズを持って船長室へ戻った。
縮んだせいで持ちにくい鬼哭は、一足先に戻してやったベポに持たせている。
さっそく着替えているローを待っていたベポは、ふと気になった言葉を聞いてみた。
「ねえキャプテン、彼シャツって何?」
「……」
「ねえシノ!これ、キャプテンがくれるって!」
「?」
「裾直しのお礼だって」
その夜、にこにこと笑うベポに貰ったのは、どう見てもシノにはでか過ぎるTシャツだった。
ご丁寧に、ハートの海賊団のシンボル入りのロー仕様のものだ。
「大きいけど…」
「大きいね」
「んー…でもキャプテンがお礼だなんてすごく珍しいよね」
「シノはキャプテンの手伝いする事が多いから、きっとそのご褒美だよ」
「そっかぁ」
あれで、結構喜んでいてくれたりしたのかな、と思うと、少しだけ気持ちがぽわぽわしてくる。
不思議だけど、何か悪くない。
「じゃあ…お風呂上りに着るやつにしよっかな」
「うん!キャプテン見たらきっと喜ぶよ!」
自信満々に言うベポに苦笑し、シノはそんなバカな、と思う。
だが、ベポには確信があった。
何せ、彼シャツとやらは男が嬉しいらしいのだ。
ベポも、可愛いメス熊が自分のシャツを着てくれたらと想像すると、何だかちょっとドキドキする気がした。
後日、目撃したクルー達に衝撃を与えたその光景は、勿論船長も知る所となり…
運良くその場に居合わせたベポはその時、大好きなキャプテンの顔を見て、うっかり盛大なガッツポーズをして柄で殴られてしまった。
けれど、何だかとっても、いい気分だった。
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IFというかアナザー?
船長縮んでるのに、かなり暢気なハートの海賊団。
こんな一幕もあっても良かったかなっていう出来心です。
キャプテン14歳は成長期始まったばっかで、165cm前後くらいのイメージ。
うっかり鬼哭を引きずってしまい、イラっとして以降、ほぼベポ預かり。
ベポに持たせた鬼哭を、下から握って叩くちっこいキャプテン…ほのぼのするしかない!
後日、ベポはいい仕事した!とクルー一同賞賛の嵐。
じれったい2人をあたたかく見守るハートの一味とかいいな。