OP連載

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昔から人見知りな子と言われ続けてきたシノであるが、よもや自分が人っ子一人いない無人島に住むだなんて、想像だにしていなかった。
しかもそこは空に浮かぶ島。
想像上でもお断りである。



ふらふらと彷徨い、その昔誰かが気まぐれに捨てた新聞を拾って断片的に知りえた情報は、どれも信じがたいものばかり。



大海賊時代だの何だの――――英語と日本語の入り混じった新聞から読み取った世界は、シノに絶望を味わわせるのに十分な衝撃を与えた。



自分が知るより何倍も大きな植物で埋め尽くされた森で、シノは蹲る。
そもそも何故自分はこんな古代の密林のようなところにいるのだろう?
それに、この幼稚園児のような小さな身体は何だというのだ。
自分は確かに、高校生であったはずなのに――――



彼女は知らなかった。
所謂ぼっちと呼ばれていた彼女に、ふざけた同級生が3階から水をかけてやろうとした際、誤ってバケツごと彼女の頭に落としてしまったことも、そのせいで死んでしまったことも。


そうして生まれ変わった先が大海賊時代で、しがない商人の家に生まれ、船旅をしていたところをノックアップストリームという傍迷惑な自然現象に巻き込まれ、一気に天涯孤独となったことも。
辺りに散らばった木片や何かの欠片が、彼女が類稀なる確率を生き残ったことを示しているが、同時に海から空へ打ち上げられたショックで、新しく生まれ、生きてきた数年間の記憶も失っていた。




…よって、いくら考えても、答えは出なかった。
彼女にとっての最も新しい記憶というのは、高校の校庭を歩いていたところで終わっていたのだった。



考えている間にも、昼と夜は巡り、空腹も待ってはくれない。
見たこともないような生き物から逃げ続け、彼女はある日、自分と同じように打ち上げられた積荷の中からとある果実を発見する。
かなり危ない外見の果実ではあったが、腹の減りすぎで頭になかった。
がぶりと口に入れた瞬間に広がったえもいわれぬ不味さが「おれ、実は悪魔の実なんだぜ!」と主張して初めて「ああこれが…」となるのだった。



結果的にその実のおかげで、シノは巨大生物の跋扈する古代密林で10年以上の長い間生き残ることが出来た。
実の名前はわからなかったけれど、音や音波を操れることから、シノは『オトオトの実』でいいやと適当に名づけた。
どうせこの島に、自分以外の人間はいない。
いるとすれば、シノと同じくノックアップストリームに乗ってきた海賊が年に一、二度現れる程度である。
シノはけして彼らの前に姿を現さなかったが、悪魔の実の力で彼らの会話を遠くから拾うことで色々と情報を得ていた。
曰く、この空島は来ることこそ大変だが、帰ることはそう難しくないらしい。
帰り道は、島のほぼ中央にある滝壺からミルキーロードと呼ばれる雲の道が流れており、そこを降ればいい。
ただしミルキーロードの流れは上から下への一方通行であり、帰り道専用なので、この島には人が訪れない。
時々実力不足で野垂れ死にしたりする海賊がいるように、この島に居続けるのは大変だ。
過去の海賊達の遺物で価値のありそうなものは、シノがいつも早々に島の奥に隠していて、お宝と呼べるものは見つからないだろう。
獰猛な獣はいるが、町がないので補給もろくに出来ない為、リスクとデメリットが大きいのだ。
幸いこの島のログは3日でたまるので、ボロボロになった船をそこそこ修理出来たら、だいたいの海賊はすぐに出て行く。



だからこそ、居続ける実力のある海賊が来たときが厄介だった。




(う〜〜何で今度の人たちはすぐ出て行かないの〜〜?もう一週間だよ…眠い…)



3日くらいなら不眠不休で監視出来るが、一週間とか無理だ。
同じく音を操るよしみか、動物達の中で一番の仲良しである蝙蝠たちに時々任せて寝ているけど、ナポレオン並の睡眠時間は正直辛い。
…実際のナポレオンは2〜3時間どころか何時間も寝てたとか言うけど、シノも猛烈にそうしたい気分だ。



彼らの船は潜水艦だとかで、普通の船より修理が難航しているようだった。


シノとしては、この世界の科学力で潜水艦が出てきたことにビックリなのだが。
今までの海賊船は皆、木造の帆船だった。
電話もないのに潜水艦…この世界の人々の海に対する執着心すごすぎじゃないだろうか。



しかもこの船のクルー、特に船長が強すぎる。
実際に姿を見たわけではないけれど、2メートル近い背丈に大太刀を持ち、森の怪獣たちをいとも簡単に切り刻んでいるのだ。
多分、同じ悪魔の実の能力者だ。
切り刻まれ方がなんかおかしいし、音の反響具合から、地形も少し変わった気がする。
クルーがキャプテンキャプテン言うから名前はわからないけど、きっとすごい賞金首だ。
とりあえず、勝てる気がしないんで、さっさと出て行ってくれないだろうか。




(……なんて、うとうとしていられた30分前の自分が恋しい…)




「――――よォ女。お前がこの島の守り神か?」




…偵察中にバラバラにされた蝙蝠さんたちを助けようとして、逆に捕まってしまいました。
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