OP連載
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「お前、おれたちをずっと監視してただろ」
「……」
「……」
「……」
「キャプテン。この子すっごい怖がってるよ」
きゃー!なにこの熊可愛いー!!なんて悶える余裕はなく、シノはクマ違いの、目の下の隈がすごいキャプテンの前で膝をついてだらだらと冷や汗を流していた。
何か胸にぽっかり穴が空いたし。
てゆーかそれ心臓?
見るのも怖いんだが、もしかしてそれ切り取ったの?
そのへんで羽とか体がバラバラになった蝙蝠さんたちが元気に動いているところを見ても、すぐ死ぬというわけではなさそうだけど…
あれって私の心臓なんだよね?
片手でりんごみたいにポイポイしながら握ってるそれ、私の心臓だよね?
怖がるだろ普通!
何でこのおそろいのツナギ着た連中はそんな平然としてられるんだ!
こんなにたくさんの人に囲まれて、ジロジロ見られて、蝙蝠さんたちはバラバラだし…だし……なんか泣けてきた…
ポロポロ
「うわ!泣いた!」
「キャプテンこえーもんなー」
「こんな小っちぇー娘じゃ仕方ねーって」
失敬な!
私は平均的だばか!
と言いたいけど、恐怖と人見知りと蝙蝠(ともだち)への蛮行で涙が止まらない。
ぐすぐすしゃくり上げていると、「どどどどーしよー!泣かないでいいんだよ!!」と心配してくれる熊をよそに、隈の方は「チッ」と舌打ちなんぞしやがった。
「キュイッキュー!(シノ逃げろ!)」
「キュキュキュッキュ(私たちのことはいいからシノちゃん逃げて!)」
「!っみんな…っ」
頭や足から羽を生やして、団子になりながらバタバタと抵抗し、シノのことを気遣う蝙蝠たち。
島の皆を守るためとはいえ、元はシノが彼らに監視を交代してもらわなければ、こんなことにはならなかったのに。
シノは彼らだけでも何とか無事に帰してあげたい!と気を強くする。
人間と会うなんて、一体いつぶりだろう。
一方的に監視したり、撃退したことはあっても、動物たち以外との会話なんて、少なくともこの世界に来て、一度たりともなかった。
そのたった一度の初めてが、よりにもよって、こんな連中だなんて。
向き合うのも怖くて、目を逸らし続けていた親玉の顔を、シノはキッと見つめ返す。
「ベポ」
「この子シノっていうみたい。こいつら、シノ逃げろって」
やっと顔を上げた女の顔が随分マシになり、ローは口元に笑みを乗せる。
「どうする?お前の心臓はおれの手中…仲間のパーツを全部持って逃げきるには、ちと条件が悪いぜ」
「((((さすがキャプテン…!!年端もいかねぇ女の子に何てあくどい!!))))」
我らがキャプテンの素敵さにズキュンされたクルーたち。
ハラハラと見守る白熊ベポ。
まさに海賊らしい笑みを浮かべる船長トラファルガー・ロー。
ハートの海賊団の面々の注目を一身に浴びるシノは、震える声で叫んだ。
「……っ知らない人はっ!!嫌いです!!!!」
「「「「言うにことかいてそれーーーっ!?」」」」
ローの眉間に一本皺がより、ベポだけが(あ、この子人見知りなのかな?)と正解に辿りついていた。