OP連載

□04
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この島のログはなんと、1日でいいらしい。
しかし、船の修理もあるので念のため1週間はここにいる、との船長のお達しだ。


「とはいえ、ここは造船業にはあまり明るくないようだ。補修はするが、本格的な修繕には至らねーだろう。だからこの島でW7(ウォーターセブン)へのエターナルポースを手に入れたい」


島に来た当日の夜、ローは食堂に皆を集めて、今後の方針を語った。
ハートの海賊団にも整備士はいるものの、潜水艦なので本格的な設備と部品がなければこの損傷は完全に直せないそうだ。


「もうすぐ船は新世界へ入る。生半可な準備で生き残れると思うな。W7を出たら、この島の次の島へ航路を戻す。以上だ」


皆が威勢のいい返事を返す中、シノはとりあえずベポの真似をして「アイアイ…?」と言ってみた。
話の意味はあまりわかっていない。


「ところでシノ」

「!」


あまり理解していないのがバレたのか!と警戒するシノを、そんなのお見通しだったローはスルーした。


「お前の能力を詳しく教えろ。全部じゃなくていいが、お前の船においての役割も考えたいからな」

「お!良かったなシノ」

「シノは遠くの音も拾えるから、おれか操舵手といるといいかもね」


ベポと一緒にいるのがお仕事になるなんて、それは願ったり叶ったりだ。


「それはおれも考えていた。お前は空島でおれたちの行動をほぼ正確に感知していたな」

「…うん」


確信を持って告げたローに、シノは躊躇いがちに肯定する。
そしておずおずと聞き返した。


「でも、何でわかったの…?」

「最初は動物たちの気配だな。上陸したおれたちを常に一定以上の距離を保つように避けていた。島の散策をはじめてからもそれが続いたんで不審に思った」


いくら野生動物といえど、対峙してもいないのに、ローたちの力量を見定めて近寄ってこないというのは不自然だった。


「だからこいつらに指示を出して統制してる奴がいるんじゃないかと疑った。お前の能力に感づいたわけじゃない」

「さすがキャプテン!」

「おれたち全然気づいてなかったしな」

「確信に変わったのは、下手くそな尾行する蝙蝠が来てからだな」


怪獣クラスの生き物は別として、しばらくすると他の猛獣達ですら避けていた自分達の近くに、時々蝙蝠たちだけが近くに寄ってはまた離れて行った。
おそらく並みの人間なら蝙蝠の気配すら気がつかなかっただろうが、ローや仲間内の実力者たちには通じなかった。
シノは納得して、能力について話すことにした。


「音を操って監視してた。反響具合とかで…蝙蝠たちの原理と同じ。大体島中のことは音を拾ってわかってたから、動物達には”小さなメロディ”であなたたちの位置を知らせて、避けるようにしてたの。言葉が通じない子達とかには、近づきたくない音とか出して…」

「この間甲板で操舵室と会話していた能力か?」

「…そう。相手の耳に直接音を流すから”レクイエム”にも似てるけど、”小さなメロディ”は、音を届けて、自分にも届くようにしてるの。大体は本人のみに伝達してるけど、範囲を広げればこの前みたいに操舵室全体に届けたりも出来るし」

「電伝虫いらずだな」

「ただ、相手が高速で移動してたりして、場所の特定が常時できない場合は使えないけど」


それに島中を把握できていたということは、シノの感知できる範囲はかなりのものだということ。
ローの顔がまた悪人に近づき、シノは反射的にベポの袖を掴んだ。
そして、ちょっとした疑問も出てきたので、そのままクイクイと袖を引く。


「ね、ねえねえベポ君」

「なあに?」

「でんでんむしって何?」

「え!シノ電伝虫知らないの?」


ベポが驚いて声を上げる。
ローもクルーたちも信じられないといった表情だ。


「おいおいどこの田舎モンだよ!電伝虫知らねーとか、外で笑われるぞ!」

「え」


シャチに言われ、シノは不安そうにベポを見上げる。


「見たことない?こんなの。これで遠くにいる人と連絡がとれるんだよ」


ベポはごそごそと、ポケットの中から子電伝虫を出した。


「あ!これ知ってる!海賊たちに捕まってたカタツムリ」

「カタツムリって…まあ間違っちゃいねーけどよ」


かわいそうだから野に放していたのだが、つまり電話のようなものだったのか、とシノはようやく得心がいった。
空島に来ていた海賊達は、空島に住む怪獣たちへの対抗策を持たない者達がほとんどだったため、別行動をとることもほとんどなく、使ったところはあまり知らなかった。
話すためのものであることは何となくわかっていたけれど、プルプルとかガチャとか自分で言うものだから、シノとしてはトランシーバーに近いオモチャ?といった解釈だったのだ。
どのみちシノは使う必要がない。


「まあそれはいい。お前、その感知能力は海中でも少しは使えるのか?」

「んーと……本当にほんの少しくらい。陸上の10分の1くらいかな」

「よし。じゃあお前はこれから、索敵と情報伝達に重きを置け。海中でもそれだけの感知能力があればこの船はより有利な航海が出来る」


ニヤ…

仲間達をバラされて心臓を盗られたトラウマも手伝い、シノは毛を逆立てた猫のようにローを睨めつけた。
面白そうに見返したローは笑みを深め、言葉を続ける。


「お前は今日からこの船の『管制官』だ」

「管制官…」

「雑用なんかはそれを邪魔しない程度でお前らで話し合って決めろ」

「「「「了解です!!」」」」

「アイアイ!」

「アイアイ…」


(……何もかも、知らないことばかり溢れてる…)


あの無人空島が、いかに閉鎖された場所であったかを思い知る。
ひとつずつ、知っていかなければ…今はひとまず…


「ねえねえベポ君」


頼りになる兄貴分に、ローの話を通訳してもらうことから始めよう。
電伝虫と管制官のくだり以外、ほとんど意味の分かっていないシノであった。



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潜水艦にもレーダーついてそうだとは思いますが、性能とかわかんないので、ヒロインの索敵能力は海上では勿論、海中でも負けず劣らず有能、くらいに思っていただければ良いかと。
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