OP連載

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「この船ってすごいんだね。ノックアップストリームで登ってきて、この程度のダメージだなんて…」


「空島に来ていた海賊船はいつも皆、派手に壊れていたのに」と感心するシノ。


「そりゃ、んなモン使ってねーからな」

「おれたちは”空を踊る雲”(ダンス・クラウド)に乗ってきたんだ」

「何それ?」

「海面から上空までを行き来してる不思議な雲だよ。捕まえるのが難しいんだ」

「捕まえたの!?」




エターナルポースという砂時計っぽいものを手に入れ、無事W7までやって来たハートの海賊団であるが、ここに来て、一味は二手に分かれることになった。
潜水艦の修理は問題なく済むにしても、かの有名な造船会社、ガレーラカンパニーの腕利きの職人をもってしても、最低1週間はかかると言われたのだ。
よって、やむなくログポースを持ったベポとその他数名を別行動とすることにした。
W7のログは1週間でたまるため、ログが書き換えられてしまう危険性がある。
本来の進路は別にあるため、海列車でしばらく別の島へ移ろうというのだ。


「そこでメンバーを分けるわけだが…」


海列車で行ける島は4つ。

『カーニバルの町』サン・ファルド
『春の女王の町』セント・ポプラ
『美食の町』プッチ
『司法の島』エニエス・ロビー

エニエス・ロビーは論外として、前者3つはどの島も流通の便も良く物資も豊富な発展した都市である。
いかにW7が風光明媚な造船都市といえど、ほとんどのメンバーが海列車を希望するのは目に見えていた。
しかし、船を放って全員で観光、とはいかない。
内外から信頼の厚いガレーラ・カンパニーに任せているにしても、万が一がないとは言えず、もしもの時に現場で判断出来る存在が必要だ。
整備士は当然残すとして、この町には海賊も多いので、人数にも戦力にも不安は残したくない。


「ペンギンとシャチは残れ」

「「えっ!」」

「いざという時船を守れる奴がいねぇとマズイ」

「「いっいやぁ〜」」

「それに…」


帽子に手を当て照れていた2人は、続いたローの言葉とともに視線を辿る。


「「美食……」」


海列車行きの確定しているベポと、その隣でまだ見ぬ美食に夢を馳せたシノである。


「どんな美味しい料理があるのかな〜」

「私お肉とご飯が食べたいな〜」

「この涎たらした2匹はすでに行ったつもりでいやがる」

「「……」」


ログポースを持ったベポはともかく…と言いたいところだが、あれほどベポに懐いていて、ベポもまた離れたがらないシノの2人を引き離すのは躊躇われる。
この2匹…いや2人はセットにしてあげないと、動物愛護にでも引っかかりそうな罪悪感が生まれそうだ。
そもそもシノとベポに本気で抵抗されたら、ペンギンとシャチにも勝てるかわからない。
獲物を求める空腹の動物は恐ろしい。
ベポだけならともかく、シノの悪魔の音色は最早トラウマになるレベルである。


「おれが残ってもいいが…」


その場合、ペンギンとシャチがこの2人を監督、引率しなければならない。
2人の脳裏に、歓楽街で遊びたい2人をぶちのめして、無理やりレストランに引きずっていくシノとベポの姿が過ぎった。


「船のことは任せてください!」

「喜んでW7を満喫するっス!」

「そうか」


食欲に転んだ白熊と野生児の舵取りは、あっさり船長に丸投げされた。


「あとの半数はお前らで好きに決めろ」

「キャプテンやっぱり行くんだねー」


シノに涎を拭われたベポが嬉しそうに言う。
ローは口角をあげて頷く。


「ああ。前から海列車には興味があった」


あれ…キャプテンもしかして自分が行きたかっただけ…?
という思いが過ぎるペンギンとシャチは、何だかんだと上手く誘導されたのだと悟り、揃って肩を落とした。
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