OP連載
□05
1ページ/2ページ
「この船ってすごいんだね。ノックアップストリームで登ってきて、この程度のダメージだなんて…」
「空島に来ていた海賊船はいつも皆、派手に壊れていたのに」と感心するシノ。
「そりゃ、んなモン使ってねーからな」
「おれたちは”空を踊る雲”(ダンス・クラウド)に乗ってきたんだ」
「何それ?」
「海面から上空までを行き来してる不思議な雲だよ。捕まえるのが難しいんだ」
「捕まえたの!?」
エターナルポースという砂時計っぽいものを手に入れ、無事W7までやって来たハートの海賊団であるが、ここに来て、一味は二手に分かれることになった。
潜水艦の修理は問題なく済むにしても、かの有名な造船会社、ガレーラカンパニーの腕利きの職人をもってしても、最低1週間はかかると言われたのだ。
よって、やむなくログポースを持ったベポとその他数名を別行動とすることにした。
W7のログは1週間でたまるため、ログが書き換えられてしまう危険性がある。
本来の進路は別にあるため、海列車でしばらく別の島へ移ろうというのだ。
「そこでメンバーを分けるわけだが…」
海列車で行ける島は4つ。
『カーニバルの町』サン・ファルド
『春の女王の町』セント・ポプラ
『美食の町』プッチ
『司法の島』エニエス・ロビー
エニエス・ロビーは論外として、前者3つはどの島も流通の便も良く物資も豊富な発展した都市である。
いかにW7が風光明媚な造船都市といえど、ほとんどのメンバーが海列車を希望するのは目に見えていた。
しかし、船を放って全員で観光、とはいかない。
内外から信頼の厚いガレーラ・カンパニーに任せているにしても、万が一がないとは言えず、もしもの時に現場で判断出来る存在が必要だ。
整備士は当然残すとして、この町には海賊も多いので、人数にも戦力にも不安は残したくない。
「ペンギンとシャチは残れ」
「「えっ!」」
「いざという時船を守れる奴がいねぇとマズイ」
「「いっいやぁ〜」」
「それに…」
帽子に手を当て照れていた2人は、続いたローの言葉とともに視線を辿る。
「「美食……」」
海列車行きの確定しているベポと、その隣でまだ見ぬ美食に夢を馳せたシノである。
「どんな美味しい料理があるのかな〜」
「私お肉とご飯が食べたいな〜」
「この涎たらした2匹はすでに行ったつもりでいやがる」
「「……」」
ログポースを持ったベポはともかく…と言いたいところだが、あれほどベポに懐いていて、ベポもまた離れたがらないシノの2人を引き離すのは躊躇われる。
この2匹…いや2人はセットにしてあげないと、動物愛護にでも引っかかりそうな罪悪感が生まれそうだ。
そもそもシノとベポに本気で抵抗されたら、ペンギンとシャチにも勝てるかわからない。
獲物を求める空腹の動物は恐ろしい。
ベポだけならともかく、シノの悪魔の音色は最早トラウマになるレベルである。
「おれが残ってもいいが…」
その場合、ペンギンとシャチがこの2人を監督、引率しなければならない。
2人の脳裏に、歓楽街で遊びたい2人をぶちのめして、無理やりレストランに引きずっていくシノとベポの姿が過ぎった。
「船のことは任せてください!」
「喜んでW7を満喫するっス!」
「そうか」
食欲に転んだ白熊と野生児の舵取りは、あっさり船長に丸投げされた。
「あとの半数はお前らで好きに決めろ」
「キャプテンやっぱり行くんだねー」
シノに涎を拭われたベポが嬉しそうに言う。
ローは口角をあげて頷く。
「ああ。前から海列車には興味があった」
あれ…キャプテンもしかして自分が行きたかっただけ…?
という思いが過ぎるペンギンとシャチは、何だかんだと上手く誘導されたのだと悟り、揃って肩を落とした。