OP連載

□08
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下手に関わるななどと言っておきながら、自分はちゃっかり挑発していたロー。
これが海賊同士のコミュニケーションというやつなのだろうか。
互いにニヤニヤするだけで終わったやり取りにシノ達がホッとしていると、オークションがはじまった。
しばらくすると、ステージに本日の目玉だという人魚の入った水槽が現れる。


「ケイミー探したぞ〜〜〜!!!よかったーーーーーーー!!!」


会場の入り口を壊し、派手に突っ込んできた麦わら帽子の男がステージに向かって走っていく。
あの人魚の知り合いのようだ。


「きゃああ〜〜〜〜〜〜〜!!!魚人よ〜〜〜!!!気持ち悪い〜〜〜!!!」


「?」


誰かはわからない。
最初に女の悲鳴が上がり、それを皮切りとして口々に麦わらの男を止めようとしていた男への、醜い差別の言葉が飛び交った。


「気持ち悪いってどういうこと?腕が6本あるから?」

「わかんない」


シノの疑問にベポは首を横に振ると、ペンギンが「魚人や人魚は古くから差別を受けていた種族だ」と答える。


「でもこれまでの島でも時々いたけど、そんなことなかったよね」

「そういうのが根付いてない幸運な地域もある。が…これも現実」

「そんな…」


シノは、この世界の価値観に、また少し混乱する。
身体が異常に大きい人、鼻が異様に長い人、喋る白熊、タコの魚人。
シノからすると、皆不思議で、皆違った種族に思える。
ここではそれらが共存し、それが当たり前なのだと思っていたのに。


「ねえキャプテン。あのへんからあのへんくらいまで………黙らせていいかな」

「!」


シノは魚人に対し、嫌悪感を発しているあたりを指差した。
能力を行使してか、はたまた物理的に力で黙らせるのか。
どちらでもおかしくない雰囲気だ。
率先して戦うような性格ではないシノの発言に、ロー以外も彼女を見る。


「止めておけ。あいつらの騒ぎに巻き込まれるぞ」

「だって…おかしい!私には立派な毛皮も翼もないけど、だからって島の皆は私を仲間はずれにしたりしなかった!
 生まれてきた身体で命の価値を決められるなんて…っそんなのおかしいよ!」

「シノ…」


ベポは、辛そうに憤るシノを気遣わしげに呼んだ。
シノの頭に、ゴツゴツした手が乗せられる。
ローだ。


「これが世界だ」

「っ」

「よく見ておけ」



その時、2発の銃声がした。
天竜人のいる会場内で一体誰が、と多くの人間が思っただろう。
犯人は他ならぬ、遅れてきた3人目の天竜人。
人魚を買ったその男は、血を流して倒れる魚人を前に喜び歌い、踊っている。


「タ〜ダ〜タ〜ダ〜タコがタダ〜!!!」


きっとこの世界も、シノの世界も、根本的にはあまり変わらないのかもしれない。
地球にだって差別はたくさんあった。
だからといって納得なんか出来るわけない。
自然の摂理は別として、空島の動物達は一人ぼっちの人間を迫害したりせず、同じ島の仲間として認めてくれていた。
それを間違いにはしたくない。
けれど、手を出すわけにもいかないことも理解していたシノは、ぎゅっと拳を握った。
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