OP連載
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その後、麦わらの男が天竜人を殴り飛ばしたことで乱闘となり、会場は避難する観客達とでてんやわんやとなっていた。
その間、ローが麦わらのルフィに声をかけたり、それで寄ってきたルフィに人見知り発動したシノが隠れたり、商品だった老人が実は大物の元海賊で、会場中のほとんどを覇王色の覇気で気絶させたりと、シノの人生初オークションは、実に濃い思い出となりつつあった。
『犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい!!直「大将」が到着する
早々に降伏することをすすめる!!どうなっても知らんぞ!!!ルーキー共!!』
「おれ達は巻き込まれるどころか…完全に共犯者扱いだな」
「”麦わらのルフィ”の噂通りのイカれ具合を見れたんだ
文句はねえが…「大将」と今ぶつかるのはゴメンだ…!!」
外を包囲している海軍たちの動向を探っていたシノは、ベポが大太刀をローに返しているのを発見して、素早く彼の肩に乗った。
「これからちょっと集中するからヨロシクね」
「了解」
目を閉じて、意識をより集中させる。
会場を取り囲んでいた海軍は、ローを含めた3人の船長たちが順調に掃除しているので、シノはそれよりも大幅に索敵範囲を広げた。
無法地帯をほぼ聴覚的に把握した後は、動く物体を事細かに識別していき、目当てのものを見つけると、それらの周囲から、一方的に音を奪った。
―――電伝虫である。
これで、指示のやり取りが出来なくなった海兵たちは、しばらくその場を動けない。
「行くよシノ!」
船長たちが会場の周囲を一旦一掃しきったところで、それぞれの一味が合流し、散開していく。
ベポに乗ったシノは、ローに逃げる方向を提示した。
「キャプテン!あの4番GRの樹の方に走って!」
「わかった。が、その前に―――」
ローは、天竜人の奴隷だった海賊、シャンバールを解放していた。
「天竜人から解放されるなら喜んでお前の部下になろう!!!」
「フフ…―――半分は”麦わら屋”に感謝しな…………!!」
一旦は退けたといっても、続々と向かってくる海兵たちを相手に、ハートの一味もジャンバールも、一歩も引いてはいなかった。
「!」
その時、シノは不思議な音を拾った。
それもひとつではない。
「待ってキャプテン!!!右に逸れて!変なのがいる!!」
「変なのって何だ!!」
「わかんないけど…機械みたいな駆動音がする……これは…」
その正体を探ろうと、シノは再び目を閉じ、ソレに神経を集中させた。
モーターのような不自然な音を内包した、大きな物体の形が、徐々に鮮明になっていく。
「……人型……の兵器!?」
「!!」
「あのケバい人達が苦戦中!」
「ええっ!!あの3億越えの人!?」
ベポが顔を青くする。
熊なのにわかる不思議。
「同じようなのが少なくともこの近くに3つ!!」
「シノ!ナビをしろ!!少なくともユースタス屋が苦戦するような相手なら、確実に時間をとられる相手だ!!
その間に大将が来ちまったら元も子もない!!!」
「うん!!」
ハートの海賊団はシノの指示を元に、北を目指した。
彼らの船が北の海岸線付近で潜水しているからだ。
シャボンディ諸島に到着し、燃料などの補給は済んでいる。
ローは何故か魚人島行きを急いでおらず、コーティングもしない状態で船を待機させていたのである。
強敵に遭遇することもなく、彼らが奇跡的にシャボンディパーク付近にまで到達した時―――
「!!27番GRに大将!黄猿だって!!喋ってる!猿なのに!?」
「バカ!そりゃ二つ名だ!東側に抜けるぞ!!あいつだけは避けろ!!!」
「ぎゃあああ大将マジで来たあああっ!!!」
「喚くな!」
混乱するシャチを、ペンギンが一発殴って落ち着かせる。
ローは子電伝虫を取り出すと、潜水艦の操舵室に向かってかけた。
「聞こえるか!40番GRあたりの海岸線に……って何で通じねぇんだ」
「あっごめん!!もう繋がるよ!」
「?」
「さっき海軍の電伝虫不通にしてたはずみで、皆のも不通にしてて!」
最初は会場の外の電伝虫に絞っていたが、外に出てからは次々に現れる人と一緒に電伝虫の気配も増えて、うっかり手当たり次第使用不能にしていたようだ。
シノは慌てて、ローの持った電伝虫の周囲からだけ、音を奪うのをやめた。
道理で、ローたちが会場を包囲していた海軍を一掃した後も、援軍があまり集まってこなかったわけだ。
ローは、予想以上に役立つ能力と、海軍の足止めに有効な手段を速攻で行っていたシノを責めることなく、ただ「次からは気をつけろ」と言って、操舵室に船を移動させる旨を連絡した。
「すげーシノ!!んなことも出来んのかよ」
「すごい能力だな」
シャチに続き、シャンバールまでもが注目するので、ベポは兄貴分として鼻が高い。
シノは知らない人に注目されて、気が気じゃない。
「う、うん。でも索敵しながら音も奪ってるから、この状態で『小さなメロディ』とかは流石に使えないけどね」
この島の大半の音情報が今、シノの頭の中で一気に処理されているのだ。
目を閉じて集中してコレなので、戦闘中はもっと能力を絞られる。
『小さなメロディ』が使えない状態だったということは、ローが自分の電伝虫で連絡を行ったのは、結果的に正解だったということだ。
「いやでも充分スゲーよ!!!」
「フフッ!シノはすごいんだからね!」
「お前が威張るなって!」
得意げなベポに、シャチが思わずツッコんだ。
いつものように凹むかと思いきや、妹分の活躍が嬉しいようで、ジャンバールにビシッと指をさす。
「お前新入りだからシノの下ね!」
「奴隷でなきゃ何でも…」
いい、とまで彼が言い切らなかったのは、あまりにこの白熊が嬉しそうだったからである。
こうして彼らはパシフィスタや大将を避け、新しいクルーとともに無傷で船へと辿りつくことに成功した。
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ヒロインはあくまで音の反響で形や物質を見極めているので、黄猿さんは服着て喋る猿。
黄猿のように移動速度が極度に速い電伝虫は封じられていません。
電伝虫を不通に、としていますが、正確には通じてはいるけど、互いに音が届いていない状態。
通話状態で、音声のみイカレた電話みたいな。
ガチャガチャ、プルプル言うのも口パク状態で、電伝虫自体は正常に機能しています。