OP連載

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シャボンディ諸島を出航したハートの海賊団の次の行き先は、マリンフォード近海だった。
あれだけビビッて逃げてきた大将とやらが3人もいる所に、何故?とシノや他のクルーが思っていると、ローは新聞を見せた。
火拳のエースの処刑をきっかけに起こる、白ひげ海賊団と海軍の決戦を間近で見届けるためだという。
近くに行かなくても、映像電伝虫とやらが頑張るらしいのに…


しかしこの決断もまた、かの赤髪の言葉を借りるのであれば『世界の運命を変えた』のかもしれない。


大将黄猿の攻撃を懸命に避ける潜水艦には今、少し前にシャボンディ諸島で見た麦わらのルフィが瀕死の状態で乗っている。
シノの能力では光の攻撃を防ぐことは出来ないが、他の追撃を見極めることは出来る。
操舵室で指示をとばしているうち、何とかマリンフォード近海からは脱出できた。
凪いだ海に出られたので、追っ手がなければ浮上したいという操舵手に、シノは待ったをかける。


「近くに…ずっと着いてきてる生き物がいる。それから少し離れた場所に、おそらく海軍の軍艦がある。今浮上するのは危険かも…」

「尾行されてたのか?」

「…だと思う」


海中の生き物と、近くに一隻だけある軍艦、切り離して考えるには不自然だ。
このまま潜水していたとして、この生き物が振り切れなければ現状は変わらず、またマリンフォードからは全速力で逃げてきたのだから、この生き物の遊泳速度はかなりのものだ。
振り切れる確証はない。

ローの指示を仰ぎたい、との操舵手に頷くと、シノは医療室の様子を探る。
オペ中ならタイミングを気にするところだが、さすがローは、既に麦わらのルフィの手術を終え、元七武海のジンベエという男の処置に入っていた。



『キャプテン、今いい?』

「―――何だ」

「ハァ、ハァ…何じゃ…声が…?」


突然室内に若い女の声がし、驚くジンベエに構わず手を止めないローは、落ち着いて続きを促した。


『今海中を尾行してくる生き物がいる。多分、4時方向…5〜60キロくらいの所にいる軍艦の手先。さっきからあの軍艦、こっちをまっすぐ目指してる』

「何じゃと…っそれは確かか!?っぐ…っ!」

「動くな。死ななくても殺すぞ」


元々親切とは言いがたいローが、いきり立つジンベエに苛立つ。
ガーゼを当てる手が脅しじゃない、というようにキツくなり、ジンベエは痛みで動きを止める。


「尾行なんざされやがって……その軍艦の様子を教えろ」

『うん……』


シノは目を閉じ、軍艦内部を探る。
人が随分乗っている。
しかも騒がしい。
ヒーハー?


『…説明が難しい。から、そっちに軍艦の音を直接届けます』


すると、医療室内に、ザワザワと喧騒めいた音から、人の話す声までもが具に流れ始めた。


『【ヒィ〜〜ハァ〜〜〜!!!麦わらボーイの潜水艇にはま〜だ着かないのかしら!?】
 【そーだ麦わらー!】
 【生きてんのかなー!!】
 【頑張れ生きてろー!!】
 【当然じゃ!ああっわらわのルフィ……早くあなたに一目会いたい…!!】』

「!!イワンコフ…!」


心当たりのあるジンベエが、再び驚愕する。
今度は動かなかったのが幸いし、最も深い傷である赤犬に貫かれた箇所の処置が終わった。
後は助手をしていたクルーに任せ、ローはタオルに手を伸ばす。


「そういや聞き覚えがあるな…」

「ああ!ルフィ君と行動を共にしておった革命軍の元囚人、味方じゃ…!」

「そういうことなら―――浮上しろ」

『アイアイ…キャプテン…』


恥じらいを滲ませた了解を最後に、音声は途切れた。



「なんでそんな恥ずかしがるんだ?」

「だって…何か恥ずかしい……」


ベポたちが言うから自分もと努力してみたが、やはり言い慣れないというか、羞恥心を覚えるシノだった。
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