OP連載

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ドレスローザ本島が見えてきた。
シノは音波化したまま、王都上空を飛ぶ。



(疲れてきたけど…こんなに人の多いところで降りたくないな…)



音速移動は、移動距離や回数に比例して疲労が大きくなる。
普段、船内でパッと出たり消えたりする分にはさして影響はないが、今回は船で数日かかる距離を一気に飛んできたため、シノの表情にも少し、疲労の色が出ている。
誰にも見えてやしないが。


華やかな町並みに、たくさんの人々と玩具たち。
随分と精巧な玩具なのか、まるで意思を持っているかのように動き回る玩具たちは、シノからすると充分人に近い生き物に見えた。
動物以外とのコミュニケーション能力が壊滅的なシノは、やっぱ町中はNGだな、と緑の多い場所を探す。
すると、大きいが老朽化が進んでいる橋の向こうに、緑が生い茂る小さな島があった。


(あれがグリーンビット…)


ベポが一生懸命描いていた地図を思い浮かべ、シノはそのままかの島へと飛んでいった。
近づくにつれ、そこがまともな植物の群生地ではないことがわかる。
そこにある植物たちは、どれもこれもが異常に大きかった。
シノの育った空島も、雄大な動植物溢れる古代密林であったが、植物の大きさだけを考えれば、この島は空島以上だ。
空から見渡したドレスローザ本島の植物はそうでもなかったはずなのに、まるでここだけが遠い別の国であるかのような印象を受ける。


シノはひとまず、海岸近くの樹木に降り立つ。
そしてドレスローザ中に音波を広げ、索敵を開始した。


グリーンビットの巨大植物と動き回る動物達。
小さな群れが、他の動物達よりも素早く動いている。


(人型……妖精?)


妖精のように小さな人は、自分達よりも大きな動物を捕まえて、地下へと潜っていく。
さすがのシノも、地中深くの音は探れない。
土は音を吸収するので、土の中のものはせいぜい墓穴程度の浅い場所までが感知できる限度だ。
次第に聞こえなくなっていく妖精(仮)たちの動きはともかく、次は海の向こう。
橋から続いて王都付近。
路地裏のゴロツキたち…大体同じ格好をしている。
会話から察するに、ドンキホーテファミリーの下っ端といったところか。
人通りの多い場所では、たくさんの人や玩具が歩いていて、明るい声が絶えない。
ドンキホーテ・ドフラミンゴという男が治めるこの国は、随分と治安がいいように思えた。
海賊だというのに、ちゃんと国を治めているのだろうか。


(キャプテンはフラミンゴの話するとき、いつもよりちょっとだけピリピリしてたけどな…)


よくよく注視せねばわからないような、小さな変化だったように思う。
シノはどうしてか、その時のローの顔が目に焼きついていた。
何かを失い、二度と失うかと牙を研ぐ獣のような…卵を食われた経験のある親鳥が、必死で気を落ち着かせようとしている時のような姿を彷彿とさせたのだ。


(ヨンコーとかフラミンゴとか、まだよくわからないけど…)


ローにあんな顔をさせる男が、いい人間だとはとても思えないシノだった。




「キュキュッ(おいてめえっ)」

「キュッキュイ!(何者だ!)」

「あんたたちこそ、誰?」


樹の上にいたシノは、周りを飛び交う蝙蝠たちの声に耳を傾けた。
久しぶりの蝙蝠族との会話に懐かしさを感じる。
空島の蝙蝠たちとは顔も大きさも異なる彼らの問いに問いで返すと、彼らは驚いたようだ。


「キュッキュ(お前、言葉がわかるのか)」

「キューキュキュ?キュキュ!(なら話は早い。お前一体何なんだ?人間のくせに超音波なんか使って!)」

「ちょっと調べものしてるの。ねえ、この国ってどんな国?ドレスローザのことを教えてほしいの」

「キュイッ?キュキュ(ドレスローザだって?ここはトンタッタ王国だぜ)」

「トンタッタ?ドレスローザのグリーンビットじゃないの?」

「キュキュー(そんなことも知らずに来たのか)」


やれやれ、と言いたげな蝙蝠に首を傾げるシノ。
今シノと話しているのは2匹の蝙蝠だが、少し向こうには赤く輝く目がいくつも見え、囲まれているのが視覚でも捉えられる。


「キュキュッ(まあいい。おれらのナワバリで妙な音波出されちゃ沽券に関わるんでな)」

「キュッキュッキュ(今すぐ立ち去るならよし。でなければお前の全身の血液を一族で貪ってやるまでだ)」

「ふーん……



 ――――で?もう一度言ってくれる?」


「「「「ッキュ……キュゥ……(ご……ごめんなしゃい……)」」」」


樹の上で揮った拳を握って言えば、地に這い蹲る破目になった蝙蝠族たちは、揃って白旗を上げた。
伊達に十数年サバイバルやってたわけじゃない。
動物の間では、弱肉強食が常。
人とは違い、力でもの言った方が手っ取り早いことを、シノはよく知っていた。
蝙蝠族以外にも、潜んでこちらを窺っていた動物達がおっかなびっくりで見守っている。



「別に脅かしにきたわけじゃないよ。ただドレスローザのことが知りたいの。それにここグリーンビットのトンタッタ?についてもね」
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