OP連載
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シノの連絡からまた少し時が過ぎ―――ドレスローザの王宮にて。
ドフラミンゴは、王宮のプールでベビー5の襲撃を受けていた。
シノは、部下であるはずの女から命を狙われていることに少々驚きはしたものの、まあ身から出た錆じゃね?とあっさり流した。
毎日ドフラミンゴの私生活に密着していた身からすれば、気持ちはよくわかる。
勿論、襲撃者側の気持ちだ。
しかし、ファミリーの邪魔立てもあり、ベビー5の負けもまた早かった。
会話から察するに、これを何回も繰り返しているというのだから驚きだ。
ドフラミンゴの命を狙って、それでも部下で居続ける。
居続けられるのはどうしてだろう。
普通は返り討ちで人生終了のお知らせだ。
既に慣れっこらしいファミリーたちは、ボロボロになったベビー5に対し、口々に諭すようなことを言っている。
曰く、彼女の婚約者を殺した(初めてじゃないらしい)のは、ドフラミンゴの思いやりだとか何とか。
理解不能である。
『それにしてもヴェルゴの奴……そろそろ連絡してきてもよさそうなもんだが……』
その名に、グリーンビットのシノがドキリとする。
あれからローとは連絡をとっていない。
ローのことだ。
ヴェルゴを迎え撃つ備えはしたはず。
そのヴェルゴから連絡がない、というのはおそらく………ゴクリ、と唾を飲む。
『ヴェルゴのことだ。万一なんぞ考えちゃいねェが…少し気になる。おれの電伝虫を持って来い』
そして、その予感は当たった。
ヴェルゴは出ることなく、代わりにと繋がった瀕死のモネにより、彼が倒されたことが明かされたのだ。
『何だと………っ!!!!』
「!」
ドフラミンゴの空気が一瞬にして変わった。
遠くはなれたグリーンビットにいるにも関わらず、シノは鳥肌がたつのを感じた。
音だけを頼りに、遠く離れたグリーンビットからですら感じる。
圧倒的強者に対する緊張感。
ドフラミンゴの周りにいた女達が、次々と倒れていく。
平然としているのは、幹部達だけ。
(覇王色の覇気!!これがキャプテンの敵……ドンキホーテ・ドフラミンゴ……!!)
『シーザーは!?』
『無事です。現在シノクニの実験中。シーザーはシノクニでこの島にいる全員を消そうとしたけれど、現在白猟のスモーカー率いる海軍G−5と麦わらの一味、ローは結託し、研究所内へ逃げ込んできた…今は研究所を荒らしまわってる。奴らの狙いはシーザーと研究所の実験体たちのよう「緊急連絡!!」……!!』
モネの電伝虫の向こうから、男の声で響くような声がする。
拡声器や放送の音声だろう。
『「只今トラファルガー・ローが…!!”SAD”製造室へ侵入しました!!!」……そういう事……ジョーカー……!』
『ああ聞こえてる………あの…クソガキ……っ!!』
(”SAD”…?それってたしか……工場で小人たちが作ってる”SMILE”っていうのの原料だったような……)
『――――モネ。お前はもうシーザーと合流しなくていい』
『!!』
ローへの苛立ちを一言で治めたドフラミンゴは、静かな声で口を開いた。
『お前一人ではもはや、シーザーを連れドレスローザに帰還することすら不可能』
『ええ…』
『ヴェルゴのことも…おれの見誤りだ……お前らに悪いことをした…』
『……』
『――だが万全を期し、ここで若造共を消しておきたい』
『その第三研究所には――4年前に第一第二研究所及び、その島を滅ぼした兵器がもう一つ眠っている……!!起爆スイッチを押せば、その島で生き残れるのは猛毒ガスに耐えられるシーザー唯一人…』
シノは顔を真っ青にして、慌てて電伝虫を引っ掴んだ。
『スイッチの場所は…』
『大丈夫…今向かってる…――爆発はタンカーにまで及ぶわ…一隻無駄になるけどいい?』
『……悪いな。シーザーの確保にはベビー5とバッファローを向かわせる。後のことは心配するな』
モネの笑う気配も遺言も、今のシノには右から左へと流れていく。
プルプルプル、という声が、これほど焦れたのは初めてだ。
『全てを道連れに……死んでくれ……!!!』
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心臓を握られていないローが、ヴェルゴに捕まらなかったお話。
取り逃がしたものの、モネにも相当なダメージを与えていたため、原作より些か早く、ロー達側に優位なタイムスケジュールで動いています。
もし麦わらの一味がこなかったらキャプテンどうしてたんだろう…。
トラ男君は捨て身過ぎて心配になるのです。