OP連載

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プルプルプルプル……


食事の用意だ境界線だと騒ぎ立てる連中に背を向け、ローは静かに姿を消した。
スモーカーが不審な目を向けるも、追ってくることはなかった。
近くに人がいないことを確認すると、電伝虫を取り出す。


「…どうした」

『キャプテン大変っ!!今すぐ島を脱出して!!!』

「!」

『モネが島を爆破して、毒ガスを撒き散らすって!!!』


ローの手のひらで、電伝虫が今にも泣きそうなくらい取り乱して叫ぶ。
ところが、ローは今しがた海楼石で繋いだシーザーを視界の隅におさめて口角を上げた。


「フッ…あれで目を盗んでいるつもりか…」

『え?』


電伝虫が目を丸くしてローを見る。


「心配するな。もう解決した」


今になって、G−5が何かを持っているシーザーに気づき、取り上げて仰天している。
血を流すそれが、上官の物でなくて喜ぶべきだろうに。
真相を知るローの笑みが、より深くなる。
不可解であるというシノを投影している電伝虫が、心配そうに尋ねた。


『よくわかんないけど…大丈夫ってこと…?』

「ああ。追撃は?」

『えっと…ベビー5とバッファローがシーザーの回収に出て行ったよ』

「そうか」


パンクハザードに向かっているのがこの2人だけならば、目的は本当にシーザーの回収のみだろう。
ドフラミンゴはまだ、モネの死を知らないということだ。



「おれももうじきここを出る―――お前は……」





受話器を置いたシノは、ホッと息を吐いた。
シノが肝を冷やしただけで済んだようだ。


「キイ?(姫様?)」

「……明日……私…明日、一度ここを出る」


蝙蝠たちは皆、その言葉に固唾を呑む。
ドレスローザ本島へ行くだけなら、このような言い方をしない。


「明日の朝刊にドフラミンゴの記事が出て、ドフラミンゴや彼の周囲を少し探ったら、私は海へ出てキャプテンと合流する。そうしたらドレスローザには行くと思うけど、ここへは戻って来られるかわからない」

「キュッキュイ!!?(そんな姫様!!?)」

「急でごめんね。今までとっても助かったわ」

「キイイイ〜〜〜!!(あたしたちを置いてくの?やだよ〜〜〜!!)」


まだ小さな蝙蝠たちが、シノの元にわっと押し寄せる。
あっという間に視界が塞がれ、これぞまさしく蝙蝠人間というような、ちょっと気持ちが悪い光景になっていた。
うごうごと人型に蠢く黒い集合体はたたらを踏むが、抵抗はしなかった。


「私だって寂しいよ……もしもお別れになったら、必ずあなたたちには伝える。だからそれまでもう少し…みんなの力を貸してくれる?」

「「「「キュッキュキュキュ〜〜〜ッ!!(さよならは嫌だけど仰せにままにィ〜〜〜っ!!)」」」」


涙混じりの別れのシーンにしては、大変シュールであった。
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