OP連載

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「おれは梅干しは嫌いだ」


一口齧ったおにぎりを置いたローを見咎めたサンジに対する返事がこれである。
悪びれもなく言い放つローに、サンジも相応の顔で「嫌いでも一度口をつけたんなら責任持って食いやがれ」と睨む。
しかし、それくらいで己の意志を曲げるローではない。
我が物顔でフン、とそっぽ向いて、サンジの言うことなんぞ聞きやしない。
そもそもローは、自分の船ではパンと梅干しなんて食卓にも上らせないのだ。
甘やかしていたコックが悪いのか、ローが大人気ないのか…ともかく食う気はゼロである。
くるんと曲がった眉の横に、サンジは青筋立てて怒鳴る。


「おめェあれも嫌これも嫌じゃねェよ!!食い物粗末にすんなっつってんだ!!!!」

「あれもこれもじゃねェ。おれが嫌いなのはパンと梅干しくらいだ。ピンポイントで出すんじゃねェ」

「おれが悪いのか!?ふざけろ!!!」

「ちょっとやめなさいよ!!」

「ふぉばぼ!!(そうだぞ!!)」

「ルフィさん。口に詰めたまま喋るのはお行儀悪いですよッゲプ!!」

「あんた達もよ!!!」


ルフィとブルック、合わせてたんこぶ二つを作ったナミは、今にも手足が出そうなサンジとローをやれやれと見る。
元はといえばこいつらが騒ぐから…と食事を続ければ、ふとローの様子が変わった。


「――待て黒足屋。……か?」

「んあ?」

「……ああ……だ。……いいから……」


「ふぁんふぁ?ふぉばおぼやふ(なんだ?トラ男の奴)」

「独り言か?」


サンジを手で制してブツブツと話し始めたローに、一味+2名の視線が集まる。


「…少し席を外す」

「あっオイ!!」


食事を残して中座とは、言い合いも本末転倒である。
サンジは外へ出ようとする背を追って甲板に続くドアを開け、固まった。


どこからかふわりと舞い降りた何か―――それは瞬時に華奢な女性の形へと転じ、何もなかったはずの宙に、突然現れた。



「うわあああんキャプテーーーン!!!!」


あろうことかその女性…少女は、ぱふん!と何とも魅惑的な音ともに、ローの頭を抱きこむようにして空から舞い降りたのである。
無論感極まっただけの彼女には、この接触に何の意図もありはしないのだが



「ノオオオオオオーーーーッ!!てめェトラ男ごの゛や゛ろ゛〜〜〜〜〜っ!!!!」

「っ!!?」

「ふぉぐっ」


サンジの奇声に驚いた少女の腕が、ぎゅっとローに掴まる腕を強くする。
反射的に少女の膝を乗せるように腕で支えたローからはくぐもった声が漏れ、サンジの顔が益々酷いことになっている。
シーザーの「いきなり女が現れた!?」という驚きがすごく地味に感じられる雄たけびを聞きつけ、麦わらの一味もゾロゾロと外の様子を見にやって来た。


「何だ何だ?」

「おいサンジー!いくら何でも食いモンの好き嫌いで殺しあったりすんなよー!」


「このクソ野郎〜〜〜っ!!ガキみてェに好き嫌いした挙句天使にパッパパパッパフパフされるたァどーゆー了見だゴラァアアーーッ!!?」


「なんか違うみたいだ…!」

「あらあの子…?」


マッハで血の涙流してローめがけてやって来たサンジに、次々とやってくる麦わらの一味。
ローの頭を抱きしめ、久々の再会に潤みそうになっていた瞳からは水分が引っ込み、少女…シノは叫んだ。



「きゃああっ!!知らない人ーーーっ!!!!」


「「「「お前がなっ!!!」」」」
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