OP連載
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スータはパタパタとシノの肩の上に止まり、地図の上に小さな貝殻が乗っていく。
「このあたりは王都で…ここが”コロシアム”」
淡い茶色の縞模様の二枚貝を置いたシノは、その下に少し大きめの桜色をした二枚貝を置いた。
「”工場”はその下…地下にある」
「地下か…なるほどな」
「簡単に見つからないはずね」
ナミに頷いたシノは、それから王宮の場所に白い二枚貝を置き、またその下に同じくらいの大きさの水色の貝殻を置いた。
「”王宮”の地下にあるのは”オモチャの家”…ここではホビホビの実の能力者のせいでオモチャになったたくさんの人が労働を強いられている」
「ホビホビの実?」
「触れた相手をオモチャに出来る能力者。ドンキホーテファミリーの幹部で、小さな女の子…でも本当はちょっと違うみたい。名前はシュガー」
「たくさんって…一体どこから?まさか国民とかじゃないでしょう?」
「国民もいるし、多分よその人もいるよ。”オモチャの兵隊”と”小人”達が言ってた」
「兵隊?小人?」
わからない事がおおすぎてこんがらがりそうな一味に、シノは「少し長くなるけど」と前置きしてから、10年前の悲劇から現在のドレスローザに潜む闇をなるべく掻い摘んで話した。
シノが言葉を探すような時は、スータがすかさずフォローしてくれる。
「チッ……あいつらしいやり口だ」
「ちょっといいかしら」
と、ロビンが手を上げる。
「ドレスローザに様々な火種があることはわかったけれど…それなら尚更、労働を強いられているオモチャたちは勿論、そのオモチャの縁者達には反乱の意思はないのかしら?」
「オモチャにされた人は、その瞬間から周りの人の記憶から消えてしまうみたいなの」
「!なるほど…」
「それに、オモチャにする時シュガーは”契約”をするの。ファミリーに逆らわない、言うことを聞きなさいっていう」
「記憶から消え…ただ従順に動くだけのオモチャ……まさに理想の奴隷ね。許せない」
「…反乱の意思も、あることはある」
「どっどうやってだよォ〜〜グズッ」
ドフラミンゴの姦計によって陥れられたドレスローザの人々、虐げられている小人達を思って涙するフランキーは、サングラスを外して涙を拭う。
「オモチャの兵隊」
たった一人。
ドレスローザでただ一人、ドンキホーテファミリーに立ち向かうことが出来るオモチャがいるのだ。
「―――うおおおおんっ!!!じゃあそいつはっそいつァ10年前からたった一人、オモチャにされて人々から忘れ去られようとっ戦い続けてるってことかよォおおおっ!!!うおおんおおおん!!」
「うおおおおっそいつすげェ!!そいつすげェな男だァ〜〜!!!」
「おれはっおれは決めたぜっ!!!ドレスローザに着いたらおれっそいつに一目会いてェ!!!」
「おれも!!おれも!!!」
「おいてめェら!!作戦を忘れるな!この作戦の最優先事項は工場の破壊だ…!!」
号泣するフランキー達に、ローが待ったをかける。
ナミは唇を閉じた手で隠して「たしかに…」と考えを巡らせる。
「そうね……工場を破壊してカイドウとドフラミンゴが戦うことになれば、結果的にそのオモチャ達も救われる事は充分考えられる……少なくとも能力者が倒れれば、オモチャ達は解放される可能性が高い―――勿論それは、オモチャや国民達がカイドウとその軍勢に対して上手く立ち回ることが条件だけど……」
「おれたちは正義の味方じゃねェんだ。いちいちそんなとこまで気にして何が出来る」
カイドウとドフラミンゴの衝突やオモチャ達が解放される可能性だけでも、ドレスローザで虐げられている者達からすると窮地から脱するチャンスだ。
その後に多少混乱が起きようと、必ずしもマイナスの結果になるとは限らない。
”かもしれない犠牲”を恐れて気を取られていては、足元をすくわれるのはこちらだ。
一味の中では事をシビアに捉えるゾロの意見に乗り、ローが一息ついたちょうどその時…
プルプルプル…プルプルプル…
電伝虫が、着信を告げた。