OP連載

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「シノを…助けろだ?」

「ローランド!」


ローは刀を向けたまま、ヴィオラへの睨みを強くした。
それも覚悟の上でやって来たのだ。


「シノは私を助けてくれた…私1人でいたなら、裏切りを悟られその場で王宮に連行……いいえ、殺されていたかもしれない」

「ヴィオラ様が?」


にわかには信じがたい、と思う兵隊の言葉に、ヴィオラは僅かに首を傾げる。


「あなた…私の事を知っているの?」

「え、ええ…!…いえ、それよりも殺されていたとはどういう事でしょう…?あなたの能力に入れ込んでいたドフラミンゴがそのような事をするとは…」

「そうだ。てめェは国王を生かしてやってでも取り込んだ奴の駒―――ドフラミンゴなら、裏切りを悟ったとしてもまず国王の方を見せしめに殺すはず…詭弁は聞きたくねェ。おれが聞きたいのは、あいつをどうやって騙くらかしたかだ」

「たしかに…」


入念な下調べのおかげで、ヴィオラの人柄や能力を知っていたシノと、シノの事を手配書程度の知識でしか知らぬ初対面のヴィオラでは、初手の優位はシノにあっただろうに。
ロビンはローの意見に頷いたが、すると新たな疑問も出てくる。


「シノちゃんは素直そうな娘だけれど、あの娘だって伊達に七武海の片腕と言われているわけではないわ。ルフィならともかく…人見知りで用心深いシノちゃんを、初対面の彼女が簡単に手玉にとれたとは思えない。何よりここには彼女とは馴染み深いはずの小人達もいる。彼らを巻き込んでまで、更にトラ男君を騙しに来たとも考えにくいわ」

「ん〜〜?ってェと…どういう事だ?ロビン」

「シノちゃんが捕まった経緯は気になるけれど、ヴィオラの言葉にはいくらかの信憑性が見出せるという事よ―――ねえトラ男君?」


そうロビンが言えば、ローは苦虫を噛み潰したような顔をして太刀を降ろした。
兵隊や小人達がホッと息を吐き出し、ヴィオラが腰を落ち着けられるよう場所を空ける。
工場へ攻め入ろうとしていたロー達も、一旦ヴィオラの話を聞く事としたのだった。


「話だけは聞いてやるが―――事と次第によってはてめェ……覚悟はできてんだろうな?」

「なっローランド!」

「いいの兵隊さん。トラファルガー・ロー…勿論よ」

「ヴィオラ様!」

「シノは私を救ってくれた。彼女に万一の事があれば……私を斬ってもかまわないわ」

「……」


その言葉に嘘はないように見えた。
それ故ローも黙して耳を傾ける気になったわけではあるが、解せぬ事もある。
何故ヴィオラがシノにそこまで入れ込むのか、である。
ローがドフラミンゴを倒すのに賭けているから、その仲間を救おうとするのだとしたら、その前に何故シノがドフラミンゴに見つかったのかという矛盾が起きる。
シノ1人なら見つからなかった。
ヴィオラが何かしない限り、シノはドフラミンゴに尻尾を掴ませたりなどしない。
シノは馬鹿素直な女だが、それを差し引いても、くだらんヘマなどするはずがない。
数年寝食を共にしてきた仲間だ。
ローは自信を持って言えた。
己を疑う厳しい視線をその身に受けながら、ヴィオラは話し出す。


「シノは―――彼女は素晴らしい人よ。まるで動物のように純粋で、小人のように優しい心を持ってる。疑う気持ちを抱えてなお、心を飾る事をしない。でも最初、私はそれがわからなかった。だから彼女は言ったわ……私の心を読んで決めて、って」

「何?」


その言葉に、ローが反応を見せる。
ヴィオラは慌ててフォローを入れた。


「私もはじめは信じられなかったわ…!自分の心を読めだなんて…あの娘が初めてよ……それに言っておくけど、あの娘はちゃんと考えがあってそう言っていたのよ!」

「考えって…心を読ませるっつー事は、作戦とか、考えも見せちまうんだろ?さすがにそりゃ…」


と言うウソップに、ヴィオラは続ける。


「たしかに工場の破壊や私の”目”を押さえる事、この国の内情などは彼女の中にあった。でもそれだけよ……あの娘はこうも考えていた。カイドウとの衝突にしろ、調査結果と潜入経路以外の詳しい事は自分は何も知らされていない。トラファルガーの…キャプテンの考えは自分からは絶対に読み取れない、と」

「!」


ロビンはハッとし、反射的にローの顔を見た。

―――やはりトラ男君は、この作戦に何か裏の意図を持っている。


「(シノちゃんもそれに気がついていた…でも知らなかった。あえて知らないままでいる事を選んだ……だから心を見せたんだわ)」


知らされていない事があると、知っていたから出来る事。
ロビンが気づいたのだから、ローが気づかないはずがない。
一途な献身に、彼はどう応えるのだろうか。
どういう形であれ、このまま捨て置かずにいてほしい。
そう思うのは、サニー号での彼らを見ているからだろう。


「トラ男君」


ローは黙っているが、まだヴィオラへの質疑は始まったばかりであるし、ロビンもそれ以上の言及はしなかった。

その時であった。
ローの予想通り、拡声器型電伝虫によりドフラミンゴからのメッセージが国中に届けられたのは―――
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