OP連載

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不愉快な報せに憤りを見せた決起本部の面々達であったが、ヴィオラへの詰問もまだ終わってはいなかった。


「―――だから、私も彼女を信じて協力する道を選んだ。シノがそれほど信じる人なら、希望を持ってもいいかもしれない。…それにあなた達のSOP作戦についても知っていたから…」

「そうだったのですか…」


兵隊たちは、今日を決戦の日とする事に決めていた。
それならば、この国唯一の反乱分子である兵隊達だけに任せるより、降って沸いた好機に賭けて、何としても勝ちたい。
様々な事象が重なり、シノの心を見て、ヴィオラはローと麦わらの海賊同盟に賭けたのだった。


「だが…肝心な話がまだだ。それなら何故お前だけがここにいて、シノはがドフラミンゴと戦うハメになる」

「そっそうだ!お前の千里眼とシノの能力があれば、おれ達の作戦の成功率も格段に上がるってェのに!」


そこまで覚悟を決めていたのなら、シノを嵌めたってメリットはないだろう。


「…っピーカに見つかってしまったから…私は思いも寄らなかったけど……千里眼を持った私が、この知り尽くした王都でドンキホーテファミリーに捕らえられるだなんて、思いもしなかった…!!もし負傷したピーカが王宮に戻っていなかったら…私は今、ここには来れていなかったでしょう」


心底悔しそうに顔を歪めるヴィオラの周りにいた小人達が慰めようと動き、またある者は、ひどく驚いた様子で尋ねた。


「そうれす…!ヴィオラ様はかくれんぼがとてもお上手だったのれす!!千里眼で僕達を見つけて、逆に見つかりそうになったら僕達の目を盗んで隠れ場所を変えたり…!」

「そっそういえば…」

「ドンキホーテファミリーにもヴィオラ様のような能力者がいるのれすか?」

「いいえ。王都はほぼ石畳で家屋も石材がほとんどよ……岩石同化人間のピーカなら、骨は折れるけど多少の手間をかければ、私を探し出す事も可能だった…!シノはその事に気がついていた。迫るピーカに気がついたから…私にわざと銃を向け、私の裏切りを隠そうとしたのよ」


優れた悪魔の実の能力者でも、見聞色の覇気を持たなかったヴィオラは、直前までその事がわからなかった。
そして高確率で負ける戦いに挑んでまでも、シノはヴィオラとリク王の命を永らえさせたのだ。


「あーあーちょっと待てよ姉ちゃん…それっておかしくねェか?だったら何でシノはアンタと一緒にいたんだよ。一目で裏切りを悟られたくないのなら、シノは姿を消しといた方が良かったんじゃねェか?」

「?そうすると、ヴィオラはドフラミンゴ達に捕まってたかもしんねェぞ?」


大きな手を出して、待ったを訴えかけるフランキーに、ウソップがハテナを飛ばす。


「元々捕まってたようなもんだろ?それに…言い方は悪いが、SOP作戦の方まで知っていたんなら、リク王がまず見せしめに殺されたとしても…歩みを止めない覚悟を決めていた。そうだろ?」

「…っ!」

「……」


ローの目は、静かにヴィオラを観察していた。
彼女の表情は、フランキーの言葉が的を得ているという顔だ。
父が死ぬところを想像でもしたか、ややあって、ヴィオラは心を落ち着けたようだ。


「―――シノは、私の父の事も守ろうとしてくれていたから……それに、もし私があの場で捕まっていたとしたら、お払い箱としてすぐに消されていたかもね」

「え?」

「ドフラミンゴの目的は私じゃなくてシノだった。シノが私を押さえに来ていると察しをつけて、ピーカを差し向けたのよ。逃げられないよう…確実に仕留めるためにね」

「なるほどなァ…シノの奴…ちっこい野生動物みてェなくせしてやるじゃねェか……くすん…」

「フランキー。鼻…出てるわよ」

「コウモリ族の姫が…」

「キイイイ〜〜!!(ひ〜め〜さ〜ま〜〜!!)」

「……」


おおよそ納得はした。
あの馬鹿素直な女の人の良さなら、充分あり得る事だ。
だだ、ローは口元を強く引き結んだまま…

先程ヴァイオレットが言ったように、ドフラミンゴがヴァイオレットの後釜にシノを据えようとしている可能性は充分にある。
心の中は読めないまでも、シノの探知能力はヴィオラに引けを取らず、また戦闘力は比べ物にならない。
となれば、ますますあの放送は嘘くさくなるわけだが、あのドフラミンゴの事だ。
今ヴァイオレットがここにいて、助けを乞う事も、わかっていたのではないか?
狡猾過ぎる男であるが故に、ローの疑念は尽きない。
そして、最も引っかかるのはシノ自身である。
ギリ、と歯を食いしばるローの帽子のまわりを、スータがパタパタと飛び回って訴える。


「勝手な事を……!」

「キッキイ!キュイイ!(何を1人でイラついておるのだ!早く姫様をお助けするのだキャプテン!)」

「うるせェ」

「キュッキュ!!(何をっ!!)」

「だいたいあいつはムカつくんだよ…!おれの断りもなくドフラミンゴなんかに捕まりやがって…!」

「キュッ!?キュイイイ!!キュ!(こッ!?断れば良いというものではないぞ!!理不尽か貴様!)」


傍から見ると、何だか会話が成立してるみたいである。
ローはキイキイと喚くスータにうんざりしたのか、鬼哭の柄で無情にも彼を叩き落した。
優しい小人達が、墜落したコウモリに気を使って起こしてやっている。


「大丈夫れすか?」

「キュッキュイ…(おっおのれ…)」

「それで、どうするの?トラ男君」


ロビンは立ち上がったローに尋ねた。
ローは答える代わりに、ヴィオラに問う。


「―――お前、さっき言ったのは本当だろうな?」

「え?」

「もしあいつに何かあったら自分も…って覚悟だ―――」


大太刀を肩に掛け、ジッと真偽を見極めるその目に、やはりヴィオラは強く是と示したのだった。


「ええ!勿論よ」

「よし―――なら予約をもらおうか」

「…?」


どういう意味だ、と唇を開くよりもそれは速かった。


「”メス”」
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