OP連載
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『キャプテンはさ、』
『?』
『悪い顔してるーって思ったら、その後大抵他の人が大変な目にあってるわけだけど』
『何が言いたい』
『んー……何て言えばいいのかなァ?………悪巧みの秘訣?』
『おおっ!シノが海賊らしい事を…!!』
『今夜は赤飯か?』
小首をかしげるシノの後でシャチとペンギンが親のように喜び、ローはフム、とフォークを持つ手を休めた。
つまりは、この馬鹿なりに頭を使う事を覚えようとしているわけか…
などと、内心シノにとても失礼な事を思ったローは考える。
『……そうだな…』
この知恵比べには向かない馬鹿素直な女は、自分の能力に関しては一丁前に最善を尽くそうとするくせに、他の事にはからっきしだ。
素直すぎて世間知らずなシノが、新世界の猛者どもと渡り合う為に言ってやれる事は―――
「………ごめん、なさい……」
海楼石がついていようと、戦いとは無縁の非力な女性に遅れをとる程シノは弱くはない。
とはいえ、怪我と海楼石で鈍い身体で侍女を上手く昏倒させられたのは、窓から現れた協力者達のおかげだった。
「ありがとう…君達のおかげでうまくやれそう」
シノに礼を言われた様々な鳥達の声が混ざってピーキュルポーと響いたので、シノはわたわたと人差し指でしーっとする。
さっと羽を前に合わせて嘴を隠した鳥達に、シノはホッと肩の力を抜いた。
そして侍女を先程のシノのようにベッドへ寝かせる。
海楼石の再現は手ごろの鎖もないし諦めて、寝返りをうったかのように細工して身体を傾け天蓋で顔の辺りを隠す。
「……行こう」
「ヒーフウボー…」
シノの小さな呼びかけに、鳥達は羽で口を隠したまま今度はこっそり返事をした。
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その頃ロー達は、狭い地下通路を抜けて地下交易港に身を潜めていた。
「何だか物々しい雰囲気ね」
「ああ」
どこにでも目を咲かせられるロビンを筆頭に、数あるコンテナの陰に隠れて様子を窺う背後ではフランキーが超絶合体しており、男性陣に何やらキラキラとした目で見られていた。
「幹部塔に…いたわ。あれがシュガーとトレーボルね」
「あまり近づきすぎるなよ。あれでも最高幹部だ」
「ええ。その近くにもう1人…ハイヒールの男がいるわ」
「それはおそらくデリンジャーれすね!」
「(あのガキか…)」
ローの頭に、薄っすらとジョーラが面倒を見ていた赤ん坊の姿が浮かび上がる。
人間、どう成長するかわからないものである。
「やはり敵も今日は警戒を強めているようれすね…」
「どういう事だ?」
「いつもシュガーはトレーボルが1人で護衛してるれのす」
「それにしちゃァ…」
「ええ。もう少し調べてみるわ」
それからロビンは、工場の方へも目と耳と飛ばしたが、海楼石製の工場の中はサンルームの部分以外はよくわからなかった。
ガラスの向こうでは、小人達が鞭を打たれて働かされている。
「―――工場の前には幹部はいないようね」
「なら工場にはいないものと見ていい。デリンジャーとラオG…現在の幹部連中は奴らを除いて全員が能力者だ。工場の中にいるはずがねェ」
「そっそっか!!なら良かったじゃねェか!」
たとえそのラオGとやらがいたのだとしても、こちらには七武海やサイボーグやらがいるのだ。
1人くらいなら問題ないはず!とウソップが明るく言う。
「じゃあ他の幹部連中はどうしたんだ?まさか全員王宮って事もあるめェが……最悪ルフィ達の方へ集中してなきゃいいが……」
「そうね」
ロビンは幹部塔内部を探っていた目を一旦消し、外部の壁面に耳だけを残して彼らの会話を聞いていた。
「―――どうやら他の幹部はオモチャの家の警備に当たっているようね……デリンジャーが今、命令を受けてオモチャの家へ向かったわ」
「妙だな……ドフラミンゴはおれ達がオモチャの秘密に気がついている事をとうの昔に知っている…」
それ故、通常はトレーボル1人に任せている護衛にデリンジャーを差し向けていたはず…
ドフラミンゴの狙いは、ロー本人を王宮に呼び寄せる事よりも、ローと一味の分断を狙い、あのような馬鹿げた放送でシノという餌をわかりやすくぶら下げたのだとローは思っていた。
ローはシノの事を便利な女などと口にしたが、まさにそうなのだ。
ローが餌に食いつかずとも、一味の誰かが助けに行くのだとすれば当然、人数の少ないこちら側が圧倒的不利。
しかも、地上では国中の人間がこちらを見張っていると言っても過言ではない。
「(コロシアムの替え玉がバレたか……?)」
それにしては早すぎる気もするが、ローはその替え玉がどんな人物かも知らない。
下手を打ってない、と言える材料も無い。
「工場の警備が手薄な今、これが好機である事には違いねェ……シュガーはともかくおれは工場へ向かう。行くぞロボ屋」
「おう!任しとけ」
「えっあっおっおっおっおれは〜〜……」
「隊長のいない今!この”SOP作戦”を指揮するのに相応しいのはウソランドを置いて他にはいないのれす!!」
「「「「お願いします!!」」」」
「――――!エッ…………ハイ………」
「私もここで彼らのサポートに回るわ」
「よし………”ROOM”」
工場の仲間達を円滑に救出するためにも、数名の小人達を連れたフランキーとローがフッと消える。
影も形もなくなった仲間達がいた場所へ向けたウソップの手が、空しくとり残されていた。
「(全然よくねェよォ〜〜〜〜!!!!!どうしよォ〜〜〜〜!!?)」
こうなったらもう………小人達だけで何とかしれくれる事を祈るしかない!!
―――儚い希望を抱いたウソップであった。