OP連載

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ドフラミンゴの首が落ちた後も、片足の男キュロスによってドンキホーテファミリーの構成員達が次々と打ち倒されていく。
ファミリーの幹部であるバッファローでさえ一撃で倒され、孤立無援となりつつあるベビー5が彼を呼ぶ声が、乱戦の中よく響いた。


「バッファロー!!………麦わら!!」


ヴィオラを抱えたルフィが、倒れたシノのもとへまっすぐに駆けていく。
ドフラミンゴが倒れた事で、吊られていた糸が切れたのだ。
ベビー5の驚く声を聞いたシノが痛む身体をその方へ向けると、笑顔のルフィと鍵のようなものを手にしたヴィオラの姿があった。


「!ヴィ、オラ……」

「助けに来たぞ〜〜〜〜!!!」

「シノ!!良かった……!!」


彼らの姿を目にしたシノの頭が、死の間際から急転した事態を把握せんと少しずつ回り始めた。

ヴィオラの父リク王の鎖は、キュロスと呼ばれた片足の男が斬っている。
彼は名や片足である事からして元兵隊の元軍隊長……オモチャが解放されている。


(本当にシュガーが倒されているんだ!)


「…っ工場は…!?」

「トラ男が行ってるぞ!心配すんな!」

「ああシノっ!!大丈夫!心配いらないわ!!」


ヴィオラがシノを抱き起こし、胸で受け止めるように座らせると、ヴィオラから鍵を受け取ったルフィが震える手でシノの海楼石に差し込もうとする。
ヴィオラもルフィも能力者。
海楼石に触れれば、たちまち鍵を取り落としかねない。
ぐったりと預ける小さな身体が痛々しくて、ヴィオラの瞳が涙の膜を張る。
零れそうになる息をぐっと耐え、彼女は笑った。



「最高よシノ……!!あんないい蹴り…私初めて見た………っ!!!」


耐え切れなかった雫がひとつ、鎖骨に落ちて、シノもまた、ヴィオラを見上げて微笑んだ。


「……だって……ここは―――…愛と情熱の国……でしょ?」



笑うシノの頬に、耐え切れない雫がぽたぽたと落ちる。



「ええ!!ええ……っっ!!!」


口元を押さえる手を滑り、なおも流れ続ける涙を甘んじて受けていたシノ。
ところが、頬に落ちるはずだった雫が突如として舞い上がった。
地面が波打ち、それが舞い上がったのではなく、自分が滑って落ちているのだと気づいた時にはもう、シノの身体は宙に浮いていた。


「!!?」

「きゃあ」


シノを庇ったヴィオラが下敷きになり、差し込まれようとしていた鍵もまた、石の波に流されていった。
波はひとつの山を作り、それは人の、ピーカの顔を模る。
ピーカの頭の近くに湧き出た大きな石の手のひらが、ドフラミンゴと落ちた首を掬い上げる。



「フッフッフ…想像以上にしてやられたな…」



あろう事か、その声は落ちた首から発せられていた。
この場にいる、ピーカとドフラミンゴ以外の全ての者に再び衝撃が走る。



「うわァ!!!ミンゴが生きてるーーーーーーっ!!!」


「若様っ!!!」


「…どういう体を!!!」

「……………!!」


首を落として生きていられる人間など、いるはずがない。
念願叶い、討ち取れたと思っていたものは、ただのぬか喜びでしかなかったのか。
キュロスは歯を食いしばり、剣を構える。



「これはマズイ事態だ…!!”鳥カゴ”を使わざるを得ない…!!」



鳥カゴ?と疑問に思う間もなく、スートの間は再び乱戦状態に陥った。
騒ぎを聞きつけた援軍は何もピーカだけではなかった。
バタバタと多くの足音を引き連れてやってきたグラディウス。
そして何故か2人に増えたドフラミンゴに挟撃されたキュロスは、ルフィによって寸での所で救われ、首を落とされるのを免れた。
代わりに、王宮の上層階部分にあたる塔がぱっくりと切断されて落ち、スートの間の天井は無くなった。
シノ達の上に、青空が広がる。


「すまん!!油断を!!」

「うん!!”ゴムゴムのJET銃乱打(ガトリング)”!!!」

「”武装”!!」


ルフィの技を受けたはずのドフラミンゴであったが、先程の首と同じく、効果は見受けられない。
逆に、糸の斬撃と武装色を纏った拳を顔面に貰ったルフィは、真っ向から弾き飛ばされ転がった。


「ルフィランド!!何だあの分身は…」

「糸でできた”操り人形(マリオネット)”の様ね!あんな技初めて見た」

「……」


あとほんの少しの所で、海楼石の錠から解放される事が出来なかったシノは、この場から一時撤退するべきだと思った。
どこに飛んだかわからない鍵は惜しいが、現在こちら側のまともな戦力は、ルフィとキュロスのみ。
対してあちらは、ほぼ無傷に近いドフラミンゴに最高幹部ピーカ、幹部グラディウスにベビー5がいる。


「リク王!!10年前の…あの夜の気分を覚えているか?愛する国民を斬り平穏な町を焼いた日!!」

「……!!!」


あの夜の悲劇を忘れるはずもないというリク王の言に、ドフラミンゴは満足げに語りだす。
そんな事くらいわかっているだろうに、あえて思い出させておいて「これから起こる惨劇はあんな小規模なものじゃない…」と笑うドフラミンゴの気が知れない。

何をする気だ、と誰もが警戒していた矢先だった。


「逃がしてやるよお前ら」

「!?」

「ピーカ邪魔者共を外へ!!!」

「うわあああ!!!」

「きゃああああ」



波打つ床に運ばれ、あっという間に王宮の外に放り出された。
逃げるチャンスを窺っていた身としてはありがたくとも、拍子抜けする余裕もなく、シノはスートの間から天へと伸びるモノの存在を見た。
ヴィオラ達と共にルフィに受け止められたシノの視線は、空に釘付けだった。



「……糸………?」
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